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絵本ライターってどうやってなるの?

絵本と育児系の編集ライターをしています。絵本は好きだけれど、これが仕事になることはないとずっと思っていました。でもいまは、絵本作家さんへのインタビューや書評、絵本紹介記事などを書いています。
好きなことが仕事になるって、本当に幸せ。お仕事がいただけることが、ありがたいです。

いままでこういう話を書く気はなかったのですが、久しぶりにnoteを開いたら、#ライターの仕事 というお題が立っているのを見て、もし誰かの興味になるのならと、絵本のライターになるまでの記録を残しておくことにしました。

私は以前、情報誌系の出版社に勤めていました。街の情報、おいしいお店、有名人のインタビュー、手土産の紹介…そんな内容を手掛けていました。
それからフリーライターになって出産したとき、子育てに関していろんな情報を集めていて、これが仕事にできないかなと思いました。
もともと教育学部で、育児や教育にも興味があったのです。

最初はファミリー系の旅行雑誌で、子連れの飛行機の乗り方などを書いた気がします。徐々にベビー雑誌のカタログや、習い事などの記事を書いていきました。
育児系の記事を書くときに強みになったのは、ライターの他に、子どもの音楽教室のスタッフをしていたことです。いろんなタイプの子どもと、日常的に触れていることで、多くの人に共感してもらえる記事が書けました。

それだけではなく、一時期は、さらに保育園の非常勤スタッフの仕事もしました。保育園という広い環境で、子育てすることに興味があったのです。
自閉症の子もいれば、ネグレクトが疑われる子、とにかく活発な子、乱暴な態度で大人を試す子、3才になっても話をしない子、だけど絵本が好きな子、絵本に興味のない子、そしていろんな親がいました。
今でもいろんな子どもの記事を書くときに、〇歳児の発達は…、〇歳児の遊びは…と実際の子どもの顔を思い浮かべることができるので、役立っています(役立っていますが、保育士は体力もメンタルもけっこう大変なので、かけもちはおすすめしません^^)。そのときに保育士の資格も取りました。

そして、育児の記事から、育児にからめた絵本の記事を書くことが少しずつ増えてきました。

絵本の魅力にとりつかれたのは、子育てをしてからです。こんな短い文章と絵の中で、人の心を動かす本があるなんて、と思いました。
息子には0歳の頃から小5ぐらいまで、ずっと読み聞かせをしていました。
私ももともと本は好きでしたが、大きくなってからはもっぱら携帯を触ることが多くて、分厚い本を読む余裕はほとんどありませんでした。
だけど読み聞かせは楽しくて。子どもと一緒に、驚いたり、笑ったり、話をしたり。
仕事や家事が忙しくてかまってあげられない日も、夜のこの時間だけは親子にとってのコミュニケーションだったのです。
叱ったり、忙しそうにしていても、寝る前に「本読んで」と言えば、必ず私が来ることを息子も知っていたのだと思います。

さて、絵本が大好きだったので、絵本の記事はたくさん書きたかったのですが、そうたくさんの仕事はありません。
はじめて自分から仕事の営業に行ったのは、絵本に強い育児雑誌でした。
とはいえ、最初は断られたのですよ。いまは募集してません、と。
一度断られるとくじけてしまう方なので、そうなのかと思いつつ、その雑誌が主催するイベントなどに親子で参加していました。
しかしそうやって関わっていると、やっぱりこの雑誌やりたい!と諦めきれなくて、一か月後、もう一度連絡したのです。
そうしたら、イベントに参加したときのことを編集長が覚えていて、はじめてお話を聞いてくれることになったのでした。
そしてそこで、小さなお仕事をもらうことができたのです。
後で聞いたら、「やっぱりイベントで顔見てたからですかねえ」と言われたので、いろんなアプローチって大事なんだなと思いました。

もちろん、絵本系のいい仕事ばかりをくれた訳ではありません。
私は編集ライターなので、企画出しから取材、ラフ出し、webセッティング、入稿まで何でもやります。まずは育児の記事、広告がらみの営業記事も書きましたし、苦手な仕事もありました。
でもひとつひとつ丁寧にこなしていくことで依頼が増え、出版社のイベントなども書かせてもらえるようになりました。

