「偶然」の強さには勝てない

一期一会という言葉はお好きだろうか?

このシリーズを一通り読まれた方の中には、これがそれなりにビジネス書のような内容になっていると思われただろうか。それとも、駄文だと思われただろうか。恐らく、駄文と思われた方はここまで来ていない。ここに来ているのは、「最後だけ見てみよう」という気持ちで来てくれた人か、最初からか途中からかは別としてたとえ暇つぶしであったとしても何らかの価値を見出してついてきてくれた読者の方だろうと思う。


まさに、「それっぽい」シリーズとなった。例に挙げた世渡り上手は私の人生で出会った人間だし、歴史上の偉人であるわけでもない。しかし、それなりに筋の通った世渡りをしていて勉強になる側面もある。ということをそれっぽく書いてみた。ある人は「優れた文章能力を持っている!」と私を評価してくれるかもしれない。またある人は「筆者は稀代の詭弁家だ」と評するかもしれない。


だが、「〇〇に学ぶ」というような題名で、或いはそうでなくとも著名な起業家や歴史上の偉人から何かしらの益を得ようとする本は多く、そういう人も一定数いる。だが私は敢えて身の回りにいた巧者たちを取り上げた。これも一応意味がある。人間、成功するかしないか、うまくいくかいかないかなどというのは、確かに全てに理由がある。だが、意外と見落とされがちなのは、


「偶然そこにいたからうまくいった」


ということもある、ということだ。

HIKAKINというもはやビートボクサーと認識されなくなった著名な動画配信者がいる。

その兄にSEIKINという人物がいる。この男は時として「弟のおかげで売れている」と言われることがある。また、その息子などは叔父が大富豪のHIKAKINなわけだから、生まれた時から既に貧しさとはかけ離れた人生を送ることになる可能性は高い。でも、SEIKINは弟がうまくいくから生きていたわけでも、その息子は叔父が大富豪と知って生まれてきたわけでもない。それは結果論、ただの偶然だ。これも、ある意味「動かしようのない現実」で、才能ある貧乏人はこうした恵まれた環境に生まれ落ちた人間の倍努力が必要だったりもするかもしれない。もし、自分がうまくいかないことで悩んでいるなら、こう開き直ってみればいい。


「うまくいかなかったのは、金持ちの家に生まれなかっただけの話だ」


もちろん、人によって成功の定義は異なる。だが、敢えて私は市井の人達に目線を落とし、そうした一見して小さい、狭いと思える場所で生きている人達の中にも知恵はたくさんあることを強調したかった。いや、むしろ市井の中にこそ、人間の本質と言えるものが隠れているかもしれない。人は夢を見る。大きな影を追う。ホームランを打つ野球選手に人は憧れるが、その選手が人知れずバットを振り続けていることはみんな知らない。ホームランバッターといえる人物は、すべからく素振りを欠かさない。地味なので誰も目に留めないが、アスリートとしての成功の秘訣はそこだ。


地味なところにこそ何かがある。誰も目に留めないところにこそ、深い考えや戦略がある。

雑草は自分の生きられるところにしか生えないという話をしたが、自然界にはそういうたぐいの話がたくさんある。この「虚弱体質の生存戦略」で書いてきたことというのは、もしかすると私たち人間の理屈や戦略というものではなく、自然界に生きる全ての生物が持つ「生存本能」のことなのかもしれない。

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