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町内会「コジラVSキングコング」で気付いたオチの多様性(3574文字)

■関西人はオチの無いストーリーを極端に嫌う

関西人はオチの無い話はあまりしません

オチが無いのをオチにする⇒「オチないんかい!」のツッコミが成立することもありますが、これは「内輪ネタ、スベリ芸」に分類され、仲間内でしか成立しないからです。

アクセントとしてたまに使うのは許せても、お互いに認識の薄い間柄や、公共の場で使用すると通用しません。

「結局、何が言いたいねん?」「お前の話つまんねーよ」となる可能性が極めて高い。

結論やオチの無いストーリーは、相手との意思疎通や説明責任を放棄した「自己満足の独り言」でしかありません。

オチの無いストーリーを他人に受け入れてもらう、評価を求めるのは間違っている。

ー2024年 7月28日(土)町内会で「ゴジラVSキングコング」を見るまで、そう考えていました

私はゴジラマニアである。平成以降のゴジラ映画は全て劇場で観に行った。もちろん過去の作品は全て鑑賞している。

とっとこハム太郎と同時上映していた苦難の時期を乗り越え、2024年 ハリウッド版「ゴジラxコング 新たなる帝国」はもちろんのこと、「ゴジラ-1.0」は家族で2回鑑賞した。


小学校の夏祭りイベントの出来事

2024年 7月28日(土) 小学校の夏祭りイベントを観に行った。

末っ子の娘は夏祭りで6年生のクラスの有志のグループでダンスを踊る。娘は当日は朝からリハーサル及び事前練習で、朝起きた時にはもういなかった。

娘はプチ反抗期に入っており、「恥ずかしいから絶対に見に来ないで×2」と前日から言っていた。

家族全員で見に行くことにした

ダチョウ俱楽部でも「絶対に来るな×2」は「来いよ」のサインである。

夏祭りは小学校のグラウンドで開催されており、PTA役員の出店や、ステージが大勢のお客で盛り上がっている。

ステージの前は、仮設テントが張られていてベンチが置かれていた。ステージでは小学生たちの催し物が行われており、プログラムを見ると娘のダンスグループは最後になっている。

長男と長女は友達と合流し別行動。私と妻はステージ前のテントの後部席で娘のダンスを待っていた。

プログラムが押しているのか、娘の番は10ステージ後であった。17時を回っていたが、うだるような暑さで汗がダラダラ流れてくる。

ステージでは先生が司会をして、小学生たちが、漫才、ダンス、歌を一生懸命に披露していた。

「子供は可愛くて、微笑ましいよね~」と妻と話し合っていると、伊福部昭の「ゴジラのテーマ」曲が突然流れてきた。

「次の出し物は6年生の2人による『ゴジラVSキングコング』です」


昭和ゴジラの着ぐるみファイト

ゴジラとキングコングのスーツを纏った子供達が出てきた。

「これは、何だ?」

最初に驚いたのは、スーツの精巧さだった。

市販やおみやげ店で売っている着ぐるみかと思いきや、全てハンドメイドの衣装で作られており、ゴジラの顔、キングコングに至っては全身の毛並等、驚くべき程の完成度で再現されていた。

私のゴジラ好きは娘達も知っている。以前、娘から「うちのクラスにゴジラの大好きな子がいる」と聞いたことがある。

ーあの子のことか

ゴジラの顔は「昭和」「平成」「ミレニアム」「シン・ゴジラ」「ハリウッドゴジラ」「マイゴジ(ゴジラー1.0)」と違いがあるが、彼は「昭和ゴジラ」で登場した。

伊福部昭の「ゴジラのテーマ」でステージに上がった二人は挨拶もせず、いきなりステージで怪獣プロレスを始めた。ポカスカ殴り合い、ステージでマウント合戦を繰り広げる。

粗削りな演技であったが、ゴジラはあの重厚な動きを、コングはゴリラの動きを忠実に守っており、軸は決してブレていない。

この戦いはハリウッド版「ゴジラVSコング」ではなく、昭和の「キングコング対コジラ」のオマージュだ。

ただの殴り合い、転ばし合いが3分程続いただろうか。

うだるような暑さと激しい攻防の中で、ゴジラの動きが鈍ってきた。着ぐるみの関係で中では相当な高温なのだろう。自由に身動きが取れるキングコングが優勢となる。

ゴジラはとうとうステージに倒れ込んで動かなくなってしまった。

すると、音楽が「ゴジラのテーマ」から「怪獣大戦争マーチ」へと変わった。東映チャンピオン祭りの再来である。

しかも編集で当時のゴジラの雄たけびを合わせる念の入れ様。すでにマニアにしかわからない領域に入っていた。

その時である

ステージで倒れているゴジラの背びれが光ったのだっ!!

