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岡山市の中心拠点・石山公園のあるべき姿とは? パークマネジメントに向けたビジョン策定へ

岡山市の中心市街地にあり、岡山城のふもとで地域住民の憩いの場として様々なイベントなどが開催される石山公園。

その石山公園の再整備計画に合わせて、将来的なパークマネジメント導入を見据えた石山公園のあるべき姿について、石山公園活用検討会という官民連携の協議会を中心に今後の公園活用に向けたビジョン策定やパークマネジメントに向けた情報整理などを行う業務に2021年および2022年の2年間携わりました。

ここでは、具体的に取り組んできた内容やステークホルダーを巻きこみながら公園活用のビジョン策定とそのステップについて記載できる内容を中心にまとめていきたいと思います。

公園のあるべき未来像を描き出す

石山公園の様子、右手には旭川が流れる

2021年度は、石山公園の過去の実施内容の整理と現状課題の洗い出しを行い、公園のあるべき未来像やこれから公園に求める姿について、石山公園活用検討会のメンバーらとともに、公園のイメージや公園に対する考え、意見を引き出すファシリテーションを行いながら議論をまとめていきました。

ファシリテーションは、2021年の1年間を通し、関係者らと定期的な会合の場を設けながら、各ステップを踏みながら進行していきました。

ステップ1:市の政策方針、石山公園活用検討会のこれまでの活動整理

石山公園の今後の活用方針などを議論する石山公園活用検討会は、岡山市の職員をはじめ、商店街の方々や地域でまちづくりを行う団体など、官民の様々なプレイヤーが集まっています。いわば、石山公園に関わるステークホルダーが一同に集い、公園活用についての将来像を検討する場といえます。

そこで、ステップ1では、改めて岡山市における都市計画の方針や石山公園を中心としたエリア一帯における重要性、歴史的な文脈、まちづくりの方向性などを確認するため、市の政策方針などを参照しながら市のビジョン、そして石山公園の位置づけについての認識統一を図りました。

市の中長期のまちづくり計画の方針を参照しながら、石山公園が地域の賑わいの中心であり回遊性を高める拠点であることが再認識されました。

また、石山公園の景観や公共空間としての活用の実証的取り組みとして、平成27年、28年にオープンカフェ社会実験が実施されました。実施後のアンケート調査などから、カフェ等を起点とした拠点作りや回遊性向上が要であることが挙げられました。

それらを軸に石山公園の今後の利活用や将来的なパークマネジメントに向けて、官民連携による石山公園活用検討会という協議会が設置され、石山公園の活用方針に向けた議論や、市民協働を促進するための情報整備やオープンカフェの常設化といった取り組みがこれまで行われてきました。

これまでの石山公園活用検討会の活動の経緯、そして成果について検討会のメンバーらと確認した後、これからの都市と公園のモデルを目指し、公園の体験価値とそれらを支えるもの、および想定される課題について、「空間」「プログラム」「サービス」という観点から意見を交わす場を設けました。

また、参加者らが抱く石山公園がもたらす価値や石山公園がまちにあることでよってどんな魅力が生まれているのか?といった考えを共有し、各々からの意見を集約していきました。

ステップ2:ロジックモデルによる叩き台の作成

ステップ1にて、これまでの石山公園における活動の整理や石山公園の価値についての意見を交わしてもらいながら、そこで出てきた意見や考えを踏まえながら、次は具体的に石山公園のありたい姿や具体的な活動方針を設定することが必要です。

そこで、「ロジックモデル」という方法論をもとに石山公園のありたい姿、将来的なビジョンを作成しながら、具体的な公園活用に向けた事業や活動を導き出すこととしました。

ロジックモデルの構造について

ステップ2では、「ロジックモデル」についての理解を深めるとともに、ステップ1にて各々から出てきた意見を集約しながら、ロジックモデルの議論の叩き台となるものを作成しました。

* 「ロジックモデル」とは
事業や組織が最終的に目指す変化・効果の実現に向けた道筋を体系的に図示化したもので、事業の設計図に例えられる。ロジックモデルは一般的に、アウトカム、アウトプット、活動、インプットを矢印でつなげたツリー型で表現される。
ロジックモデルの作成は、事業により最終的に達成したい状況(=最終・長期アウトカム)の検討からはじめ、その最終的に達成したい状況を実現するためには何が必要か、という観点から逆算して中間(中期)アウトカム、初期アウトカム、アウトプットや活動、そのために必要な資源を検討する。
ロジックモデルを踏まえた検討方法では、最終アウトカムの検討、中期・初期アウトカムの検討、初期アウトカムを踏まえて、アウトプットおよび活動を導いていく。既に事業を実施している場合、これまで実施してきた事業が、上位の目的と照らして適切かを検討する。もし、最終アウトカムから逆算して考えてきた事業と現在実施している事業にギャップがある場合は、事業内容の修正も検討する。
最終アウトカムから逆算して考え、自団体の事業だけでは目標実現に十分でない場合は、自団体の事業を拡張するか、他団体・組織との連携を検討していく。

