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【読書感想文】鳥嶋和彦『Dr.マシリト最強漫画術』

夫が昨年のクリスマスにプレゼントしてくれた本だが、毎日一ページずつ読んで、やっと読み終えた。夫の意図としては、私が自費出版を考えているので、出版界の動向を抑えておいたほうがいいということで、買ってくれたそうだ。ただ、実際に読んでみると、出版界というよりは、漫画界、さらには週刊少年ジャンプについての本だった。あくまで、鳥嶋編集長の長年の業績と経験から、いかにして週刊少年ジャンプの漫画家になれるかというお話が中心だった。ただ、少女期がそのままドラゴンボールの時代で、電影少女もダイの大冒険もリアルタイムで読んでいたので、大変懐かしかった。しかも、鳥山明先生がお亡くなりになったばかりで、大変悲しい思いをしていたので、最後は読み終えるのがもったいないとさえ思った(鳥嶋編集長は『Dr.スランプ』以来の鳥山明先生の担当で、Dr.マシリトのモデルであり、本書も表紙は鳥山明先生だし、鳥山先生との対談も入っている)。ドラゴンボールは全巻持っていたが、セルが出てきたくらいから、途中で飽きてしまったのだが、それでも、大好きだったことに変わりない。悟空の絵はよく描いていた。そんな中途半端な私だが、プロの編集者の目から見て、プロのどこがすごいのかということが、事細かに書かれていて、目からうろこだった。コマ割りの大切さとか、ネームの締め切りとか、登場人物の身長の描き分けとか、原作者がついた場合のメリットとか、良い編集者の見極めの方法とか、現場の人にしかわからない話が満載で、ここでは書ききれない情報が本当に多かった。大変細かい字でびっしり書かれているのだが、どこも得難い情報ばかりだった。ただ、それは漫画家志望者にもってこいの話で、一般人には、すごいですねとしかいいようがない話でもあり、むしろ教養書とでもいえそうな読書となった。出版界の動向としては、メディミックスの可能性など、未来志向の話がためになったか。あとは、漫画雑誌単体では採算が取れず、コミックスで初めて経済的に余裕ができるという話は勉強になった。漫画家が常にアンケートの動向に左右され、10回で連載打ち切りが決まるという話も、勉強になった。売れるかどうかということが試金石なのだが、とにかく子供たちに喜んでもらえる、面白い作品、実力のある漫画家を作りたいという熱い鳥嶋さんの思いが伝わってきて、すごい本だなと思った。彼の人生がそのまま詰まった本だといえると思う。

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