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FERNANDO BOTERO ANGULO


フェルナンド ボテロ アングロ
(FERNANDO BOTERO ANGULO)



コロンビア出身の画家となる。


昨年の京都市京セラ美術館で鑑賞したボテロ展。
コロンビア出身の芸術家の展示会が残り1日と
なったその最終日前に行ってきたものである。
いわば、前ブログの保存記事となる。




タイトルにもなっている、ふくよかな魔法であるが
彼が描く人物もであるが、生物も静物もどこかしら
ふくよかな絵となっており、それが彼の画風。




彼が楽器のマンダリンを描いていた時に遊び心で
丸みを帯びたそれを大きく描き、楽器の中に開く
サウンドホール(ギター等に開いた音を反響増幅
させる為の穴)を小さく描いた時、そのものへの
ふくよかに描くスタイルへ目覚めるきっかけとも
なり、彼のその後に描く絵の軸となっている。
人物画にもその技法は表れており、顔の中の目、
鼻、口も小さいし、男性のシンボルや女性の胸も
オマケ程度に描かれる画法が愛嬌があって良い。



私自身としては、ふくよかとか、メタボっぽい等
に対し美意識を感じないのであるが、彼の作品の
全てで計算された配色は、見事な安定感がある。
上の静物画など絵の構図と配色には一切の否定的
な要素がないのである。これを原画で見た時の
完成度に私は感服させられた。



冒頭画像のオレンジの画も、主題となるオレンジ
に敢えて背景にオレンジを持ってくるなど、凡人
には思いもつかないカラーセンスである。木製の
作業台にピンク布、フルーツナイフとシンプルな
絵だが大変に印象深い作品である。



この絵画展が良かったのは最近流行の撮影が全て
OKの措置であった点。昔ならば、絵画展で写真
を撮る事など一切禁止というセオリーが崩れてて
この絵画展もその例外でなく、私もパシャパシャ
と全作品を撮りまくる。それを意識されてなのか
絵画のほぼ全てに邪魔なガラスが外されているが
上部のスポットライトで、絵上部が照かる事から
ほぼネット拾い画像での解説となる。彼の作品は
意外と本屋で探してみたがあまり置いてないので
この紹介はボテロという画家の作品に触れる良い
きっかけになればと思う。


『泣く女』

『泣く女』 彼が高校時代に描いた作品。高校生に
らしからぬ題材ではあるが、ダイナミックな構図
と荒々しいタッチの筆に非凡さが既に垣間見える。


『バルコニーから落ちる女』

『バルコニーから落ちる女』 本当は落とされる女
である。下着の色から商売女なのが分かる。闇の
世界の事に首を突っ込み過ぎたのだろう、口封じ
の為に落とされる女の最期を描く作品。階下には
この殺しを命じた男性の姿が描かれてて、ボテロ
の生まれ育ったコロンビア社会の暗部をリアルに
描いた作品となっている。

『十二歳のモナリザ』 1959年作


こちら今回の展示会には出展されずに残念だった
彼を世に知らしめた絵画である。1963年アメリカ
初のレオナルドダヴィンチの名作の『モナリザ』
がニューヨークのメトロポリタン美術館に出展の
時に、MOMA展へと出展されたのがこの作品で、ボテロの名前が世界へと知れ渡った出世作となる。
下のはダヴィンチのモナリザで、深層部へ伝わる
妖艶な微笑みが再現されている。

『モナリザ』


今回のボテロ生誕90年展の目玉の作品が下の絵


『モナリザの横顔レオナルドダヴィンチにならって』



彼の名を世に知らしめたモナリザの横顔バージョンであり2020年の最新の作品である。生誕90年のボテロだが彼は健在で今も新たな絵を描いている。

彼のパロディ…、ではなく過去の画家達の作品へのオマージュ作品はとても面白く、その自由奔放さも潔くていい。


『王妃マリーアントワネット』 
エリザベート ルイーズ ヴィジェ ルブラン


『バリューカスの少年』 ディエゴ ベラスケス


『女官たち』 ディエゴ ベラスケス


『エドワード六世』ハンス ホルバイン ザ ヤンガー


『アルノルフィーニ夫妻』 ヤン ファン エイク


『ウルビーノ公夫妻像』
ピエロ デラ フランチェスカ

他にもフェルメール、ラファエロ、ルーベンスと
オマージュ作もあるが今展示内容に含まれず省く。



今回の静物画のもう1つの目玉はコレ。
実は3つであるのだけど。

『赤い花』『黄の花』『青の花』 2006年の連作
種類の異なる花達がひとつの花瓶にギュッと集結。
これも見ていてその色彩感覚に酔える作品。
会場に三作品が並んで展示されとても良かった。

