見出し画像

〈青森の旅する朝食〉からはじまる、朝の谷中さんぽ

いつのまにか今年も残り2ヶ月。
10月に入ったといえども日中は日が差せば暑いし、気温が少し下がれど湿度があれば涼しいとは言い難い。

思い返すと5月くらいからすでに夏は始まっていたのではないか。どんどん四季の狭間が薄れていくような感覚さえ覚える。


ここ数年の酷暑は対策を取らなければ命すら奪いかねないほどの暑さで、体力に自信がない自分は夏は少しばかり様々な選択肢が狭められるように思う。


酷暑の影響を受けてか、今年の夏は特に多くの個人飲食店で朝や日暮れからの営業時間を設ける店が多い気がした。

遠方だと日暮れに向かって行くのはハードルが上がるが、朝早くから営業してくれるのはとてもありがたい。



そんな9月のはじめ、友人に会うことになった。

会うのは日曜日。人の多い場所があまり得意でない私はそもそも週末に都心へ出かけるのを避けている。それに加えて日中はまだ残暑が厳しい。


そこで友人に早い時間から
谷中に行かないかと提案してみたのだ。

谷中ならきっと朝は人が少ないし、何より下町特有のあの街並みと落ち着いた雰囲気の店が多いから私は好きだった。返事は快諾だった。






待ち合わせの9時に間に合うように
日暮里駅から歩き始める。

御殿坂に出るとあぁ日暮里に(谷中に)来たんだなあという実感が湧いて好きな景色のひとつだ。駅から出て数歩しか進んでいないのに、空気が変わる感じがする。


そのまま足を進めて
谷中ぎんざ商店街のある方向へ向かう。


思っていた通り、駅構内の人の多さとは裏腹に街はそこまで人は多くなく、目的地方向の裏道に入ればより静かだった。


ひとつ例外があるとするならば、通り道にあるかき氷の有名店「ひみつ堂」は朝から大行列で賑わっていた。し、なんと営業が始まっていた。中にもぎゅうぎゅうにお客さんがいる。かき氷の熱、すごいな……。




日暮里駅から歩いておよそ7分くらい。
複合文化施設HAGISOへ到着。

(ここで友人と合流。遅ればせながら誕生日プレゼントとして花束を渡したのだけど、ものすっごい喜んでくれましてね。。その時の反応と笑顔が合掌したくなるほど可愛くて尊かったー……)


HAGISOの1階はテラスもあるカフェ、ギャラリー。2階はホテルのレセプションとショップ、そして日替わりのサロン。


今回は1階のHAGI CAFEの名物「旅する朝食」を食べにきた。

旅する朝食とは、スタッフさんが全国を旅するなかで見つけたその土地の食べ物を朝に定食として提供する試みのこと。


訪問時の旅する定食は〈青森県〉
お米は津軽ロマン、具沢山のけの汁、ホタテの貝味噌焼き、イカの練り物、豚肉の塩麹焼き、季節野菜のとろろ和え。

朝は基本的にパン派なので、定食は食べきれるか少し不安だったけど、おかずでご飯は進むわ、合間に飲むけの汁はお椀たっぷりに入っていてごくごく飲めるわで、気持ちよく完食することができた。


