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地域ブランディングのはじめかた(実例つき)

みなさん、こんにちは。デザインと写真の事務所「サンポノ」の江口です。本日は、地方創生や地域活性化とも関係が深い、地域ブランディングについて書こうと思います。


企業ブランディングと地域ブランディングの違い

はじめに、ブランディングにおける企業ブランディングと、地域ブランディングの違いを明確にしていきます。なぜかと言うと、企業ブランディングの考え方や手法で、課題の種類がたくさんある地域ブランディングを行おうとすると、地域住民や関係各所と摩擦が起きやすくなったり、効果的とは言えないアプローチになってしまうからです。
これは、商品ブランディングでも同じで、企業と商品のブランディングは近いけれど、地域ブランディングは別物と考えた方がいいです。
それではまずは、企業ブランディングの特徴から見ていきましょう。
(ここから先は企業ブランディングとしか書いていませんが、商品ブランディングも含まれていると考えても大丈夫です)

企業ブランディングの特徴

  • 事業内容が明確なので、必要なことが分かりやすい

    • 企業の事業内容やプロジェクトの内容は決まっているので、課題の発見もしやすく、アプローチにメソッドが応用できます。例えば、製品やサービスの質が悪いのか、周知の仕方が悪いのか、一貫性がなく品質の低いデザインとなっているのか、はたまた、社内に事業のミッションやバリュー、パーパスなどが浸透していないのかなど、ブランディングを進める上での課題がたくさんあっても、それぞれの対応策は自ずとあります(こちらの話に聞く耳を持たない場合は別ですが)。いずれにせよ、課題を見つけやすいのが、企業ブランディングの特徴で、ブランディングについて書かれている書籍や記事の多くは、企業ブランディングや商品ブランディングについてのものだと見受けられます。

  • 人材や資金を集めやすい

    • 事業には必ず付加価値が存在しているので、地域ブランディングよりも集められる資金の額も大きくなりやすく、集めやすいです。つまり、ユーザーや資本提供者にとってのメリットが分かりやすいのが特徴と言えます。また、ブランディングによって採用募集を強化したりも可能なので、人材を集めやすくなります。

  • 結果が分かりやすい

    • 製品やサービスにおけるレビューや導入事例、売上(利益)の向上、従業員満足度の向上など、結果が数値として表れやすいので、結果の評価がしやすいです。また、数字で表すことのできない定性的な評価もしやすいのが、企業ブランディングの特徴です。

アプローチが明確になりやすいのが企業ブランディングの特徴。

少し急ぎ足で説明をしましたが、以上の事柄が、企業ブランディングにおける大まかな特徴となります。続いて、地域ブランディングの特徴を見ていきましょう。

地域ブランディングの特徴

  • 分かりやすい観光資源がないことが多い

    • 地域ブランディングが必要となる地域では、分かりやすい観光資源がないことが多いので、「ないこと」を逆手にとって、アイデアを考える必要があります。例えば、観光資源がないということは、のんびり過ごすことが可能でもあるので、旅行客がゆったりと過ごせるような施策をとることができます。また、自然環境が豊かであったり、民芸や伝統工芸が残っている地域においては、これらを活用したアクティビティを提供することや、発信することだって可能となります。ただし、すべてありもののままで、PR方法だけを変えて集客しようとするのは止めましょう。既存の状態で魅力がなかったから、人が去ったり、集まらなかったのです。必ず、今までの考え方を変えて、新しいことを始める必要があります。

  • 個別のアプローチ方法を取る必要がある

    • 観光資源のなさや、過疎や高齢化による人手不足、資金不足など、一見すると似たような課題を抱えているように見えるけれど、地域ごとで抱えている問題の本質は異なります。そのため、その地域にあったアプローチを探し出し、実践していかなければなりません。

  • 地域住民やパートナーとなる事業者の協力を得る必要がある

    • 地域住民やその土地にある他の事業者の方々の理解を得られなければ、必ずそのブランディングは失敗します。自分達が行おうとしていることへの理解をしてもらい、応援や協力をしてもらったり、コラボレーションをすることは、地域ブランディングの成否がかかっているとも言えます。自分達の事業体だけが潤えばいいという考え方は、地域ブランディングでは通用しません。また、ひとつずつ手探りで進めていくため、各専門家の協力要請は必須とも言えます。例えば、私であれば、このような考え方やブランディングに必要なことを教えたり、他の強力なパートナーを紹介したり、本質的で強力なデザインをはじめとしたクリエイティブを提供しています。

