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心のnote|エッセイ・創作

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「きっと、誰にも、聞こえない。」 そんな心をふと、垣間見る。
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2020年4月の記事一覧

あぁ、もう、なんで、、

あぁ、もう、なんで、、

「もう一軒いかがですかぁ」
『そこの綺麗なお姉さん、このあとどう?』

トゥルルルルルルゥ
「だぁしゃぁりあぁす。ご注意くださぁい」

ざわつく雑踏を抜けて、いつもの道を歩く。
時折、耳の横を通り過ぎるカタンコトンという
電車の音だけが響いている。

明日も早い。

「ただい...ま...」
ついくせで出た帰宅を告げるその一言は
いつまでも宙を舞っている。
帰らなくなってからどれくらい経つだろう。

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行き場のないこの手は、気づけばまた、カップに延びている

行き場のないこの手は、気づけばまた、カップに延びている

目を開ける。
目を閉じる。

再び開いた目に映る時計の針。
思わず飛び起きる癖さえも抜けた
8日目の昼下がり。

いつもは出しっ放しのよそゆきのヒールも
今は靴箱で惰眠を貪っている。

優雅なブランチとは似ても似つかない
食べかけの出来合ものが喉元を過ぎたころ、
ゴミ出しを忘れていることに気づく。

ビンや缶の詰まった袋を手に
軒先に出た私の眼に映る
荒らされた袋と幾羽かのカラス。

「そっか、火

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上がらない声と見過ごされる現実

上がらない声と見過ごされる現実

ご存知の通りの惨状だ。
どこもかしこもストレスと
不安の掃き溜めと化している。

「リモートワークへ移行
できた仕事もある」
と言えば聞こえはいいが、
その中で渦巻く問題に気づかない人の
なんと多いことだろう。

子どもがいるご家庭では
学校や外遊びで使い果たされるはずの
力を持て余した彼らと対峙しながらの
仕事が余儀なくされる。

適度な距離感で過ごすことで
良好な関係を保ってきた人々が
一つの

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「ありがとう」のその先のこと。

「ありがとう」のその先のこと。

5文字に込められた想いの丈を
どれほどキミに伝えられるだろうか。

思えば空梅雨のあの日から、
早くも10月もの朝を迎えてきた。

おはようからおやすみまで。
そんな歯磨き粉メーカーの言葉に頼らなくとも
感じてきた当たり前のような日々。

今更のように溢れてくる想いは
たった5文字に収まるほどのものではなくて。

明後日の今頃にはもうここにはないそれは、
静まり返る夜に、鮮明に、優しく語りかける。

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揺らぐ日常の中で、だれもが確かさを求めずにはいられない。

揺らぐ日常の中で、だれもが確かさを求めずにはいられない。

刻々と更新される感染者数。
次々と消えていくマスク、消毒液、
トイレットペーパー。

些細なはずだったそれに、
いともたやすく生活が脅かされてゆく。

「なんて脆い砂のお城に
   住んでいたのだろう」と
嘆きに満ちた感情さえ押し寄せてくる。

当たり前にあったこのリバ邸十三
という名のマンションの一室も、
4月12日には、さようなら。

知っていたはずの別れがこんなにも、
心に穴を開けるとは思わ

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