ホタテの貝味噌焼きはご飯泥棒なおかずで、ホタテのお出汁と味噌が相性ばつぐん。


どれも素材の味がまっすぐに伝わってくるシンプルな味付けでおいしかった。


特にけの汁はお外で飲むお味噌汁にこんなに具が入ってるの見たことないなってくらい具がたくさん。うちでは普段入れない肉厚なしいたけが入っていたりして興味深かった。

お味噌汁の具は作り手の好みや背景が見えるからおもしろい。



定食にはドリンクもセットになっていて、温かいほうじ茶が選べるのがうれしい。外で日本茶が飲めるお店ってありそうでなかなか無いのだ。

食事中、友人が旅館の朝ごはんみたいだねと言っていたけど本当にそのとおり。いいものを食べさせてもらったな。


間接照明が照らす店内は
程よい暗さがちょうどいい。

仕切がない隣接するギャラリーは天井が高く自然光が降り注ぐ。食事をした席の後ろには、座ると腰の位置くらいの高さに窓があるのもおもしろく、花が咲いているのが見えた。

初めての店は何かと気が張りがちだが、終始リラックスして過ごすことができた。いいお店と巡り会えると、とてもうれしい。





食べ終わって外に出ると10時過ぎ。徐々に賑わって来た谷中のメインストリートになる谷中ぎんざ商店街周辺は多くの人が行き交っていた。


食べ歩きができそうなお店に、トルコ雑貨が目を引くお店、他にもパン屋や珈琲屋(喫茶または珈琲豆の販売店)がいくつかあり、個人商店が多い街であることが伺える。


こういう小さいお店がたくさんある街がやっぱり好きだなあと思う。散歩が捗る街はいつ何度訪れても新たな発見があって飽きがこない。




ひと通り周辺を見終わった後で、もうひとつの目的地「asatteのジェラート」へ。


お邪魔するのは3度目だけど、外観があまりにも民家に馴染みすぎていて、いつも一瞬あれ…?と探してしまう。赤い屋根を見つけたら到着のしるし。

写真は以前お伺いしたときのもの
かき氷屋のひみつ堂近くの道から入っていけば、曲がり道のところに小さな看板が出ている。ソフトクリームのイラストが目印。かわいいので要チェックだ。



この日選んだのは定番シリーズの黒ごまジンジャー。濃ゆいごまの味にピリッとした生姜の風味が効いていて次の一口が止まらないおいしさ。


昔は生姜を見つけたら間引いちゃうくらい苦手だったけど、今はお菓子に入っていたって進んで食べたくなるほど生姜好きへと変化した。


ここのお店の姉妹店にあたる焼き菓子屋「TAYORI BAKE」で前に買ったジンジャーブラウニーも好きな味だったな。



冬に訪れたときは空気は冷たくて、でも日差しがあたたかくて、気持ちが良かった。

この日は暑かったので店内で食べたけど、涼しくなったら裏庭で食べることをお勧めしたい。都内とは思えないくらい静かで居心地が良いお気に入りの場所だ。





ジェラートを食べ終えて少しだけ周辺を散策してこの日は解散した。時間はまだ12時ごろ。休日に朝はやくから動き出すと時間の流れがゆっくりに思えてなんだか不思議な気持ちになる。


帰るころには街や駅は当然のように混んでいて、朝集合にしてよかったと心から思った。




帰り道は少しだけ寄り道をして
おやつをひとつ買うことに。

北海道のお菓子メーカー柳月の三方六かぼちゃバージョン。

かぼちゃを模したデザインが私の好みに大ヒットホームラン。ひと口食べて味の再現度にもびっくりした。春夏秋冬とそれぞれに季節を感じさせる食べ物はあるけれど、秋の味覚はいっとう季節のはじまりを感じさせるように思える。


購入した三方六は自宅についてからのお茶のお供になった。


友人と会ったのは時間にしたらそう長くないけれど、歳を重ねてこういう会い方もいいなと思うようになった。


お互いの時間を持ち寄って、おいしいものを囲んで、少し歩いたりしながらなんてことないことを話す。そして、まだ少し余裕のある身体と心で帰路について、楽しかった記憶を反芻しながら残りの休日の時間をゆっくりと過ごす。


こういう余力を残すような、余白をあえて作るような動き方が何事にも自分に合っているのだと思う。現実はそう綺麗に運ばないことの方が多いけれど、理想ではある。


久しぶりに日の光を浴びたような
きらきらとまぶしい、いい一日だった。








この記事が参加している募集

休日のすごし方

おいしいお店

いただいたサポートは、大好きな街京都に再訪できるよう京都資金として貯えさせていただきます。その際はぜひ京都来訪noteを執筆したいと思います!