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美しい花の季語で  366 句

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無粋なままで句は詠めぬと一念発起して、金子兜太著「美しい季語の花」より一日一句詠んでみた。
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季語の花 4月

菜の花(なのはな)     月の下菜の花畑開き初め 座禅草(ざぜんそう)     尾瀬に咲く木道さける座禅草 雪柳(ゆきやなぎ)     一振りて千の花びら雪柳 パンジー     パンジーやあの子教えし色多し 桜(さくら)     父と行く桜ひとひらランドセル  柳(やなぎ)     背伸びする吾子の手するり柳かな 山桜(やまざくら)     山桜反っ歯な君を思い出し 桃の花(もものはな)     手折れては花器まで行けぬ桃の花 和布(わかめ)     和布売り産地直送潮香添

季語の花 5月

薊(あざみ)      立ち入れぬ野原すつくと薊咲く 勿忘草(わすれなぐさ)     勿忘草瑠璃色いかす鉢選び 金盞花(きんせんか)     果てしどもその色果てぬ金盞花 都忘れ(みやこわすれ)     愛しくも都忘れの時がきて  リラ        リラが舞う香り拡がる大通り  牡丹(ぼたん)     闇夜にも色淡く咲く牡丹かな 矢車草(やぐるまそう)     矢車草誰が植えたか築山に 葉桜(はざくら)     葉桜や毛虫も寄せぬ強し香 桐の花(きりのはな)     高

季語の花 6月

苺(いちご)     食べ放題温室の外苺なり 百合(ゆり)     父嫌う百合の臭いか忌まわしか 擬宝珠の花(ぎぼうしのはな)     細葉下小さく占める花ぎぼし 姫女苑(ひめじょおん)     食べらるる言えど手が出ぬ姫女苑 泰山木(たいざんぼく)     花弁で一杯飲みたし泰山木 夏落ち葉(なつおちば)     静けさや常盤木落葉はらはらと 栗の花(くりのはな)     停電や花栗におう雨の道 捩花(ねじはな)     文字摺草咲きて占めたる去年の庭 杜若(かきつばた)

季語の花 7月

夾竹桃(きょうちくとう)     想うより広く根のはり夾竹桃 ガーベラ(がーべら)      ガーベラや三日目の茎支えたり 紅の花(べにのはな)      夕暮れや君が瞳に紅の花 鴨足草(ゆきのした)      裏庭の白く跡あり鴨足草 李(すもも)         幼心描いた李甘気なく 青蘆(あおあし)        青蘆をかきわけ辿るうなぎ釣り 昼顔(ひるがお)        昼顔を流して走るオフロード 桑の実(くわのみ)桑苺     唇が食べたりあかし桑苺 馬齢薯の花(じ

季語の花 8月

月見草(つきみそう)  首長い闇夜が野原月見草  百日草(ひゃくにちそう) 花壇でき最初に蒔くは百日草 帚木(ははきぎ)    カーナビに出ては消えるは帚木の地 鷺草(さぎそう)    夕闇に静かに舞うは鷺草よ サルビア(さるびあ)  寿とサルビア並ぶ庭の文字 夕顔(ゆうがお)    昼に会う夕顔のきみ見窄らし           月下美人(げっかびじん) 名にしおう月下美人が闇のなか  撫子(なでしこ)    撫子を啄み鳩の平和かな 朝顔(あさがお)    釣

季語の花 9月

蓼の花(たでのはな)  箸を呼ぶ苦きにすぼめ蓼の花 茗荷の花(みょうがのはな)父嫌ふ茗荷の花馬鹿の説 赤のまま(あかのまま) 赤のままよそふ仕草が母のまま 蕎麦の花(そばのはな) 村はずれ闇夜広がる蕎麦の花 秋海棠(しゅうかいどう) 秋海棠心渡さん葉を束ね 藤袴(ふじばかま)   藤袴咲きし荒野踏み入れど 萩(はぎ)       覚えない庭のひとかど萩だらけ 石榴(ざくろ)     実が熟れど硬き柘榴は観るばかり 蓮の実(はすのみ)   蓮の実立つ美しかりし写