ロジックモデルの作成方法や説明については、以下の資料などが参考になると思います。
https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2019/01/gra_pro_soc_gui_03.pdf

ステップ3:ロジックモデルをブラッシュアップするためのワークショップの実施

ステップ3では、具体的に石山公園活用検討会のメンバーらと対面によるワークショップを通じて各自の考えの整理し、および各自から出てきた意見をもとに私が叩き台として作成したロジックモデルを基盤に、内容のブラッシュアップして将来像を明確にし具体的な活動に落とし込む回としました。

ワークショップの様子

ワークショップでは、冒頭、各自の石山公園に対する考え方や思いについてワークショップシートをもとに対話を図り、作成したシートとともにワークショップ参加者の意見を集約、拾い上げながらあるべき姿に向けたブラッシュアップを図っていきました。出てきた意見や考えを対話しながら言語化していき、ロジックモデルに落とし込む作業を行いました。

ワークショップの様子
ワークショップの様子

ステップ4:ワークショップを通じて生まれた具体的な方向性

ワークショップを通じて、石山公園の特徴ともいえる具体的なキーワードが浮かび上がってきました。これらのキーワードを参照しながら、長期的アウトカムとして3つの具体的な方向性が明確となりました。

この3つの具体的な方向性からブレイクダウンしていき、中期アウトカム、短期アウトカム、アウトプットとそれらを生み出すための具体的な活動内容、そしてそうした取り組みを生み出すために必要なリソースの洗い出しを図っていきました。

具体的な活動としては、現状行っているもの、今すぐにできるもの、今すぐにはできないかもしれないが、将来的にあったほうが良いものはなにか、自分達でできること、周囲の企業や団体を巻きこんでできることはなにか、といった観点から意見を交わし、それらの活動に必要なリソースについて考えていきました。

ステップ5:検討会メンバーらで作成したロジックモデルの完成

ワークショップやその後の議論を通じて、最終的に石山公園活用検討会としてのロジックモデルが作成されました。現時点で取り組めていない活動内容もロジックモデル内に組み込まれたことで、今後の検討会としての具体的な活動やパークマネジメントに向けた重点的な活動も浮き彫りになりました。

完成したロジックモデル(内容は一部ぼかしています)

こうしたワークショップを経て、検討会メンバー同士の石山公園に対する共通イメージや目標をすり合わせできたことは大きいです。

検討会に参加している民間企業や民間団体の方々は、石山公園と様々な形で関わっています。そこで、個々の活動やプロジェクトにおいて今回作成したロジックモデルを参照することで、取り組むプロジェクトがどのようなアウトカムに影響を及ぼすのか、互いに認識している共通目標における位置づけが明確化されることになったともいえます。

もちろん、ロジックモデルは作成して終わりではなく、定期的な見直しも必要であり、将来像と現時点での取り組みとの差分を意識しながら、どのような場にしていくか、長期的な目標そもそもの定期的に見直していくことが大切です。そのたびに、公園に関わる様々なステークホルダー同士で共有・認識できるようなフレームをもとに議論や意見交換をしていく体制とすることが大切です。


ステップ5までをとおして、石山公園のあるべき姿、将来ビジョンの策定の1つの区切りとなるアウトプットを生み出すことができました。

期間としては、約半年近く、一ヶ月毎程度の会合を重ねたことになります。互いに顔をつきあわせ議論を重ねるという行為を通じて、互いの理解や共通の目標設定ができたことも大きな成果といえるでしょう。

具体的なパークマネジメントの先進事例から学ぶ

2022年度は、2021年度に策定した石山公園のビジョンから具体的な活動や取り組みに向けたアイデアや知見を重ねるため、公園活用の実践者やPMOに取り組んでいる方々らを招聘し、先進的な取り組みからの学びをもとに石山公園という現場にいかに落とし込むことができるかを考える機会としました。

ゲスト1:岡山NPOセンター代表理事・石原達也さん

1回目のゲストとして、特定非営利活動法人岡山NPOセンター代表理事の石原達也さんをゲストにお迎えし、同じ岡山県内にて取り組んでいる活動内容や、国が推進する全国のパークマネジメント事例の情報共有を行いながら、石山公園活用検討会メンバーと共に石山公園の今後のあり方や公園活用、地域経済活性化に向けたアイデアを磨く機会としました。

