【短編小説】鳥に憧れて
ここから飛べば高く飛べるかな?
あの果てまで飛べるかな?
教室の窓の縁。そこに腰かけて、そんな思いにふけっていた。
分かっている。
人は飛べない。落ちるだけだ。ここから落ちて、赤い血だまりを作るだけ。
でも、心のどこかで飛べる気がした。
この縁から飛べば、ここではないどこかへと、羽を広げて飛んでいけるような気がした。
そして、そうすれば誰かがぼくのことを見つけてくれるかもしれない。
ぼくに気づいてくれるかもしれない。
そんな期待も心の中で湧いてきた。
その期待を確かめようと、後ろに居た友達を見た。
そこで、ぼくの期待は水に滲んでいく絵の具のように、かき消された。
友達は冗談めいたように制止していた。
飛ぶつもりなんて更々ないだろうという考えが、顔に表れていた。
それを見たぼくは、縁から静かに降りて冗談めいた調子に応えるように、冗談めいた笑顔を浮かべた。
まるで、ピエロだ。
ここから飛んでも、ぼくの期待は叶わないうえに、何の意味も為さないことを無意識に悟った。
ぼくは、「死」という選択肢すら奪われたのだ。
そんなぼくは、どうしていけばいいのだろう…
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