なぜ骨折だけで馬は安楽死にされるのか?
サイレンススズカはなぜ天皇賞・秋で骨折し“安楽死”したのか? 「殺さないで」ファンの声で手術をしたテンポイントは42日後に…
今でも忘れないし、忘れられない、私のターニングポイントだった競走馬。
サイレンススズカ。
痛ましい事故がおきるたびに、いつも、だれかが
同じ疑問を口にする。
〜どうして骨折した競走馬は安楽死にされるの〜
私、自身もこの頃は高校生くらいだったか。
このレースを見てまさかの出来事に号泣していた。
サラブレッドの体重は小柄でも400kg、大きな馬は500kgを超える。それを細い四肢で支えている。500kgの馬が全力疾走したとき、1本の脚にかかる荷重は数トンにものぼるという。細い脚にそれだけの負荷がかかっているのだから、脚の故障は競走馬の「職業病」ともいえる。
統計ではレースに1000頭出走すれば、1.4から1.7頭ぐらいの割合で骨折する馬がいるそうだ。もちろん、骨折には「ひび」や小骨片が剥がれた「剥離骨折」など軽傷もあれば、治療しやすい箇所の骨折もあるから、トウカイテイオーやグラスワンダーのように数カ月の療養を経て復帰してGIレースに勝った馬も多い。タニノチカラ(1年8カ月休養)とホウヨウボーイ(1年9カ月休養)は骨折が重なり、長いブランクを経て競走馬として復帰し、天皇賞、有馬記念に勝った名馬。
一方、サイレンススズカのように骨が粉々に砕けた状態になる「粉砕骨折」や、ライスシャワーのような骨片が皮膚を突き破る「開放骨折(脱臼)」などは治療がむずかしい。
苦痛を与えたうえに治癒する見込みが薄いならば…
また、馬の骨折治療を困難にする原因のひとつが体重である。骨折箇所をギプスで固定したり、ボルトでつなぐ手術を施しても、大きな体を3本の脚で支えることになる。馬は脚に痛みがあると寝起きができず、健康な脚にかかる負担は大きくなる。その結果、負荷がかかった脚の蹄に蹄葉炎(蹄内部の血液の循環が阻害されることで炎症をおこし、激しい痛みをともなう疾病)を発症したり、痛みやストレスから別の病気や怪我を誘発してしまうのだ。治療を施しても、馬に苦痛を与えたうえに治癒する見込みが薄いならば、安らかに眠らせてあげようと。
「テンポイントを殺さないで」名馬を襲った“悲劇”
そうはいっても、愛馬は簡単に殺せない。なんとか命だけは、と願うのが人の心と想い。しかし、一縷の望みをかけて手術を施したことが馬を苦しめる結果にもなることがあります。その現実をわたしたちに教えてくれたのがテンポイントでした。
1978年。今から40年以上前。凱旋門賞を最終目標としたヨーロッパ遠征の壮行レースだったはずの日経新春杯で66.5kgというハンデを背負ったテンポイントは、4コーナーにさしかかったとき、突然、腰から落ちた。
「左後第三中足骨哆(し)開(かい)骨折、第一趾骨複骨折」。左うしろ脚の蹄の上部の複雑骨折だった。獣医師の診断は予後不良である。オーナーの高田久成氏は一晩だけ猶予をもらい、熟考の末に、楽にさせてあげようと思った。ところがそこに「テンポイントを殺さないで」という電話が殺到し、高田氏は、ファンの声に押しきられるかたちで手術に踏みきった。
日本中央競馬会は獣医師33人によるチームを組み、砕けた骨を4本のボルトでつなぎ合わせる前例のない大手術をおこなった。術後の経過は連日メディアで報道された。一時は体温も心拍数も良好と伝えられたが、やがて右後肢の蹄が耐えられなくなり、蹄葉炎を発症する。そして事故から42日後の3月5日朝、テンポイントは息をひきとった。
おなじように、1987年の有馬記念の事故で左前脚の繋靱帯断裂と脱臼で予後不良と診断されたサクラスターオーも4本ボルトで患部を固定する手術が施され、137日間頑張ったが、最後は安楽死処置がとられました。
痛ましい事故が減りつつある理由
その一方で、患部をボルトで固定する手術で再起できた馬もいる。わたしの記憶にある最初がヤマニングローバルである。89年、無敗の3連勝でデイリー杯3歳ステークスに勝った直後、右前第一種子骨の複雑骨折が判明する。父ミスターシービーにつづく三冠馬という声もあった大器は安楽死になっても不思議でなかったが、浅見国一調教師の強い意向で手術を施された。そして1年2カ月後、ヤマニングローバルは競馬場に帰ってくる。ふたたび走れただけでも奇跡なのに、7歳の春まで競走生活をつづけ、目黒記念とアルゼンチン共和国杯に勝った。92年秋の天皇賞(3着)ではゴール前で先頭にでるかという、夢のような瞬間もあった。
最近は痛ましい事故がすくなくなったように感じる。名馬の悲劇もすくなくなった。その理由としては、厩舎だけでなく、育成牧場での馬の健康管理がゆきとどいてきたことがある。競馬場のコースも整備され、とくに芝コースはクッションの利いたコースになった。テンポイントの時代とは雲泥の差である。加えて獣医学の発達がある。過去の事故から学び、あたらしい手術技術が導入され、治療法も格段に向上した。
「まずは無事で帰ってくること。勝ち負けはそのつぎです」
それでも、競走馬にとっても騎手にとってもレース中の事故はつきもので、一歩間違えば命取りになるのだ。関係者の間の取材で良く聴く言葉。
「まずは無事で帰ってくること。勝ち負けはそのつぎです」
最後に…
競走馬はガラスの脚で夢と期待を背負い、走り続けます。
そして私達ファンに感動を与えてくれます。
私は馬に救われました。
今年は4頭が凱旋門賞に挑戦します。
タイトルホルダー、ドゥデュース、ディープボンドステイフーリッシュ、フランスはパリロンシャン競馬場で闘います。願わくば勝って欲しい!!
賛否両論聴きますが、ファンとしてホースマンとして応援してあげたい!そして無事に帰ってきて欲しいと願っています。
最後まで、読んで頂いてありがとうございます🐴
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