『洋梨』 1976年作
齧られた跡、虫喰い穴、飛び出す虫が描かれる。
大きな洋梨の絵の中にも、色々とユニークな描写
がとても楽しい。


『象』

『象』  2007年作
サーカスをボテロが見た時に、どうやらもの凄く
ハマったらしくて、この後にサーカス絡みの作品
も多数描かれている。


『コロンビアの聖母』

『コロンビアの聖母』 1992年作
男の子が手に持っているのはコロンビアの国旗。
故郷を思ってなのか、母親の目には涙が浮かぶ。
ボテロの作品の人物は無表情だが、流れる涙には
感情は描かれている。


『守護天使』

『守護天使』 2015年作
寝ているのはボテロ、その上に浮かぶは守護天使。
非日常的で奇跡的な場面な筈なのに、日常レベル
の雰囲気に描かれているのがとても面白い。


『夜』

『夜』 2000年作
ボテロには珍しく色が少ない作品のひとつ。
夜空を飛び交う悪魔達の姿がとてもユーモラスで
ある。彼の描く悪魔にはオスメスの違う部分まで
ちゃんと描かれてそれがまた愛嬌である。


『庭で迷う少女』

『庭で迷う少女』 1959年作
初期の作品であり、現在とは少し違うタッチ。
一度描いた瞳を淡い色を重ね、敢えてその表情
を分かりづらくしている。迷ったパニック感が
伝わる作品である。


『馬に乗る少女』

『馬に乗る少女』 1961年作
馬と少女の絵の対比のバランスが逆転している。
これも後々の絵にも多数反映されているボテロ
独自の技法。


『寡婦』

『寡婦』 1997年作
寡婦とは夫と死別か、離婚後のシングルマザー。
洗濯や料理と日常のエンドレスの雑事に追われる日々と言う事を聞かない自由奔放過ぎる子供達に
振り回され、猫などペットの世話も自分でせねば
ならない、その自分の為の時間すらない日常の中
ふと、涙する姿を描いた作品。




愛嬌のある画風ながらも、色んな視点で描かれた
これらの作品、一枚一枚を立ち止まって眺めては
人の生きる世界のアレコレを考えさせられる良い
展示会であった。



名称 フェルナンド ボテロ アングロ
   (FERNANDO BOTERO ANGULO)
生誕 1932年4月19日
出身 コロンビア
作品 (以下、アイウエオ順)

☆ アルノルフィーニ夫妻
 ファンエイクにならって (2006)
☆ エドワード二世
☆ 踊る人たち (2002)
☆ オレンジ (2008)
☆ 寡婦 (1997)
☆ 空中ブランコ乗り (2007)
☆ コロンビアの聖母 (1992)
☆ 十二歳のモナリザ (1959)
☆ 守護天使 (2015)
☆ 女官たち
☆ 聖ヨハネの神格化 (1962)
☆ 象 (2007)
☆ 通り (2000)
☆ 泣く女 (1949)
☆ バーレッスン中のバレリーナ (2001)
☆ 花三色組
 赤の花 (2006)
 黄の花 (2006)
 青の花 (2006)
☆ バリューカスの少年
 ディエゴ ベラスケスにならって (1959)
☆ バルコニーから落ちる女 (1994)
☆ マリー=アントワネット
 エリザベートヴィジェルブランにならって (2005)
☆ モナリザの横顔
 レオナルドダヴィンチにならって (2020)
☆ 洋梨 (1976)

★ 展示
ボテロ展 ふくよかな魔法(生誕90年記念)

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