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書く楽しさを伝えるショートショート作家 田丸雅智

こんにちは!
インタビュー終了後に体験させていただいたプチ書き方講座で、お話を作ることの楽しさに目覚めたnote更新担当のたぬ子です!

今回は、松山市出身でショートショート作家として活躍されている田丸雅智たまるまさともさんに、ショートショートとの出会いやアイデアの集め方などお伺いしました。

[プロフィール]
■氏名
 田丸 雅智(たまる まさとも) 
■ジャンル
 作家(ショートショート作家)
■経歴
 1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部卒、同大学院工学系研究科修了。
 2011年、『物語のルミナリエ』に「桜」が掲載され作家デビュー。12年樹立社ショートショートコンテストで「海酒」が最優秀賞受賞。「海酒」は、ピース・又吉直樹氏主演により短編映画化され、カンヌ国際映画祭などで上映された。
 坊ちゃん文学賞などにおいて審査員長を務め、また、全国各地でショートショートの書き方講座を開催するなど、現代ショートショートの旗手として幅広く活動している。
 書き方講座の内容は、2020年度から小学4年生の国語教科書(教育出版)に採用。2021年度からは中学1年生の国語教科書(教育出版)に小説作品が掲載。17年には400字作品の投稿サイト「ショートショートガーデン」を立ち上げ、さらなる普及に努めている。
 著書に『海色の壜』『おとぎカンパニー』など多数。メディア出演に情熱大陸、SWITCHインタビュー達人達など多数。

衝撃を受けたショートショートとの出会い

写真提供:田丸雅智

ー ショートショート作家として活躍されている田丸さんですが、子どもの頃から読書をされていましたか。

 それが、読書はすごく苦手だったんです。
 未就学の頃は、けっこうな数の絵本を読んでもらっていたり、自分自身も好きで読んだり、『日本昔ばなし』などの朗読テープが家にたくさんあったので、それを家や移動中の車内などですごく聴いていたんですよ。 
 あとは、寝る前などに母や祖母が昔ばなしをよく話してくれていました。
 そういう時間が、僕にとってお話や創作の原体験になっているんだと思います。

 でも小学校へ入ったあたりからでしょうか、活字の多い児童書への移行がうまくできなくて。
 恥ずかしい話なんですが、せっかちな性格というのもあり文字を飛ばし読みしてしまうんです。飛ばし読み・斜め読みをしていたら当然ですけど内容なんて入ってこなくて、当たり前なんですけどよく分からない、おもしろくないという状態になってしまっていました。
 あと、読書はちょっと難しいものだという周りの雰囲気もあり、そういうことも要因になって小学生の最初の頃は本を読めていなかったです。

 そんな中、高学年ぐらいの時に親から「ショートショートだったら読めるんじゃないか」ということで、ショートショートの本を渡してもらいまして。
 読んでみたら「こんなに短くて、すぐに読み切れるのにすごくおもしろい!」と衝撃を受けたんです。
 なので小学校高学年ぐらいから、読書のおもしろさに目覚めていきました。

”ものづくり”と”ショートショート”が好きな僕

写真提供:田丸雅智

ー 読み物としてのショートショートに目覚められた田丸さんですが、そこから書く側になられたのは、どのようなきっかけがあったんですか。

 いろいろと後付けはできるんですけど、結論は”たまたま”です。
 僕は祖父の1人が大工を、もう1人が鉄工所をやっていたこともあり、ものづくりがごく普通にある環境で育ったんですよ。
 なので、何かを作ることに対して元々とても親しみがあって、工作をすることも好きだったんです。

 その上で、ショートショートを初めて書いたのは、高校2年生の時で。「ショートショートを書くぞ!」と意識的に書いたわけではなく、ポッと空いた時間にルーズリーフになんとなく書いてみたのが最初です。
 なぜ書いたのかは曖昧なんですが、きっと「つくること」を当たり前に行っていた中で、たまたまお話もつくってみようと自然に考えたんじゃないかと思います。
 そうして初めて書いたショートショートを、なんとはなしにそのまま友人に読んでもらったんです。
 すると「おもしろい!」と言ってもらえて。その時「そうか!ショートショートや小説って、自分で書いてもいいものなんだ!」と気付いて、読むだけのものから”書いていいもの”に変わりました

ー それは大きな変化ですね!