  • 人材や資金を集めにくい

    • 行政が主導で動く場合は、予算がある程度確保されていますが、民間組織では資金を集める必要があります。助成金やクラウドファンディングなど、資金を集める方法は増えましたが、金額はある程度決まっているので、やるべきこととやりたいことの分別をつけ、長期的な計画を立てる必要があります。また、地域に住んでいる人たちには限りがあり、移住は今でもハードルが高いため、協力者を外部の地域から募る必要があります。外部の人の理解を得られるように努力することは、消費者や旅行客に興味を持ってもらうことにもつながったり、地域住民の協力を得ることにもつながります。

  • 地域によって必要な結果が異なる

    • 地域にお金が落ちること、移住者が増えること、地域住民に活気がでること、旅行者が増えること、認知が向上することなど、地域ブランディングで求められることは多岐に渡り、段階的かつ長期的に結果を見ていく必要があります。気をつけなければならないのが、これらの施策の軸がブレると、その地域の特徴が伝わりにくくなり、地域住民や消費者に誤解を与えることになります。そうならないためには、その地域ブランディングのアイデンティティ(本質)を見定めることを、まずは行わなければなりません。

地域ブランディングはゴールががそれぞれで異なる。

地域ブランディングで行うこと

1:地域のアイデンティティを見つける

これは企業や商品のブランディングにも共通しますが、地域ブランディングをはじめる場合においても、地域のアイデンティティを見つける必要があります。アイデンティティとは「らしさ」とも言われ、これが崩壊してしまったら、その地域ではなくなるというものです。「らしさ」と言うと、いい点ばかりに目を向けがちになりますが、悪い点も認めることで、アイデンティティは強固になり、地域ブランディングの施策に一貫性が出てきます。

2:地域住民の中から行動できる推進者を見つける

これはクライアント本人になることが多いですが、外部の協力者に100%なんでも任せてしまっては、いつかはそのブランディングは終わりを迎えてしまいます。地域住民の理解を得るためにも、その地域に住んでいる人が行動を起こす必要があります。ブランディングにおいて、クオリティの高いデザインやクリエイティブは必ず必要になりますが、それだけで課題のすべてを解決できるほど、地域ブランディングは甘くありません。必ず、その地域に住んでいる人自身が、売り手として頑張る必要があります。
私自身、ブランディングのご依頼を受ける際は、クリエイティブ制作だけでなく、クライアントが自走できるようになるまで成長するお手伝いをするように努めています。

「里山まるごとホテル」で提案したコンセプトの一部。ネガティブな要素をポジティブに捉えたりすることで、その土地ならではのアイデンティティを策定している。

3:強力な外部パートナーを見つける

地域ブランディングでは、消費者や旅行客にお金を使ってもらい、その地域が潤い活性化することや、移住者が増えることが目的となります。消費者や旅行客になりそうな人達は、地域住民と違って、その地域のことは何も知りません。遠く離れた人達に、地域のことを魅力的に感じてもらうためには、精度の高いデザインやライティング、PRが必要不可欠となります。また、外部の視点を取り入れることで、自分達の長所や弱点となる箇所にも気づきやすくなり、より適切にコミュニケーションが取れるようになります。
最初は耳の痛い話ばかりにも聞こえるかもしれませんが、臭い物に蓋をしてきた結果、ブランディングが必要となってしまった状態に陥ってしまったと覚悟を決める必要があります。
もちろん、ネガティブな話だけでなく、ポジティブな特徴も必ずあるので、両方の視点を持つことが大切です。これらを俯瞰して見れるのが、外部パートナーになります。

4:資金を集める

資金がないとやれることが限られてしまうので、資本提供、助成金、クラウドファンディング、銀行融資などを駆使して、資金を集めます。気をつけなければならないのが、助成金申請の仲介事業者が、簡単に助成金を獲得できると広告を出していたりしますが、法律的にはグレーであるようなので、助成金の獲得を目指す場合は、必ず自分達の手で調べ、申請しましょう。

おわりに

いかがでしたでしょうか? 今回は概論として、地域ブランディングの始め方について書きました。詳しいことは私のポートフォリオをご覧いただいた方がいいので、興味を持っていただけたら、是非ホームページからお問い合わせください。ご自身の住んでいる地域に愛情があり、どうにかしたいと本気で思っている方の依頼をお待ちしております。それでは、また次回お会いしましょう。


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