転機になったのは、ある出版イベントに参加したときです。
各誌10分ずつ新刊を出した作家さんにインタビューできる機会があったのですが、自分の順番以外は、外で長い間待たなければならないということがありました。
それでたまたま、隣の人と雑談をすることになりました。
その方が、「本の書評サイトをやっているんですが、絵本系のライターさんが少ないので、やってみませんか?」と声をかけてくださったんです。
聞いてみると、有名なサイト…。私でいいのかと思いながら、後日編集長と話すことになり、ドキドキしたのを覚えています。

その仕事は、定期的に絵本作家さんにインタビューするお仕事でした。
夢のような仕事、と舞い上がりながらも、実は私、インタビューがすごく苦手。書くことはできても、話すことにコンプレックスがあり、話しながら頭が真っ白になってしまうのです。
だけどこんないい仕事ないですから、もう必死になってやってました。
最初は録音データを聞くのがしんどかったです。自分のインタビューがあまりに下手すぎて。
ものすごい下調べをしていくし、あらゆる質問を考えていきました。
しかし相手の質問の答えを広げたいのに、もう予定調和なことしか聞けない(泣)。ひどいものでした。
電話取材しか受けないと言われて、前日から胃が痛かったこともあります。
でも絵本作家さんがみなさん優しくて、本当に救われてましたね。

この仕事を毎月やったおかげで、かなり鍛えられて、いまはほとんどがインタビューの仕事。五味太郎さんやヒグチユウコさんなどとお話したときは本当に緊張しました。でも嬉しかったですね。しかもこのサイトが、自分の名前とプロフィールを出してくれる仕事だったので、自分のことを知ってもらえる機会が増えました。
様々な出版社とのやりとりも増えて、絵本の情報も集まってくるようになりました。自分のことを「絵本ライター」と書いてくれるところもあって、嬉しかったのを覚えています。

でもずっと自信がなかったのです。私はただの絵本好き。
たいていの絵本記事は、JPIC読書アドバイザーの方などが記事を書いていました。保育士資格ありという育児ライターが絵本の記事を書いていて、信用性があるんだろうかと。
そのとき、絵本専門士という資格があると知りました。でもこれまた世の中に絵本好きが多いので、まず講座を受けるまでの審査が厳しいのです。1000名応募して70名しか取らないという狭き門でした。書類審査で落ちた年もあります。ようやく受かって1年間勉強して、絵本のプロという仲間ができたこともよかったです。

思い立って、自分のホームページも立ち上げました。
自分のプロフィールと、今までの仕事をブログ風に書いているだけのHPなので、私と会った人が、確認のために見る程度かなと思っておりましたが、意外にアクセス数があります。
いまは何かを調べようと思ったとき、みんなネット検索するんですね。
何度かHP経由でお仕事をもらったことがありました。

先日、はじめて絵本制作をプロデュースするという仕事をいただきました。
実は少し前に、クラウドファンディングでSDGs×音楽の絵本を制作したばかりで、いまは企業PRの一環で、親子をターゲットに絵本を使うところが増えています。
こういう企業がからむ絵本は、おもしろさと制作意図を両立させるのが大変なのですが、そこを考えるのもまた楽しいなあと思っています。

こうやって、好きなことでお金がもらえるというのは、何ものにも代えがたいですね。
ギャランティがすごく低い仕事もありますが、楽しそうなら受けています。
好きだからできるのかなあ。
それに大変な仕事でも、手を抜かずに仕事をしていると、大きな仕事を運んできてくれることもあります。
最終的には、自分の仕事でいかに親子が笑顔になるかどうかが、モチベーションになっていますね。

……仕事についての長文、失礼いたしました。
絵本が好きだけれど、仕事にするにはハードルが高いと思っている方がいたら、いろんなアプローチがあるんだなあと感じてくださればと思っています。

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