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新潟は面影の町②~新潟古着調査編~

「デルマーのデカマラー。」

突然思い出したように、
ぼけっとした顔で、そう呟いてみた。

正面の席に座るおばあさまは、
私に目線をやると、いぶかしげな顔をした。
まあ、そりゃそうだ。
いきなり若い男がデカマラ、なんて呟くんだから。
しかし、こちらの身にもなってほしい。
新潟なんて片田舎でDel Marのゼブラ柄を自慢気に着ている人がいたら、小言の一つも言いたくなる。

もう一度、同じ呟きをかましそうになったが、
煙草を吸引することで、それを抑えた。
私が発しそうになった小言は、煙と共に喫茶店の天井へ溶け込むようにして消えた。

珈琲館シャモニー。
古町屈指の名店である。

わたしは、古町4番町の喫茶店で古着屋突入までの暇潰しをしていた。

そう、今から本業の古着屋訪問を控えている。
何度も話しているが、
私は古着だけでなく、古着を取り巻く文化や人そのものに興味がある。
際限のない多種多様な名作の数々、そしてそれを今日まで継承してきたスタッフ達。
間違いなく新品服にはない、地域性ごとの色がある。

難しいのは、スマホとにらめっこするだけではそれらは理解できないということ。
その土地へ足を運んで、自分の五感を用いて答えを導きだすことに意味があった。
こんなことをやっているのも、相当な物好きだけであろう。
金も掛かるし、所帯を持っている者がやれるわけない。
なので、せめて自由に動ける私が自分の身を削ってこれを伝えていかなくてはならないと思っている。
私の活動が、少しでも読者諸君の古着に対する解像度をあげることに繋がれば本望だ。

そんなことをぼちぼち考えていたら、
古着屋がオープンする頃合いになった。

さて、新潟古着のお手並み拝見といきますか。

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新潟古着の訪問記録をする前に、
前提として、新潟古着にどんな特徴があるかを整理しておく。

①日本一の古着屋が新潟にある点 

 何を以て日本一とするかは人それぞれであるが、
 昨今盛りあがりをみせるビンテージ古着シーンにおいて、
 海外からみたとき日本一といえる古着屋は「mush room」で間違いないだろう。
 それがここ、新潟は弥彦村にあるのだ。

②新進気鋭の古着屋の存在
 
 新潟には今、勢いのある古着屋が幾つもある
 ◆近年物のアウトドアブランド系古着を展開する某店
 ◆TikTokで爆発的にフォロワーを増やしたビンテージも充実した某店
 ◆先日高円寺apricotともコラボした若者ギャング系某店
 ◆燕三条にて夫婦で運営するビンテージメインの某店

 さっと思い付くだけでこれだけだ。
 新潟の人口は230万、全国19位。
 私の住む静岡と比較しても、人口や地の利で劣るが、
 圧倒的に古着屋レベルで秀でている。

③かつてデザートスノー新潟店が存在していた点

 デザートスノーという、下北沢を中心に展開する量販系古着屋がある。
 もし、知らない方がいたら古着人生をもう一度やり直してほしい。
 関西のJAM、グリズリー 関東のシカゴ、フラミンゴ等々と肩を並べるくらいに有名だ。
 かつてのデザートスノーの姿を私は詳細まで知らないが、
 現在はルミネエスト新宿、ルクア大阪、イオンレイクタウン(埼玉県越谷市)と商業施設内に店舗を持ち、そのほか東京・下北沢に6店舗、町田に1店舗、福島・郡山に1店舗を運営する。(取材文より引用)
 たしか、今は千葉と福岡にも展望があったはずだが。

 量販系古着屋は、当然ながら規模の大きい都市にしか立地していない。
 そりゃあそうだ、買い支える購買層がいないといけない。
 しかし、新潟はどうだろう。決して人口は多くない。
 現在はクローズしているため結果だけみれば、
 思うように売上を伸ばせなかったのかもしれないが、
 出店を決めるだけの重要な要素があったことが予想される。

 また長くなってしまったが、
 以上が私の思う、新潟古着の興味深いポイントである。

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※喫茶店を出たところに話しは戻る

以下、新潟で調査した古着屋の数々だ。

THS MAN vintage

入りやすいお店構え。

 今回、特に気になっていた古着屋である。
 何よりの特徴は「TikTokとYouTubeで顧客を獲得した」という点である。
 どちらかで売れたから古着屋を開く、といったパターンはあるが、 
 当該店の場合、古着屋オープンが先で、発信方法としてこれらを選択している。
 
 TikTokは驚きの5.2万フォロワー(2024/10/08現在)
 YouTubeも1.8万のチャンネル登録者だ(2024/10/08現在)。
 肝心のインスタの方は1.3万と聞くと本末転倒だが、
 これは店員自体に強力な若年層ファンがついているといえる。

 さて、いつものように店の前で
 二礼、二拍手、一礼。
 店内はコンビニほどの比較的広い作り。
 敷地のうち、手前の区画はレギュラー、
 奥の区画にはビンテージやアクセサリーが並ぶ。
 手前のセンターテーブルには青、黒ともにデニムがモリモリと盛られていた。
  
 ここの特徴は豊富なスタッフ。
 積極的に声を掛けるスタッフがレジ常駐含め、4名。 
 おそらくこのメンバーで買い付けから運営をしている。
 YouTubeやTikTokなどの動画編集までやってのけるんだから驚きだ。
 