季語の花 10月

野菊(のぎく)     群生を逃れ一本野菊あり 竜胆(りんどう)    遠足や竜胆群れる三方原 杜鵑草(ほととぎす)  登山道剥きだす根元杜鵑草 通草(あけび)     美味しいと開いて待つは通草かな 芒(すすき)      夕焼けや叩きて散らす芒道 衝羽根(つくばね)   光はね衝羽根回り空き地へと  蘭(らん)       梢咲く蘭がかほりが仰ぎ嗅ぐ 梅擬(うめもどき)   遠くまで鳥よ運んで梅擬 稲(いね)       大水も首だし息し今日の稲 一位の

季語の花 11月

銀杏黄葉(いちょうもみじ)銀杏黄葉前輪滑るバイク音 柚子(ゆず)      植えたはず育たぬ柚子が残す穴 柿(かき)       柿食ひたし竹の先割る鉈上手 金柑(きんかん)    金柑や皮の旨さをけふ知りて 榲桲(まるめろ)    湯気上がる榲桲泳ぐ磁器白し 銀杏(ぎんなん)    自販機下銀杏のなか小銭あり 深山樒(みやましきみ) ここありと深山樒を刻む脳 寒竹の子(かんちくのこ) 鉢破り寒竹の子ぞ芽吹きけり 茶の花(ちゃのはな)  茶の花や寒くなるぞと藪

季語の花 12月

蜜柑(みかん)     潜み入りて蜜柑が味の歯が浮きて 葱(ねぎ)       土かぶせ葱の白さや長くなり 落葉(おちば)     落葉散るタイヤの跡が辿る道 木の葉(このは)    栞にと筋を邪魔せぬ木の葉摘む 枯木(かれき)     枯木にもする仕事あり翡翠待つ 枯桑(かれくわ)    枯桑や白嶺覗く広きなり 冬柏(ふゆかしわ)   色褪せど未だ諦めぬ冬柏 冬林檎(ふゆりんご)  籾の中冷たく待てり冬林檎 南天の実(なんてんのみ) 根元には南天の実が今朝の

季語の花 1月

福寿草(ふくじゅそう) 朝日さす野原群れなす福寿草 楪(ゆずりは)     楪や銀婚式はとうに過ぎ 歯朶(しだ)      玄関に歯朶の青さを飾り終え 薺(なずな)      茅葺古き棟に繁るや薺かな 御行(おぎょう)    御行もすととんとんと刻む母 仏の座(ほとけのざ)  身を縮め群れなすを摘む仏の座 葉牡丹(はぼたん)   葉牡丹や松と競いて残る花器 寒木瓜(かんぼけ)   寒木瓜や晴れの日浴びて紅しかな 寒牡丹(かんぼたん)  菰かぶり葉を忘れたか寒牡

季語の花 2月

枯蘆(かれあし)    枯蘆飛ぶ凸凹道の軽トラよ ブロッコリー     ブロッコリー花芽を覆う油虫 枯葎(かれむぐら)   枯葎去年の形ぞ残しけり 梅(うめ)       暗闇や朧に浮かぶ梅がちる 満作(まんさく)    満作を求めドライブ春を観る 菠薐草(ほうれんそう) 菠薐草ポパイになれると肩の肉 紅梅(こうばい)    紅梅や白梅のなき庭歩き 節分草(せつぶんそう) 節分草落葉かき分け時来たり 黄梅(おうばい)    黄梅や咲けども来ない御用聞き 春

季語の花 3月

青麦(あおむぎ)    さわさわと青麦撫でる指の間に 猫柳(ねこやなぎ)   毛艶やか触りなさいと猫柳 ヒヤシンス      ひび割れたガレが花瓶へヒヤシンス 杉の花(すぎのはな)  万人が散るを好まぬ杉の花 沈丁花(じんちょうげ) 沈丁花香りが告げる夜更け道 山椒の芽(さんしょうのめ) 山椒の芽摘むや庭先ひつまぶし 蘆の角(あしのつの)  にょきにょきと河を守るか蘆の角 一人静(ひとりしずか) line閉じ一人静に目をやりぬ 虎杖(いたどり)    切株や