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論理的思考の鍛え方。

冒頭から結論を言うと、論理的思考を鍛えるには、三段論法を学ぶのがいい。
今日に至るまで、歴史上の学者たちが語ってくれているので、様々な例があるが、基本的なのは以下のものだろう。

全ての人間は死ぬ。
Aは人間である。
Aは死ぬ。

こうやって三つすべて読むと、何の変哲もないが、最後を問題にすることによって、読解の難易度が少し上がる。
例えば、

問題:Bの道について正しい選択肢を選べ。

Aの道には落とし穴がある。
目の前にAとBの道がある。

選択肢1:Bの道には落とし穴がある。
選択肢2:Bの道には落とし穴がない。
選択肢3:Bの道には落とし穴があるかどうかわからない。

この問題の正解は「3」だ。
ただし、最初に言及される内容が「全ての道には落とし穴がある。」なら、正解は「1」になる。論法で重要なのは、前提となる事象によって、最後の答えが異なるということであり、「わからない」ということも回答になるということだ。

さらに難易度を上げるには、回答を記述式とすればいい。
例えば、

問題:Aのこれからの行動について記述せよ。

Aは毎日、牛乳を500ミリリットル飲む。
Aは今朝、牛乳を500ミリリットル飲んだ。
この後、Aは牛乳を……。

ここまで読んだ人なら簡単かもしれないが、急に質問されると間違う人がでてくる問題だ。前提として「牛乳を500ミリリットルだけ飲む。」と書かれていたら、Aのこの後の行動は「本日はもう飲まない。」となるが、前提として書かれているのは「500ミリリットル飲む。」であって、もしかしたらそれ以上牛乳を飲む日があるかもしれない。だから、上記の回答としては、「飲むかもしれないし、飲まないかもしれない。」が正解だ。

論理的思考の怖いところは、学べば誰でも身に付くのに、多くの人が学んでいないという現実だ。日々の生活の中で、例に挙げたような論理を経験しつづけてはいるが、不正解の回答を選択しても、その回答が不正解だということを認識しないまま歳を重ねる。

世の中の大半のことは、自分の都合でどうにでもなるものばかりだ。昼飯のメニューを何にしようが、誰からも怒られないだろう。自分の財布の中身と食べたいもの好きに選べばいい。健康に気をつかっている人もいるだろうが、食べた直後に答えの正誤がわかることはないので、基本的には他の人と同じだ。

だが、仕事ではどうだろうか?

論理的思考ができないと思われる人の多くが、例で挙げた「わからない」という選択肢を忘れている。そのため、追跡調査をせずに、今ある前提の中で答えを出し、わかったふりをしてしまう。その結果、前提条件が本当は違った場合、その回答は間違ったものになる。

先の「AとBの道」の問題で言えば、Aの落とし穴しか言及されていないのに、Bの道に進んで落とし穴に落ちる場合だ。

生活や仕事の中で論理的思考が必要とされる場面では、例題のように、前提から順序よく思考できることは極めて少ない。多くの場合、前提を探るための思考が必要となる。だから、三段論法の訓練では、結果を見せてその結果になる前提を答えさせるものもある。

現実の世界で、回答を間違った人に残る選択肢は、誤りを認めるか、意固地になるかのどちらかだ。しかし、論理的思考ができない人は、前提の違いに気づかないので、誤りを認められない(前提の間違いを指摘されても誤りを認めず、自己弁護をする人が多い)。そのため、いつまで経っても、論理的思考が鍛えられない。

また、安全策を取ろうとするあまり、追跡不可能なところまで前提を調べようとする人もいる。重箱の隅をほじくり、いつまで経っても進まない状態だ。真に論理的思考ができる人であれば、前提条件を調べるべきかどうかの論理的判断もできるので、このような事態には陥らない。

一方で、「直感(直観)が優れている」と言われる人の多くが、直感を働かせる短い時間の中で、大量の論理的思考を行っている。無鉄砲に当てにいっていれば、やまが外れることが多くなる。けれど、直感が優れている人は、(当たり前だが)直感が当たると人々から思われている。

実は、この直感のことを「暗黙知」と言い、暗黙知は経験によって培われる。今回で言えば、論理的思考を学ぶ経験だ。学ばない人がいつまで経っても、論理的思考ができないように、論理的思考ができる人は、歳を重ねれば重ねるほど論理的思考の経験を重ねる。そして、この経験の差はどんどん大きくなる。だから、論理的思考をしたいと思ったら、早い段階で、論法を学んだ方がいい。そして、一番簡単だと思われるのが、三段論法ということだ。複雑だと思われる事象も、論理的に思考すれば、シンプルになる。

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