見出し画像

昨今の日本教育におけるタブレット端末整備やオンライン化の流れは、開発新興国で学校を建てる現象に似ている

私は、大学生時代、カンボジアの農村部にてEDUCA(エジュカ)というプロジェクトを立ち上げ、現地NGOとカウンターパートを結び、日本の遊休スマホを活用した英語の映像授業を提供していました。

カンボジアと想像するとみなさんどのような印象がありますでしょうか。

NPO法人やODAのような行政機関が学校を建てたり、井戸を掘ったりしている様子はよく見たことはあるのではないでしょうか。今回のタイトルであるように、今の日本教育におけるオンライン化やタブレット端末の整備の状況は東南アジアの例にあるような学校を建てる状況に類似しているなということについて述べていこうと思います。

どういうところが似ているかというと、まずはインフラ面をしっかり整えましょう、という点においてです。当たり前なのですが、新しい技術や体制に変わる時、まずは身の回りの環境やハード面が変わってからソフト面へと移っていきます。

例えば、携帯電話の例を取ってみるとわかるのですが、まずはデバイスを作る前に電話が繋がるようにアンテナを建てに行きますよね。その後、デバイスを開発し、その後デバイスの種類や通信プランの種類などが拡充していくわけです。要は、ハード面の整備→ソフト面の整備へと移っていくわけです。

これを教育に置き換えると、学校のインフラ面を整える→そのインフラを活用してどのような教育効果を望む指導法を実現していくのか考え実践する、という順番になるはずです。

そして、私が当時活動していた場所カンボジアにおいても、まずは教育の機会を作るために学校を建てるというNPOや法人がたくさん存在していました。

教育に関しては、ハード整備とソフト整備両方の実現がなければマイナス効果

段階を踏んでやっていくには、もちろん上述したようなハード→ソフトへと進めていく必要が一番やりやすいですし、そうせざるおえない部分があるかとは思います。しかしながら、教育という領域においては、例えば、ハードの整備だけをする時期、ソフトへの対応時期で分けるような、時代の変化でぽっかりとその世代だけ穴ぼこが開いてしまうようなことというのはできません。ここが難しいところです。

もちろんGIGAスクール構想におけるハード面での整備をすることは極めて重要なことですし、そこに第一線でインフラ整備をしている企業の方々や行政は素晴らしいです。一方で、危惧すべきことは、インフラ"のみ"を整えることに注力することです。

私は多く目にしてきました。大変な努力をされてカンボジアに学校を建てても、学校の先生が午後で出稼ぎに街へ繰り出す姿、教科書の内容をそっくりそのまま音読し、それを後に続いてひたすら音読する生徒。学校という場所があれば学びの機会は作られます。それ自体は意義のあることです。しかし、それで終わってはいけないのです。

むしろハードがあるから一安心していては、今まで超絶にアナログでも一生懸命に授業や学級運営していた学習体制よりも劣ってしまいます。

あくまで、ハードはサポートツールであり、それによってより深い学びや学びの効率化が実現します。そこを間違えていてはむしろ以前よりもマイナスの影響を及ぼす可能性もあります。

今からサステナブルなロードマップを

今回のコロナの一件で、教育のオンライン化は一気に進みました。そして、これからも一気に進んでいきます。そのような状況において、格差はどうしても生まれてきます。正直今まで日本が築きあげてきた、全国津々浦々で最低限の教育の質を担保してきたモデルが崩壊するのではないかというほどだと思います。そしてその状況はやがて訪れるだろうと思っています。むしろそれありきでロードマップをしっかりと組むべきだろうなと考えています。

以下に想定しなければいけないことを整理すると、

・自治体レベルで予算やインフラの整備進行度に応じて確実にタブレット端末の整備進捗も変わる
・タブレット端末整備に応じて教育格差が生まれる
・タブレット端末整備が進んでいたとしても、うまく使えるところと使えないところで分かれる

こんなところでしょうか。全てを想定した上での、ロードマップを作成する必要があるでしょう。むしろ、これらの現象は早く課題を露呈しなければいけないかなと思っています。

理由としては、今までのモデル=最低限の質を担保する教育モデル、をずるずると引きずっていると、結局端末整備やタブレット端末の活用ができる環境にある学校が、周りに合わせなければならないから足を止めたり、活用がうまくいかなかったりする場合があります。実際に身の回りで起きているのではないでしょうか?

しかし考えるべきは、目の前にいる生徒に対して、最高の学びを提供することは何か?であると思っています。そのように考えれば、たとえ隣の学校がタブレットを使えないところであろうが関係ないはずです。とても冷たい表現をしているかもしれませんが、使えるものは全て使っておくべきでしょう。それによって、周りの学校や先生も意識が変わってくることでしょう。

一方で、一学校や組織では変えられ部分が多くあります。自治体としてお金がなかったり、環境整備を今まで全くしてこなかった学校もあると思います。そのような環境にいるみなさんが考えることは、5年後にどうなっているか、です。私立学校さんを中心にタブレットの整備等はかなり進んできていると思います。今の状態にするのに少なくとも3年はかかっています。一朝一夕で実現できるほど甘くはありません。

たくさんの試行錯誤の中で、実践内容は洗練されていくものです。

ですので、まずは5年後の未来を想像し、上と同じ問いですね。目の前にいる生徒が5年後どうなっていてほしいか。を想像しながらロードマップを国、自治体、学校、教科、先生が一貫して認識をある程度整えつつ、腰を据えて粛々と準備を進めていく以外に方法はありません。

結果的に他の自治体や学校とは遅れを取ってしまう場合もあります。しかし、それは仕方がないことです。それを強く意識しながら、では今できる最大限のアウトプットは何かを全員で考えていく必要があるのではないでしょうか。

そのためのサポートを学校、地域、企業、生徒、親の全員が連携しながら考えていきながらより良い未来を一緒に作っていくことが素晴らしい明日が生まれていくのではないかと常に思っています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?