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フクロウと

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僕に見えているものなんて、君にとってはほんの一部にすぎない。
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フクロウとサル

フクロウとサル

昼間がだいぶ暖かくなってきた。
太陽さんも、そろそろ仕事に力を入れてきたらしい。
でも太陽さんが顔を隠すと、まだ冷える。

私がいつもお月さんと話をしている場所に、サルの背中が見える。
「ここは、空がよく見えるだろう。」
「あ、ここ、あなたの席ですか、すみません。」
「いや、いいんだよ。たまには目線を変えてみるのも、一興だろう?」
「ええ、素敵な生き方ですね。」

サルはどこか疲れているように見え

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フクロウとネコは出会う

フクロウとネコは出会う

今日はくっきり三日月だ。お月さんはいつもおしゃれだな。

と思っていたら、急に雲が増えてきた。

そこに、黒猫の少年が木を登ってきた。

ひどく息を切らしている。

「まあ、慌てず、ここで少し休みなよ。」

「おじさんは、ここら辺に住んでるの?」

「ああ、この近くさ。君は、野良かい?」

「そうだよ。」

「なんだってそんなに忙しそうなんだ?」

「逃げてきたんだよ、魔王から。」

「魔王?」

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フクロウとオオルリ

フクロウとオオルリ

雨雲さん、張り切ってるなあ。
なんて思っているうちに、雷さまも仕事を始めたらしい。
今日はおとなしく、基地にこもっておこう。

まもなくして、雷さまが大きな稲妻をひとつ落とした。
と、同時に何かが私の基地へ飛び込んできて、腹に当たったかと思うと、足元に落ちた。
私の基地は、私が入るだけの大きさしかない。
だから、足元は見えない。
が、何かがもそもそと動いている。

どうしたもんかと考えていたら、声

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フクロウとミツバチ

フクロウとミツバチ

「今日は元気そうだな、お月さんや。」
春の嵐は仕事を終えたらしい。久しぶりに静かな夜だ。

「あなたは毎日ここでお月さまとお話しされてるの?」
私の隣に、小さなミツバチが腰かけた。

「お月さんは毎日顔出してくれるわけじゃないんだよ。雲たちがいなくて、二人きりになるのは久々ってもんさ。」
「あら、お邪魔して、ごめんなさいね。」
「いいのさ、夏の楽団が仕事を始めるまで、まだ時間がある。」
「じゃあ少

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フクロウとイヌ

フクロウとイヌ

すっかり桜の木が衣替えをしたらしい。
こういう清々しい日は、木漏れ日にあたり、公園でいろんな声や音を聞きながら寝るのが心地いい。
なんとなくだが、お天道さんに寝顔は見られたくない。

ふと目が覚めたとき、木陰に少し窶れたイヌが入ってきた。

「起こしたかい、邪魔して悪いね。」
「いいんだよ、こうして珍しい方と話ができる。」
そう言って、2つほど低い枝に移動した。

「じいさん、こんなところで休んで

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フクロウとカラス

フクロウとカラス

それは、ある風が強い日のこと。
「寒さと暖かさが仕事を交代するとき、いつも嵐が仲裁しにくる。二人は仲が悪いのだな。」

「今年は一段と派手にやってやがるな。」
私が留まっている枝より一つ上に、カラスがやってきた。

「人間が静かだから、そう感じるのかもなあ。どうした、カラスがこんな田舎に、珍しいじゃないか。」
「やあ、フクロウのじいさん。あんまり街が静かだからな。いったい、なんだってんだ?太陽が沈

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