石原さんからは、北長瀬ふれあい総合公園におけるパークマネジメントの取り組みについてお話いただきながら、市民が関わることにより公園の可能性が広がることの重要性や公園の活用に向けた市民の会や事務局といった組織図とそれぞれの役割についての知見を共有いただきました。

同パークマネジメントでは公園の正式オープン前の1年間の活動として活用準備会を設置し、活動準備会として公園活用を推進するためのルール(手法)の検討・整理、新公園オープン後の「協議会」の役割整理、社会実装の実施と課題把握、指定管理に向けた反映、社会実験の一環である助成事業の審査、社会実験の一環としての継続事業の承認など、オープンに向けた様々な取組を踏まえながら公園活用のあり方を模索している様子をお話いただきました。

ゲスト2:アーバンピクニック事務局長 村上豪英さん

二回目は、関西圏における公園活用に取り組みとして具体的なパークマネジメントの実装が本格化する神戸市の事例や活動について学ぶ場としました。

ゲストとして、アーバンピクニック事務局長、一般社団法人リバブルシティイニシアチブ代表理事等を務める村上豪英さんをお招きし、村上さんが取り組んできた神戸・東遊園地の活用のこれまでや実践における課題、公園活用におけるポイントについてお話いただきました。

村上さんによるプレゼンテーションの様子

村上さんのお話では、市民主導による社会実験を丁寧に重ね、社会実験において展開されたオープンカフェやブックスタンドのような来園者に対するファシリティの提供および、カフェ等を通じた地域との接点を作ること、ホスピタリティの提供は単純なカフェの収益性のみならず、いかにして公園の魅力や来園を促進するためのコミュニケーションの場であること、そして、それらに従事する事業者の主体的な責任と参画の重要性が語られました。

また、イベント主催者らとの密なコミュニケーション、利用者や来園者を消費者ではなく主体的に公園活用に参画する「市民」とするための仲間作りのための考え方は、石山公園においても石山公園をより良くしたいと考え、行動する人を増やしていくための方法論として大きな参考となる点であり、大変参考になる議論や意見交換が行えました。

石山公園にある多様な地域資源を活用した取り組みの創出を目指して

勉強会等を通じ、様々な観点から都市における公園の存在、公園の公共性、地域における居場所としての公園、地域住民らが、いかにして公園の活用や地域住民らが自主的に公園をより良くしていくために必要な考え方や仕掛け作りについて深い学びを得る機会となりました。ここで得た知見などをもとに、これからの石山公園活用検討会や今後の公園活用の取り組みに様々な形で活かすことができる知見となりました。

石山公園は、旭川水辺再生およびエリア一帯の価値、岡山城・後楽園といった周辺施設といった、周辺の多様な地域資源が点在する場所であり、それらを有機的につなげながら地域の拠点としての公園を有効活用することで、地域住民らは日々の憩いの場所、誰が気軽に過ごせる場所でありつつも、観光客等に対しても様々な地域の魅力を届ける場としての可能性が改めて再認識できたといえます。

これらのアイデアや具体的な先進事例を参照しながら、作成したロジックモデルによる長期的目標設定や具体的な活動案を基盤に、今後の石山公園の具体的な活用方法、および石山公園の価値を創出するための事業構築の基盤を整え、具体的なパークマネジメントを推進していくための礎となる業務となりました。

今後の公園運営や活用のための多様なステイクホルダーそれぞれにおける意識の共有を図っていき、各々が石山公園に対する当事者意識を持ち、互いにこれまで以上に緊密に連携しながら活動していくことが求められてきます。

石山公園の活性化、および旭川水辺まちづくり、岡山カルチャーゾーン一体の活性化、ひいては岡山市内全域の賑わい創出や地域ブランドの創出を図り、地域経済活性化の一助となるための活動のさらなる推進につなげていただきければ幸いです。

事業パートナー:岡山市、石山公園活用検討会
石山公園活用検討会事務局:NPO法人ENNOVA OKAYAMA
ファシリテーションおよび企画ディレクション:江口晋太朗(株式会社トーキョーベータ)


まちづくりにおける、こうした合意形成を図るためのファシリテーションや、地域のビジョン策定、観光政策や中小企業のための創業支援のための取り組みなどの知見を有しています。ぜひ、いつでもご相談ください。

今後の執筆活動や取材、リサーチ活動として使わせていただきます。