「放射熱線(アトミック・ブレス)を撃つ!」

私は150円で買ったフランクフルトを握ったまま、思わず席を立ってしまった。

あの光はLEDだ。ゴジラの背びれにはLED電球が仕込まれている。

豆電球を使えば、戦いの最中に割れて危険なため使えない。また、配線コードが見えてしまう為、最初からネタバレで興ざめになっていただろう。

「細部に手を抜いていない」

LEDを使うのは賢明な判断といえる。しかし、LEDは基盤が必要となり、各基盤を連結させ、電源を内部に設置しなければ、同時に何個も光らすことはできない。

彼は最後まで観客にバレない様に隠しながら戦い、事前に高度な工作をやってのけていた。更に薄暗くなる時間帯に合わせて、観客から見えるカットで背ビレを光らせる。

ー計算し尽くされてた舞台演出が素晴らしい

私はフランクフルトから付けすぎたケチャップとマスタードが、手に垂れてきているのにも気付かないほど見惚れていた。

何故か怪獣プロレスが再開された?

背ビレが光って放射熱線でコングを倒すかと思われたが、ゴジラは再び立ち上がってコングと怪獣プロレスを続行した。

またもや、ポカスカ ポカスカ、ポカスカと3分以上延々と同じ光景が続く

え、え、え・・・

オチが無い?

暑さと体力の消耗で動きが極端に鈍くなっていた。お互いにステージに何度も倒れ込んでは、気力を振り絞り立ち上がってくる

死力を尽くした苦しい息づかいが観客席に伝わってくる。もう2人とも限界だ。

どうしたら終わるんだ?お願いだ止めさせてやってくれ。

観客の願いが届いたのか、司会の担任の先生が慌てて「はい、頑張りました~」と止めに入った。

最後の挨拶で2人はステージの中央に並んだ時、コングの子は頭の着ぐるみをスグに脱いだ。顔は真っ赤になり汗だくになっていたが、ゴジラの子は頑なに着ぐるみを脱がない。

司会の先生がインタビューした

「好きな怪獣は何ですか?」

見りゃわかるだろ!くだらないコト聞くんじゃねぇよ。失礼だろうが!

コングの子は「キングコングです!」と笑顔で答えていたが、ゴジラの子は「〇&%$$#・・」とマイクで聞きとれない。

司会の先生はインタビューを諦めた様だった。

オチがはっきりせず、ゴジラの子が喋らなかったので、すっきりとした終わり方ではない。催し物が終わって退場する際、観客たちはモヤモヤした気持ちが残っていた。

私は拍手をするタイミングがわからず、司会の先生も戸惑っている。

すると、ゴジラの子は退場する前にコングの子に握手を求めた。コングの子は何かを悟ったのか、コングの着ぐるみを再び付けて握手をした。

そうか、ゴジラの子は最後までスーツアクターにこだわり、ゴジラになり切っていたのだ。

ここで、大きな拍手が沸き上がった。


オチの無いストーリーがオチとなる

シンゴジラ以降、ゴジラ映画でゴジラはフルCGとなりました。CGの進歩は著しく、細部の表現までリアルです。

しかし、スーツアクターはCGには無い、生身の人間が作り出す、微妙な表情や動きがリアルを感じさせ、生命感あふれる演技をすることができます。

スーツアクターの一番の魅力は、観客との一体感を生み出すことで、キャラクターに魂を吹き込むことができることです。

彼は昭和ゴジラを再現し、スーツアクターの魅力を伝えるために無駄な部分を極限まで削ぎ落したのでしょう。それがオチの無い怪獣プロレスだったのです。

彼はスーツアクターをリスペクトし、全ての観客に訴え、感動させました。

見事です。目から鱗が落ちた気分でした。

「オチの無いストーリーをオチとする」

「強い信念だけが、わかる人、わからない人の壁を越える」

彼だけは違う世界を見ていました。プロフェッショナルであったと断言できます。


あとがき

娘のダンスが始まりました。私はテントの物陰に隠れて、スマホの動画で娘のダンスを撮っていました。

10人程度のクラスのグループでダンスをしています。髪型や服装もお揃いで合わせいました。緊張して途中で踊りを忘れたらしく、慌てていましたが立派に踊っていました。

カッコ良かった~

家に帰って何も知らないふりを装って、TVでオリンピックの開会式を観ていると

「ねぇ!見た? 私が一番可愛かったでしょ~~」

来るなって言っておいて、どないやねんと思いました。

動画は編集して娘に渡そうと思います。あと、ゴジラVSキングコングの動画も撮っておけばよかったと後悔しました。


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