私立中高一貫校から転校するという選択
ゴールデンウィークが終了して日常生活に戻ってきた頃ではないでしょうか。
公立の小・中学校はカレンダー通りの休暇でしたが、私立校の中には連休中日も休日とし、最大で10連休という学校もあったようです。
連休明けのこの時期、4月に入学したばかりの新1年生(小学校から大学)は五月病にかかりやすい状況。 新入生だけでなく学生の多くが「気が滅入る」「落ち込むなど」「勉強に集中できない」「朝起きられない」「通学したくない」といった「五月病」の症状に見舞われる時期です。
多くの子どもは、一時的な五月病を経て通常通りの生活に戻ることができるのですが、特に学校生活に少なからず問題を感じている子どもの場合、ずるずると不登校や引きこもりの状態になってしまうケースが増えています。 昨今、長い中学受験生活を経て志望校に入学した中高一貫生の中にも、このような状況に陥り不登校になってしまう子ども多く、 「この学校に入学して良かったのか…」「学力的に子どもがクラスメイトに追いついていけていないようだ」「子どもが学校にいきたがらない」「子どもに友達ができていないようだ」 といった悩みを抱えている親御さんも少なくありません。
中高一貫校に入学した場合は、6年間その学校で過ごすことが前提であり、入学時には「中学のうちに他の学校に転校する」「他の高校を受験する」という考えは無いに等しいといえます。 しかし実際は中学在学中に転校したり、高校受験を経て他の学校に進学、という生徒がどの学校にもいるのが事実。
そこで、今回のブログでは、「中学受験を経て入学した中高一貫校から他校への編入」という選択について紹介します。
中高一貫校をやめる理由で多いのは?
約3年間にも及ぶ中学受験生活を経て期待に胸を膨らませて入学した学校を、「辞めたい」と考える理由にはなにがあるのでしょうか。
勉強の進度の速さにおいつけない
頑張って持ち偏差値以上の志望校に入学した後、勉強で困ってしまう子どもは少なくありません。合格で燃え尽きてしまったり、入学した安心感から勉強習慣が無くなってしまったり、 進度の速さについていけず悩みを抱え、順位が下がることで更にやる気を失い、授業を受けるのさえ嫌になってしまうといった負のスパイラルから抜け出せなくなってしまいます。
クラスメイトからどんどんおいていかれることで勉強だけでなく学校生活自体が嫌になってしまう場合は、転校を考える必要があるでしょう。 また学校側から、このままでは高校に上がれないという理由で転校を促される可能性もあります。
学校生活になじめず不登校になる
・入学してみたら思ったより校則がきびしかった
・想像以上に通学がハードだった
・人間関係がうまくいかない
・信頼できる教師がいない 等の、志望校決めの時点では見えなかった理由で、学校になじむことができない生徒も。
6年間同じ学校で同じ友人・同じ教師たちと過ごす中高一貫校では、子どもを取り巻く環境があまり変化しません。 そのため中学~高校に上がる段階でのリセットの転機があるわけではないので、「学校が自分に合わない」と感じたら、高校進学を待つより前に他校への転校を視野に入れる必要があります。
中高一貫校からの転校や、高校受験はとても大変ですので、転校を決める前に、ぜひ親子で先生やスクールカウンセラー等との話し合いなどをもち、転校しないで済む方法についてじっくり考えてみましょう。
中高一貫校から転校する場合、いつがいいの?
せっかく入った学校。できる限り辞めないのが一番ですが、どうしても合わない・ついていけない場合、中高一貫校からの転校は、中学在学中・高校進学時どちらがいいのでしょうか。 また成績不振から内部進学できない場合、学校からはいつ頃宣告されるのでしょうか。
成績不振からの転校の場合
成績不振により「内部進学が危うい」とされた場合、学校から転校を勧められるのは中2の冬頃の場合が多いようです。 事前に三者面談等で学校側から話があり、補習や再テストを経ても成績や子供の意欲が変わらない場合は学年末に「進学判定面談」に呼ばれ、以下の進路を提示されます。
・中3から公立中学に転校し、高校受験(公立高校・私立高校)する ・学校の勧める私立中学への転校 ・学業を頑張ることを学校側と約束し、中3に進級、高校に内進する
転校は中学在学中? 高校進学時? 高校進学後?
成績不振だけでなく、人間関係やいじめ、学校になじめないとの理由で不登校になってしまった子どもが転校を考えた場合、その時期については悩むところではないでしょうか。 上記の通り、学校側から転校推奨がある場合は中2の時点で勧告がある場合が多いようです。
中3に進級した場合、学校側から内申書を出してもらうことは難しく、公立高校を受験したい場合は中3の4月以前に公立中学に転校するほうが良いでしょう。 高校から他の学校へ転校を考えている場合、殆どの中高一貫校では外部受験する場合は「内部進学の権利放棄」となり、受験校を落ちたからといって今の学校に戻ることは難しくなります。 学校により外部受験への対応はそれぞれなので、なるべく早い段階で学校への相談が必要です。
中高一貫校の場合、高校受験がある学校では人間関係の変化が多少あるものの、内部進学者と高校からの進学者でクラスが分かれている場合も多く、 また高校の偏差値が中学より高いケースも多いため、成績や交友関係の大きな変化は考えられません。 高校は義務教育ではないため、色々な理由で不登校になってしまった場合、1年間の3分の1の欠席で留年が決定してしまいます。
中学の時点で決定的につまずいてしまった場合は特に、高校に内部進学してからの転校は難しいため「高校中退」という「茨の道」になってしまう危険性もあります。
転校後の進路について
「学校が合わず不登校」「成績不振」等の理由で中高一貫校からの転校を決めた場合、以下のような進路が考えられます。
・公立中学に編入し公立高校・私立高校受験をする ・他の中高一貫校に編入試験を経て入学し、内部進学する ・高校内部進学後に不登校になった場合は、通信制高校・サポート校に転入するケースもある
途中入学を受け入れてくれる中高一貫校にはどんな学校があるのでしょうか?
中高一貫校 学期末の編入試験実施校について
例年、東京都の私立中高一貫校で欠員状況に応じて、学期末ごとに編入試験が実施されます。
毎学期末に90~100校近くが編入試験を実施しますが、そのほとんどは「転勤、転居者」「海外からの帰国者」を対象にしたもの。 「成績不振」や「学校が合わない」といった理由からの編入は狭き門になっています。 2021年度の3学期末(2022年4月からの編入)には東京都の私立中学90校で編入試験が実施されましたが「条件なし」での編入試験実施はそのうちの21校のみでした。
東京都私立中学 2021年3学期末編入試験「条件なし」での実施校
まとめ
私立中高一貫校といえど、学校によって環境や校風、生徒のタイプや学力レベルの差は大きく、 たとえ今いる中学で人間関係に躓いてしまっても、転校先の中学では同じようなタイプの友達がたくさんできて楽しく通学できるようになるかもしれません。 また、成績不振で転校をしても、転校先の学校でトップクラスになって自信を取り戻し、大学受験で大きく飛躍できる可能性もあります。
三重県の全寮制「桜丘中学校」のように、学期末を待たずにいつでも転校ができる私立中学校も存在。 親元を離れて、私立中高一貫校で同じような苦しい経験を経た仲間たちと同じ寮で過ごして 学力・規則正しい生活・青春を取り戻し、高校卒業後は難関大学に進学していくお子さんたちも多いようです。
学校になじめない、友人関係がうまくいかない、または勉強についていけない苦しみを抱えながら中学生活を過ごすよりも、 早めに対策し、子どもにとって過ごしやすい進学先を見つけてあげたいものです。
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