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尊い日常を描く絵本

古典的な絵本のご紹介が続いたので、昨年11月に出版されたばかりの絵本を1冊。

みやこしあきこ『ちいさなトガリネズミ』(偕成社、2022年)

この絵本の1ページ目はこうして始まる。

これは はたらきものの
トガリネズミです。
トガリネズミの いちにちは
こんなふうです。

『ちいさなトガリネズミ』より抜粋

第1部は朝起きて身支度をしてから電車に乗り、忙しく仕事をして休憩し、帰りに買い物をして家に帰り、寝るまでの日課が描かれている。第2部では休日の過ごし方を通してトガリネズミが憧れているものが、第3部では1年ぶりに会う友達との交流が描写されている。

何か事件が起こるわけでもない日常は、ややもすると退屈に見えてしまうかもしれない。しかしここ数年の世界的なパンデミックとウクライナ侵攻を経て、多くの方がこのような平凡な日常の尊さを実感したのではないだろうか。ページをめくる毎に丁寧に描かれたカットに目と心を奪われ、この日常をこそ守りたいと切に思う。


【余談】
みやこしあきこ氏の作品からは、洗練された技巧はもちろんのこと、1枚1枚の絵に込められた深い愛情が感じられる。だから素人は生半可な気持ちで絵本を作ろうなどと思ってはいけないと思うのだが、毎日の日課は素人でも扱いやすい題材だ。以前、英語学習の一環として学生さんたちが作成したのがこちら。

作業途中の作品の記録から

これは厚紙の上に色画用紙を重ねて扉を切り開くタイプだが、お子さんの(あるいはご自身の、おばあちゃんの… etc.)1日を絵本ふうに仕立てて記録しておくのもおすすめ。『ちいさなトガリネズミ』の1日はそんなヒントにも溢れている。