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エドラボ!ニュース  都立工科高等学校向け「東京未来ファクトリー2023」

今回は2023年7月~8月に実施した「東京未来ファクトリー」についてご紹介します。

 「東京未来ファクトリー」は、都立工科高等学校において社会的な課題に取り組むことができる高度なものづくり技術者を育てることを目的とした教育プログラムです。

東京都教育委員会は今年4月より、東京都立工業高校全15校の名称を「工科高校」に変更しました。デジタル分野で活躍できる未来の「スペシャリスト」を育てるため、株式会社ウィル・シード エドラボ!のWOZED(ウォズエド)のカリキュラムが採用されました。

アップル共同創業者スティーブ・ウォズニアック氏が率いるWOZEDは、デジタル先進国であるアメリカの3500もの教育機関で広く採用されているデジタルキャリアパスウェイ・プログラムです。コーディングやAR/VR、エンジニアリングデザイン等のデジタルスキルを身に着けることができます。知識を習得するだけでなく、社会課題を発見し、原因を理解し、解決策を生み出す探究型学習であることが、WOZEDの大きな特徴です。

東京未来ファクトリーの参加者はキューブ型ロボットを使ってAIの仕組みを学び、地域課題解決のためのAI活用を企画し、発表します。各都立工科高校から22名もの生徒達が全8回のプログラム(Web学習2回を含む)に参加し、グループワークに取り組みました。

プログラムカリキュラム

◆事前学習:「開校式・オリエンテーション」
東京都教育庁指導部によるご挨拶から始まったプログラム初日は、ゲストによる特別講義とグループの仲を深めるためのアクティビティを行いました。
特別講義では、2名のゲストをお招きし、エンジニア職を目指したきっかけから、今後の最先端技術の展望まで詳しくお話しいただきました。午後のセッションでは球体ロボットを使ったアイスブレークアクティビティを行いました。アプリを操作しながらロボットの動きを決定する学習方法では、コーディングの学習に抵抗がある学習者にとっても楽しめるようカリキュラム設計されています。

今回は音楽に合わせながら「東京・未来・最先端」というテーマを表現するダンスをロボットにプログラミングし、「どのような点を特に工夫したのか」を共有しながら球体ロボットのダンスを披露してもらいました。その動きに合わせて自分たちも転がるというパフォーマンスを行ったグループもあり、会場は大盛り上がりでした。

参照: 東京都教育委員会 「令和5年度東京未来ファクトリー」STEP1開校式・オリエンテーション

◆探究学習①~③:「AIの仕組みを知り、東京の課題を解決」
探究学習ではWOZEDのAIコースを用いて、「東京未来ファクトリー」の目標であるAIを活用した東京都の課題解決に取り組みました。自分たちの身の回りでAIが活用されている事例について学び、AIのアプリケーションを使いながら「AI=人工知能とは何か」について理解を深めます。また、機械学習モデルの開発を体験するためAIツールを活用してどのような課題解決ができるか考え、グループごとに発表を行いました。

手の動きをAIに学習させ、手話ができなくても聴覚障碍者とコミュニケーションをとることのできるモデルを開発したグループや、フードロス削減を目指し、冷蔵庫の中で賞味期限の迫った食料品を識別するモデルを開発したグループ等、身近な課題を解決するアイデアがたくさん生まれました。

探究学習2日目からはキューブ型ロボットを使用し、東京都の課題を解決するためのロボットの設計および制作が行われました。実際に手を動かしながら、ロボットのセンサーがどのように情報を識別し、処理し、意思決定されるのかを学習しながら、「自分たちの住む地域にはどのような課題があるのか」「ロボットを活用してどのように解決できるのか」を考案しました。

参照: 東京都教育委員会 「令和5年度東京未来ファクトリー」STEP2探求学習① ~ STEP4探究学習③

◆交流会:日本・世界で活躍する技術者との交流
特別セッションとして日本・世界で活躍する技術者との交流会を行いました。午前中はWOZEDのCOOであるスチュワート・ノグル氏にオンラインで参加いただき、自身が最先端技術に携わるまでの経緯アップル共同創業者スティーブ・ウォズニアック氏がデジタル教育プログラムを作るにいたった想いこれからのエンジニアに求められること等をお話しいただきました。講演の後は探究学習で作成した『東京都の課題を解決するAI活用』について、英語でプレゼンテーション。スチュワート氏にフィードバックをもらった後、生徒たちの自信のついた表情が印象的でした。

エンジニアの神と称されるスティーブ・ウォズニアック氏と一緒に働くスチュワート・ノグル氏とリアルタイムで繋がり、世界標準のデジタル分野について話を聞くことができる点は、エドラボ! WOZEDプログラムの大きな強みです。

午後のセッションはゲスト3名をお招きし、質問会を行いました。事前にゲストのキャリアや生き様を知り、質問を考え、ゲストの歩んできた道から自分の『キニナル』を見つけることで、将来社会で働くうえの好奇心の種を見つけることを目的とした探究型イベントです。ゲストのお話は成功体験だけではなく、苦労したこと、挫折したことなどもありましたが、困難をどのように乗り越えるのか、どのような考え方をしていけばいいのかというアドバイスもいただきました。生徒たちからは「将来はこんな風に働きたい!」「自分も3名ゲストの方のようになりたい!」という声があがりました。

参照: 東京都教育委員会 「令和5年度東京未来ファクトリー」STEP5交流会

最終回:最終プレゼンテーション・振り返り
プログラム最終日は設計したロボットとスライド資料を用いて、自分たちの考える『東京都の課題を解決するAI活用』の最終プレゼンテーションを行いました。歩きスマホをしている人を検知し、音と光を出しながら追跡するロボットや、騒音を感知し乳幼児を騒音から守るベビーベッドなど、身の回りにある課題について、どのような情報をAIに入力し、意思決定させ、解決策に繋げるのかというプロトタイプを熱く語ってもらいました。プレゼンテーション後の質疑応答では講評者たちからの厳しい質問に時には頭を悩ませながらも、どのグループも堂々と回答していました。

グループは学校も学年も異なるメンバーで構成されましたが、プログラムを通して絆を深め、WOZEDプログラムに沿って「AIを活用した東京都の課題解決」という一つの目標に向かってチームワークを築いていった様子がとても印象的でした。

参照: 東京都教育委員会 「令和5年度東京未来ファクトリー」STEP6最終発表会

「東京未来ファクトリー」では、WOZEDのAIコースを採用しましたが、WOZEDではその他にも「コーディング」や、「AR/VR」「エンジニアリングデザイン」「データサイエンス」など、これからの時代に強く求められるデジタルスキルを学ぶことができます。工科高校生だけではなく、中学生、高校生、大学生や社会人まで、幅広い年齢層が受講できるコースが準備されています。最先端技術を扱うためのスキルを養うと同時に、身近な課題に気付き解決策を考えるための思考力・発想力を培う実践的探究型プログラムを、今後もエドラボ!として広めていきたいと思います。(筆・笛木)


~編集後記~
工科高校への改名に準えて、各校の勇者たちが集まった東京都のマイルストーン・プロジェクト。わたしたちは、〇〇「教育」といった「点」ではなく、WOZEDキャリア・パスウエイをみなで感じて動かす、総合的な探究型の「学び」の「環境」をデザインし、協働していきました。ウォズニアック氏がシリコンバレーのガレージで世界初のコンピュータを産み出していく、その想いが詰まった学び。東京都の社会課題解決に向けた、真剣な中にもみなの喜びに満ちたユニークな発表の数々。東京未来「ファクトリー」の創業ですね!(エドラボ!プロデューサー 須川)