 客も、TikTokが主流だからか、
 20歳前後くらいの子達がメイン。
 Levi'sのデニムやラルフのスウィングトップを手に取り悩む姿は微笑ましかった。
 
 私はぐるぐると店内を回っては、話し掛けられる度に
 「Carharttのメキシコ製を探しています」と適当な話題をつくって逃げ回った。
 総評。賛否両論あるが、私は新しい古着屋のスタイルとして興味深く思う。

straight vintage

古着エリアから少し離れた、
閑静な住宅街に位置する。

 確か2年ほど前にオープンしたであろうお店。 
 ●●●●●●●●で修行を積んだお洒落なオーナーが独立し開いたお店だ。
 私が新潟イチ推している古着屋である。
 L.L.Bean、Patagonia、Eddie Bauer、LANDS'END
 BANANA REPUBLIC…

 このあたりの所謂レギュラーと言われるところの変わり種から、
 トゥルービンテージまでを幅広く扱う洒落店。
 私はここのお店で何回か通販させていただいており、
 特に近年アウトドアの小物が極上だ。

 このところ競争率も高く、掲載後は速攻で電話しないと良いものはすぐ売れてしまう。

 しかし、今回訪問してみて分かったが、
 特に週末になるとまとまった数、店頭に優先入荷する。
 それを週明け、1日3点ほどずつ掲載していく。
 当然、新潟の店頭となるとあまり大きく動かないため、
 店頭にはかなり良いものが残っているのだ。
 訪問する際はぜひ週末を狙ってみることをおすすめする、
 また、今回この店を訪問するにあたり2回に分け訪れ、客層を掴もうと試みた。
 結果は思いの外、若者が多かった。
 決してロープライスとはいえない価格帯に加え、
 知り合いの人間の中でこのお店を気に入っているのは30~40代のイメージがあっただけに
 私のイメージが膨らみ先行しすぎていた。

 今回は買い物したくなるような極上古着に出会うことは出来なかったが、
 これからもインスタ掲載を楽しみにしているし、
 機会があれば、店頭でもまたお話させていただきたいと強く思う。

Tiny place 

写真を撮っていないので、
新潟市内で有名な弘法大師像を貼っておく。

 友人との約束を優先したあまりに訪問できなかったが、 
 新潟大学医学部のキャンパスほど近くにこちらの古着屋が店を構えている。
 元々、移動販売で展開していたが、たしか今年満を持してオープンしたはずだ。
 ビンテージのラインナップは今の流行りを抑えているから、好きな方も多いように思える。

アンノウン

写真を撮り忘れたので
今月閉店する新潟のイトーヨーカドーを貼っておく。

 層でいうと、this manの層がもうちょい大人になって、更にそのなかの強面だけを抽出したような具合だが、
 だいぶお洒落に振っているレギュラー中心のお店。
 今回、訪問したかったのだがお店の前で5人くらいが入り口を囲んでおり入ることが出来なかった。

 ここは高円寺のapricotとも組んでpop upを先日している。
 所謂、私がギャングと呼ぶ古着好き層のため、
 彼らとは分かりあうことはできないのだが、横ノリ系や反社系の服が好きな方はぜひチェックしてほしい。

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以上が、新潟古着のレビューである。
今回は、三条と弥彦村以外の古着屋に厳選したが、
個人的にはそれぞれに色が光る、程よいレベルの古着タウンだなと感じた。
(相変わらず地方No.1は熊本で揺るぎないが)

今回、殊更新しいことを見出だせたわけではないのだが、
まとめらしいことを最後に述べておくと、
「新潟古着はこれからも流行るし、それを下支えしているのは県民性である」と結論づける。
※あくまで一介の古着屋ファンとしての見解です

まず、新潟の古着購買層は自分が思ってたより「若い層」だということが見えた。
彼らは今後、様々な誘惑に揉まれるが、古着が好きであればこれからいろいろなものに手を出していくだろう。

そして、県民性。
新潟の県民性で古着に繋がること、それは
「粘り強く、堅実勤勉、保守的」

「だが同時に東京への憧れがあり新しいものを受け入れる柔軟性」。
この2つだ。

「粘り強く、堅実勤勉、保守的」
ここでは、地道な古着集めをこつこつと継続できる力、また、店員に言われたことを忠実にこなす真面目さ愚直さ、さらにはアメリカ製主義など、いい意味で保守的な盲目さ。
これらは古着を長く続ける上で重要だ。

さらに、これと相反するように存在する
「東京への憧れががあり、新しいものを受け入れる柔軟性」
これも大事な要素。
新潟には東京資本系の大型店舗がたくさんあるし、
だからデザートスノーがあったのだろうと予想できる。
新潟は新幹線で東京と直結していることも大きい。
新潟にとって東京は前ならえで見習うべき町であり、永遠の憧れなのだ。

しかし、歴史的にみれば、
北前船の全盛期は東京よりも関西と繋がりが強かったのがこの新潟だ。

鉄道の開通後、全てが変わってしまった。
あんなに清楚だった同級生の女の子が、都内の大学に進学して男の味を知って変わってしまうように…

そこにあるのは「面影」。

ここでもまた、次のキーワードを拾ってしまった。

というわけで
第3章では「面影の町の""面影""」に迫っていく。
ここでは一人の男と、男に案内された町の""隙間""にたいへん助けられた。
この場を借りて御礼を申し上げておく。


第3章に続く。





 





 






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