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中学受験は本当に課金ゲームなのか?(後編)

前編では、受験生の家庭の平均年収や、補助学習費にかかる大まかな金額をご紹介しました。後編では、「二月の勝者-絶対合格の教室-」も参考にしながら、具体的にかかるお金の内訳や、中学受験のスケジュール、受験にかかる費用などを書いていきます。

今話題の漫画「二月の勝者 -絶対合格の教室-」にみる「課金ゲーム」

前記事で、通常授業以外のオプション講習をとることで、授業料が増加していくことをお話しました。「二月の勝者」でもオプション講習については、話題のテーマとなっています。
本作品に描かれている中学受験トップ塾の「フェニックス」のモデルとされる受験塾「SAPIX」と都内御三家合格者ゼロの桜花ゼミナール吉祥寺校に匹敵する受験塾(特定のモデルはなく複数塾の複合型)を例に、学習塾での受験対策として6年時の1年間で実際に想定される費用について調査しました。

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このように中学受験を控えた6年生の私立受験コースでは、通常授業以外にも漫画の中で「課金」と呼ばれるオプション講習が多数用意されています。漫画に登場する桜花ゼミナールでも季節講習は「オプション」となっていますが、中堅学習塾では基本受講前提(ほぼ必須)としている塾が多いようです。
そして、あくまで参加は任意であるとしても、クラスの生徒ほとんどが参加する講習にここまで来て自分一人だけ抜ければ、学習に後れが生じるのではと不安を感じ、精神的に取捨選択をできない状況に追い込まれるのが中学受験なのです。
また、漫画の中で、桜花ゼミナールの志望校別特訓(後期特訓)では「1割が他塾の外部講座に流れる」とあるように、学習塾を複数かけもちしたり、通塾校の併設塾またはそれ以外の塾で個別指導や家庭教師などの補講を追加する家庭もあります。
これらは漫画の中で「重課金コース」とよばれています。
桜花ゼミナールの系列個別指導塾「ノビール」では、マンツーマン指導を週2回80分で受講すると、大学生バイト講師では月額3万円程度ですが、プロ講師になるとその倍の金額となります。こういった通塾する塾の為の対策を講じてくれる専門塾というのが存在し、合格のための課金が積み重なっていくのです。

合格までの中学受験生の年間スケジュール

こうして中学受験をめざす6年生は塾のカリキュラムに則って、通常授業に加え、次から次へとオプション講習や模擬試験を受けることになります。
秋ごろには、週末ともなると朝の10時から夜の10時まで塾で10時間を超える学習をこなす子どもも見られます。その合間をぬって学校見学や入試説明会等にも参加するなど、12歳にしてハードスケジュールに忙殺されるのです。
そんな受験生の1年間の入試までの基本的なスケジュールを紹介します。

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入試時期に必要な受験費用が約100万円!

受験に必要な費用というのはこれら準備期間だけではなく、入試時期にも受験料に加え、前日泊の宿泊費を検討するケースもあります。
受験料だけでも25,000円(平均的な受験料)x5校(平均5校~7校を受験)の125,000円、さらに併願校の入学金を抑えとして支払う場合も考えられ、この場合は250,000円程度の事前納入を検討せねばなりません。
こうした様々なケースを想定して、6年時には十分な資金を準備しておく必要があります。
若干12歳の小学生ですので、精神的な緊張やプレッシャーからまさかの大波乱や、思わぬ結果など、想定外の事態が起こります。
その為、ご家庭ではありとあらゆるケースを想定して、様々なシミュレーションを組み予定外の受験や入学金納入への試算と備えが必要です。
まさに家族一丸となって入試に立ち向かう高校受験とは比較にならない一大イベントなのです。
ここで、ある難関中学の合格をめざす受験生の入試時期の出費例をご覧ください。

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このように、1・2月の入試時期のみで100万円近い出費となるケースも考えられます。
中学受験の場合は5~7校を受験するのが一般的となっておりますので、第1志望校以外の受験校に入学金延納システムがない場合、合・不合のタイミングによっては第2・第3志望校であっても念のため入学金を納入し合格を確保しておかなければなりません。
なぜならば、まだ精神的に未熟な小学生の場合、一番の敵は本人のメンタルにあります。とにかく入学したい学校の合格を確保して本命に臨むのが最強のお守りとなるからです。

中学受験に必要な準備費用(補助学習費+受験費用)の総額は約413万円

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【総括】中学受験する家庭としない家庭の差は400万〜600万 13倍以上の金額差。

このように、文科省調べの小学4年生~6年生の3年間での「補助学習費」総額は、私立小学校は146.1万円、公立中学校33.1万円とありましたが、私立中学の受験を考えた場合、受験のための教育費に、3年間の準備費用、および入試に必要な受験費用を加えると、総額413万円(最も私立中学校に通う層、世帯年収800万円以上の場合)という多額な費用となるのです。
文科省調べの公立中学校補助学習費(表8)と比べると、13.3倍と非常に高額です。6年生時だけでも合計274.5万円、月額に換算すると22.9万円もの教育費を準備しておかなければならないのが実情です。
如何に、中学受験費用が高額であり、世帯年収によって「受けたい教育を受けることができる選択肢」に不平等が生じているか、といった社会状況が見てとれます。


教育図鑑では、年収を基準に中学受験を決めるのではなく、各家庭の経済状況に合わせた受験対策を応援する、学習プラットフォームの構築を進めております。
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