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2021年6月の記事一覧

山田太一『男たちの旅路』(里山社、2017年)

山田太一『男たちの旅路』(里山社、2017年)

「男たちの旅路」シリーズは、自分が中高生の頃の放映のため記憶が曖昧で後にDVDを買い求めたりもしたが、シリーズ全貌を確認できたのは里山社さんより脚本集が出てからだ。

まだ若かった私は、吉岡司令補のような上司がいたらいいとか、水谷豊演じるガードマンが面白いとかの反応がせいぜいだったと思う。おまけに、なぜ「男たちの旅路」で「男たち」に限定するのか、などと浅はかな見方しかできていなかった。でも今ならわ

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工藤純子著『サイコーの通知表』(講談社、2021年)が問いかけるもの

工藤純子著『サイコーの通知表』(講談社、2021年)が問いかけるもの

学校との関わりは、気がつけば半世紀。教えられる側、教える側、保護者の立場と変遷してきたものの、人生の大半が学校教育とつながっていたことに驚く。長いだけに教育について思うところは多々あるのだが、とりわけ内申点を笠に着る教師と否応なしに服従するしかない生徒の力構造を疑問に思ってきた。

教師だって人間だから万能ではないはずだ。にもかかわらず、生徒は成績をつける先生を前にすれば多少の理不尽があっても辛抱

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山田太一『想い出づくり』(里山社、2016年)

山田太一『想い出づくり』(里山社、2016年)

1981年このTBS TV金曜ドラマの放映を見逃した私は、多分に人生を損した思いで今ごろ脚本を手にした。若き日の柴田恭兵さんや古手川祐子さん、田中裕子さん、森昌子さんの面影を想像しながら読み進めるのは意外と楽しい作業だったが、老眼には上下2段組はややきつい。それでもあっという間に読み進めてしまったのは、脚本のもつ力の素晴らしさゆえと思う。

あらすじはドラマサイトに譲るとして、このドラマ放映当時の

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