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#111 行政書士試験に合格するために【理由提示の要件編】

今回は、行政書士試験の行政手続法
14条(不利益処分の理由の提示)に
ついて書いてみました。


「理由」は書面で…

(不利益処分の理由の提示)
第14条 行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。
 行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。
 不利益処分を書面でするときは、前二項の理由は、書面により示さなければならない。

行政手続法14条には、
不利益処分の理由の提示が書かれています。

理由を示さないで処分をすべき差し迫った
必要がある場合、名宛人に対して不利益
処分をすることができるが、処分後相当の
期間内に、その理由を書面で示さなければ
ならないというものです。

書面なのか、口頭なのかは行政法の試験では
頻出なので、自分なりに一覧にしても
良いかもしれません。

14条は平成29年、30年、令和3年に
出題実績があります。

「不利益処分の理由の提示の程度」に
ついては判例がいくつかあります。


理由はきちんと…

最判平23.6.7の公にされている処分基準
の適用関係を示さずにされた建築士法
(平成18年法律第92号による改正前の
もの)10条1項2号及び3号に基づく一級
建築士免許取消処分が、行政手続法14条
1項本文の定める理由提示の要件を欠き、
違法であるとされた事例です。

建築士法(平成18年法律第92号による改正前のもの)10条1項2号及び3号に基づいてされた一級建築士免許取消処分の通知書において,処分の理由として,名宛人が,複数の建築物の設計者として,建築基準法令に定める構造基準に適合しない設計を行い,それにより耐震性等の不足する構造上危険な建築物を現出させ,又は構造計算書に偽装が見られる不適切な設計を行ったという処分の原因となる事実と,同項2号及び3号という処分の根拠法条とが示されているのみで,同項所定の複数の懲戒処分の中から処分内容を選択するための基準として多様な事例に対応すべくかなり複雑な内容を定めて公にされていた当時の建設省住宅局長通知による処分基準の適用関係が全く示されていないなど判示の事情の下では,名宛人において,いかなる理由に基づいてどのような処分基準の適用によって当該処分が選択されたのかを知ることができず,上記取消処分は,行政手続法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠き,違法である。

最高裁判所判例集 裁判要旨

処分基準の適用関係が全く示されていない
理由の提示は、理由の提示としては不十分
なため、違法な処分として取消しを免れる
ことはできない、というものです。

この結論を覚えることは大事なのですが、
本試験では、切り抜かれた判例がそのまま
出題されるか、結論をいじったものが出題
されるため、肢別の解説にあるような短い
判例ではなく、判例集に載ってあるくらい
の文面のものを1度目を通しておいた方が
良いと思います。

この判例は平成29年と令和3年に
出題実績があります。


根拠規定だけでは足りない…

最判昭60.1.22の一般旅券発給拒否処分が
理由付記の不備のため違法とされた事例
です。

一般旅券発給拒否処分の通知書に、発給拒否の理由として、「旅券法一三条一項五号に該当する。」と記載されているだけで、同号適用の基礎となつた事実関係が具体的に示されていない場合には、理由付記として不備であつて、右処分は違法である。

最高裁判所判例集 裁判要旨

一般旅券の発給をしないとする通知書に
付記すべき理由として、単に発給拒否の
根拠規定を示すだけでは理由付記として
不十分である、というものです。

令和3年に出題実績があります。


まとめ

「建築士法」「旅券法」という単語が
出てきましたが、消防法や旅館業法、
砂防法なども行政書士試験では登場
します。

試験対策としては、それぞれの法律の
中身について知る必要はありません。

*国家行政組織法や内閣法など、
 行政法総論で出題されるものに
 ついては押さえなければいけない
 ものもあります。

「一級建築士」
→「理由の提示としては不十分」

「一般旅券発給拒否」
→「理由付記として不十分」

判例が何行であろうとも、結論としては
一行覚えればいいだけになります。



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