花には水を
「座右の銘は何ですか?」と問われて、何を思い浮かべるだろうか。長年、私のそれは、父が手書きで居間に掲げたクソ真面目な家訓で、クソ面白くもなかった。
人なみの努力は 人なみの進歩
学生時代に恩師がとったアンケートでも、「努力」「一所懸命」「一球入魂」「七転八起」等の根性ものが圧倒的多数だったという。おそらく私の世代はそういう価値観で教育されてきたのだろう。そんな中で、ただひとりだけ、次の一句を書いた学生がいたそうだ。
花には水を 人には愛を
師が不思議に思って由来を尋ねると、その学生は静かにこう語ったという。
「この言葉は母から教わりました。母は中国人です」と。
昨今、隣りの国を悪く言う人が多くて驚くばかりだが、歴史を遡れば、どれほど深い関わりがあったことか。脱亜入欧で失ったものの大きさを改めて思う。