 そうですね。
 かつての僕のように、多くの人は自分の中に「小説や物語を書いてもいい」という選択肢は無いと思うんです。
 もちろん肌に合う合わないは絶対あるので、押し付けるつもりはないんですけど、ただ「めちゃくちゃおもしろいんで、どうですか?選択肢に入れてみませんか?」と、書くことのおもしろさや楽しさを伝えたくて、書き方講座の活動をやっています。
 僕は高校時代にたまたま気付くことができましたが、”書く”という選択肢に出会える場をどんどん広げていきたいなと思っています。

ー 「書ける・書けない」と「書いてもいい」は別ものですよね。

 特に小説・物語を書くのはハードルが高いイメージが、まだまだありますよね。
 もちろん小説や物語の厳かで風格のある一面もいいんですけど、個人的にはもっともっと誰もが気軽に書いてみたらいいのになと思っています。
 特に読書や作文、国語などが苦手だと思っている方が、やる前から「自分には関係ない」と、創作という選択肢を締め出してしまうのは本当にもったいないように思っています。
 
なので、すでに創作に親しんでいる方はもちろんですが、苦手に思っている方もどんどん書き方講座にご参加いただければ嬉しいです。

「書けた!」その体験が大切なきっかけに

写真提供:田丸雅智

ー 愛媛県をはじめ、全国各地で書き方講座を行われていますが、発想から作品完成まで、ワークショップのような短い時間で終わるのでしょうか。

 はい、終わります。僕の講座は、まっさらな状態からメソッドを用いたワークシートを使い90分ほどででお話を完成させて、発表まで行います。
 普段はまったく書けないという方が、たとえ拙くても積極的に最後まで夢中になって書いてくださったという光景は、講座でよく見られますね。
 たとえば学校での講座の時は、先生方からも「普段1行も書けないあの子が、まさか書けるとは!」という有難いお声をいただくことが多くあります。

ー 普段書けない子にとっては、とても大きな成功体験になりますね!

 そうなったらいいですね。
 僕も、プチ成功体験とよく言うんですが、講座が始まる前は「ほんとに書けるの?」と、みんな半信半疑なんです。特に小学校だと「できるか不安でやりたくない」という子もいます。
 でも、やってみれば書くことができる。なので、完成した時は「あれ?本当にできた…!」って、戸惑いながらも喜ばれる方が多いですね。

ー メソッドは、作家としての経験を元に作られたんですか。

 その部分はもちろん大きいのですが、日頃から触れて学んでいたアイデアや創作における常識や考え方、実践法を自分なりに消化して反映させた部分もありますね。
 それから、高校時代は友人に勉強を教えることがよくあったんですけど、そういう時に「どこがつまずくポイントになっているんだろう。どうやったら思考の階段を登ってもらえるんだろう」と考えながら教えるのが好きで。そういった”伝えるためにはどうしたらいいのか”というところに、元々すごく興味があるんです。
 なので、人に伝える方法は、学業で培ったことを応用している感覚ですね。

日常のちょっとした違和感から走り出す

写真提供:田丸雅智

ー 2012年樹立社ショートショートコンテストで最優秀賞を受賞された「海酒」を読ませていただきましたが、あの作品は読んでいるうちに、自分の故郷を重ね合わせてしまう物語でした。

 そう言っていただけて本当に嬉しいですし、ショートショートの魅力の1つは、まさにそこなんです。
 ショートショートは、他の小説や物語と比べて原液に近いんですね。
 省略するがゆえに想像の余地がすごくある形式で、俳句に近いところも多いのではないかと思っています。俳句は詩なので、もっともっと削ぎますけど感覚は俳句に近くて、読んでくださった方の中で物語が完成する。
 「海酒」は、僕の故郷・松山市三津での想い出を大事に詰め込んだ作品なんですが「自分の故郷の海を思い出しました」というお声をいただくことも多くて、物語には直接描いていないようなことがその方の中で広がっていって完成したのだなと思うと、本当に嬉しいと同時に、ショートショートの魅力だなとしみじみ思います。

ー 作品のアイデアのために、普段から気を付けていることはありますか。

 今は、少しでもアイデアに繋がりそうなことがあると反射的に反応できるようになっていて、日常の中の違和感とか、ネタになりそうなものは、目にも耳にも留まりますし「これ使えるかもな」ということはよくありますね。

