
この違いが分かれば、もうピンインは苦手ではなくなる! ピンイン教本-8 子音優先の中国語!母音優先の日本語。
中国語の母音は子音に合わせて、微妙にまた柔軟に変化しました。日本語の母音は固定して変化しません。ピンインも日本のローマ字も「子音+母音」という構造は一緒ですが、発音の特徴は全く違います。
日本語は母音で構え、子音と一体化して音声化します。つまり音を出すときあ行の発音であれば「あ・か・さ・た…」のように、母音のフォーム(口の形)は崩さずに発音します。

「開く」の日本語音読みは「かい/Kai」で、中国語では「开/kāi」です。アルファベット表記は同じです。しかし発音は違います。どのように違うでしょうか?
■ 日本語の「かい」は「か/Ka」と「い/i」の2音節です。
「か」を発音する時は、母音「あ」の口の形が先に作られて「か行」の子音「か・き・く…」の「か」、それから2音節目の「い」を発音します。
■ 中国語では「开/kāi」は一音節です。子音が「K」で、母音は複合母音の「āi」で声調は一声です。「発音するときは「k(e)+āi(複合母音)」です。
日本語と大きく違うのは「K(e)+ai」ですから「Ka+i」ではありません。
つまり、中国語では最初の口の構えは「K(e)」で日本語では「a」です。
日本語では「か」と「い」ですが、中国語では「开/kāi」の1音節ですから、口のフォームは変化しながらの発音になります。どのように動くのでしょうか?
最初の口は「k(e)」の子音の構えを取っています。以下のような構えです。
「「g・k・h」の舌根音のグループの「k」の構えを作って「ke・ke・ke」と舌の根を持ち上げ、微笑むように口を軽く横に引いて、喉の奥から息を強く出して「ク+e」と発音して確認できます。」
「开/kāi」では子音は「k(e)」の構えだけで声には出しません。声にする母音は「e」ではなく「āi」だからです。
ですのでまず声には出さずに構えは「「k(e)/ク+e」その構えから母音「āi(複合母音)」へ一瞬のうちに連結して発音します。

この解説は【教-4】で、走(Zou)が日本語のローマ字読み「Zo+u(ゾオ+ウ)」と中国語ピンインでは「 Z(i)+ǒu)」の違いをとりあげて、ユーチューバー李姉妹のお姉さんが日本語と中国語の両方を発音して、どのように違うかを説明しています。違いを静止画にしましたので、参考にご覧になってください。

ピンイン発音マスターの鍵
カギは日本語の母音優先に対して中国語の子音優先です。ここからピンインのメカニズムも更に理解が進みます。それで発声法にすこし踏み込んだ記述を行いたいと思います。
先にまず、音声学で言う母音と子音の発声のメカニズムを押さえます。音声学では次のサイトが分かり易いと思います。
母音:息の妨害が無い 全て有声音(声帯が振動する音)
子音:息の妨害がある 有声音も無声音もある
子音を発音するには必ず、舌や唇を使って息の通路を塞いだり狭めたりしていましたが、母音はそのようなことはないので、出しやすい音ですね。
また、母音を発するときは常に声帯が振動し声を伴うので、全て有声音となります。(有声音=喉仏に手を当てて確認した、アレです!振動を感じますね。)
https://sensee.jp/media/be-teacher/phonetics1-vowels-and-consonants/
子音のフォームは「口の開き方に加え、下の位置、息の出し方など口全体のフォーム」ということになります。母音は喉の使い方と唇の開き方が関係します。
発声法とそしてとくにトレーニングの違い
まず日本語のトレーニング法・母音法をご紹介します。
■ 日本語の母音法:劇団員やアナウンサーの発音トレーニング法です、日本では発声練習と言います。
最も有名なものが劇団四季の「母音法メソッド」です。話し方講師の方がユーチューブ動画で紹介していました。
日本語で、話すことのプロフェッショナル達の多くはこの発声練習を行います。
日本語では口の構えは母音から作りますから母音が優先の構えです。しかし声を出す際に母音を強調するわけではありません。母音の口の開きをしっかりさせることが目標です。母音の口の開きとそれによる発音が明瞭であれば、どんなに早口で話してもまた小声でしゃべっても聞き易い、滑舌の良い話し方になります。
アナウンサーは相当早いスピードで話しているのですが、その発音が聞き取りにくいということはありません。
■ 中国のピンイン練習方:小学校で行われている方法
「破壊と構築」或いは「子音優先発声法」の中国式ピンイントレーニング!
中国人が小学校で学び、大人になっても初めての漢字に出会うと新華字典でピンインを調べて、発音する時などに行っている方法です。ピンインを口に出して、その文字と読み方を確認しています。
ee!chaiの中国語教室では、講師が新出単語をお教えするさいにも良く行いますが、きちんと練習をした人は少ないと思います。まず李姉妹が「破壊と構築」と名付けたYouTubeをご覧ください。
実際の小学校の教科書もご覧ください。小学校では分解した子音・母音を数度繰り返しながら、先生の発音について全員で唱和して、子音・母音を正確に発音練習します。その方法をStepで紹介します。

この方法の利点は、理屈を教えてもらうことなく、先生の真似をしてピンインの読み方をマスターできることです。大人でしたら、この発音シリーズで取り上げてきた知識をもとに練習をすれば、更に習得が早く進むと思います。
子音を音声化するために便宜的に使う母音は、実際の単語の発音の際には発音すべき母音に変えます。
子音の音声を先に確認しています。仮の母音を付けて行うのは音声にして確認をしているからです。
行っているのは、口のなかでの舌の位置や息の出し方も含めたフォームの確認です。
そのフォームを確認したらそれを母音を変えてもフォームを崩しません。これがピンインの発声法の鍵になります。
母音が子音との相性が良くなくて言いにくい場合は、母音の口のフォームの方を調整します。中国語の母音は子音に合わせて変化する柔軟性があります。

それが子音優先という意味です。日本語では、母音のフォームが優先ですから、母音は固定され子音と一体化しています。
この内容は明治大学の加藤先生が指摘している内容です。加藤先生は子音優先を広島大学時代から取り上げておりまして、私も教室を開設した10年以上前からこのことを教室のレッスンで取り上げるようにしてきました。
加藤先生の記:「このビデオは、#明治大学 の #中国語 の #オンライン授業 用に加藤徹が作成したもので、ネット教材「中国語発音学習教材」https://www.isc.meiji.ac.jp/~katotoru...と連動しています。こんなご時世ですので、明治大学以外の方も、営利・非営利を問わずご自由にお使いくださいますよう。」
シリーズになっています。おそらくこれ以上の音声学などの知識に基づく解説も他にはないとおもいますので、全部視聴することをお勧めします。

中国語では子音の発声法をトレーニングすれば、聞き取りやすいきれいな中国語になるのではないかと考えています。中国語発音を、通じるだけではなく、きれいに中国語のスタンダードな訛りのない発音にしたいのでしたら、この「子音発声法」の練習をお勧めします。
中国語では母音の発音も重要!
子音優先ですから、中国語の母音は発音上それほど重要ではないのかと言いますと、そうではないんですね。日本語の母音以上に大事に!発音する必要があります。
中国語で母音が重要な一つの理由、それは母音に声調符号が付くからと考えられます!
中国語で母音が重要な要因がもうひとつあります。そしてそのことが日本語にはない、複母音などが存在することにもつながります。また、実際の発音で母音をいい加減に発音できない理由にもなります。
次回はピンインの構造と声調符号がどの母音につくかのルールについて記載します。また日本語との違いで、発音の違いのイメージも紹介します。