 最近だと、書き方講座で小学校を訪問した時、先生が「マイクをまわしてください」と言う場面で、「マスクをまわしてください」と言い間違えてしまったんですよ。
 児童たちはめちゃくちゃ笑って、先生も恥ずかしそうに笑っていたんですけど、僕も笑いつつ「その一言が使える!」と瞬間的に思って。
 もし、この一言をベースに、今アイデアを少しだけ膨らませてみるなら、
 ~~例えば、ある時、ある学校での授業の際、みんなが「先生は『マイクをまわしてください』と言うだろうな」と思っている場面で、実際には「マスクをまわしてください」と先生が言って、同じように場が湧いたと。
 それで、みんな「おもしろい言い間違いだったな~」と思っていたら、先生が真顔のままでほんとに「じゃあこのマスクをまわしてください」と、みんなに突然マスクをまわしだして。
 実は、そのマスクは着けたら拡声器のように声が大きくなるとか、ボイスチェンジャーとか、本音を引き出すとか、マイク以上に素晴らしい機能を持った最先端のマスクで、みんなはびっくりしつつも使いはじめて…~~
 これはあくまでも一例ですが、こういう風に日常の言い間違えやミス、トラブル、エラーなどがお話づくりに繋がることもよくあります。

ー 作品のタイトルは最後に決められますか。

 まちまちです。
 先ほどの「海酒」という一作のタイトルは最初にできたケースです。このお話を考えるにあたって、元々故郷であり海の町である三津のことを書きたいという思いから「海」を題材にしたいなと考えていたんですが、海だけだとなかなかアイデアを広げられなくて、どうしようか悩んでいたんです。
 そんな時に、たまたま「ラム酒」という文字が、特にラム酒の“酒”という文字が目に飛び込んできて、その瞬間ずっと考えていた“海”と結びついて「海酒」という言葉、タイトルができました。
 そのあとで「海酒ってどんなものだろう」と考えるうちに、「そう言えば、梅酒に字面が似ているな」と気付いて。
 時々、「海酒」という言葉は「梅酒」と字面が似ていることから思い付いたと思われることもあるのですが、実際は先に「海酒」という言葉ができて、そこから走り出した一作でした。
 ちなみに、ショートショートの場合は、そのお話を代表するような、象徴するようなアイデアに因んでタイトルを付けることが多いですね。
 でも、ショートショートはワンアイデアが軸になってくるので、ネタバレになるなと思った時は、敢えてそこから外したりすることもあります。

故郷こきょう・愛媛で行う様々な活動

写真提供:田丸雅智

ー 愛媛でワークショップやラジオ放送など、様々なことをされていらっしゃいますが、今後はどのような活動を愛媛でされたいですか。

 書き方講座は、ずっとやらせてもらいたいんですが、それに加えてショートショートを読むことや書くことが、もっともっと身近になる場を増やしていきたいなと思っています。
 あとは「地元で活動されている方や企業さんと、コラボレーションさせていただきたい」とも思っています。
 ショートショート×愛媛、ショートショート×松山、ショートショート×○○という風に、ショートショートと何かを組み合わせた活動が増えていくと、すごくありがたいですね。

ー 愛媛県は俳句が身近な県なので、ショートショートもすぐに身近なものになりそうですね。

 僕、俳句の影響をすごく受けています。俳句の句会のような場を作りたいと思ったことも、書き方講座をはじめたひとつのきっかけでした。
 愛媛の皆さんにとっても俳句はとても身近で、それこそ宿題でもやりますよね。そういった日常との接点は、文化を広めるためにはとても大事だと思っています。
 僕は、書き方講座の活動を全国的・世界的にも広げたいと思っていますが、同時に愛媛でもさらに広げられたらと願っています。
 愛媛は故郷こきょうとして、すごく大切なところなので、県民の皆さんと一緒にいろんな活動をさせてもらえたら嬉しいです。

絵しりとり 自動販売機じどうはんばいき ⇒ き○○○○○

今回は、オンラインでインタビューを行ったため、イラストをメールで送っていただきました。
田丸さんの書き方講座の内容が掲載されている、○○○をモチーフに描かれたそうです。


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