イギリスの名門パブリック・スクール"ザ・ナイン"のShrewsbury School情報

教育情報キュレーターがお届けする学校情報です。
私のことをご存知ない方は、ぜひ自己紹介noteにも目を通してみてください。

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※2020/12/08、匿名のご意見を受けて一部加筆編集しました。この場で御礼申し上げます。
なお、この記事の一番最後には匿名のご意見箱(アンケート)を設けております。お気付きのことがあれば(できれば具体的に)お知らせいただけますと大変助かります。
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私は海外の学校見学が趣味なのですが、気になる学校にすぐ飛べるわけではないので、最近はデジタル資源を駆使して学校について調べています。

学校について調べて紹介することは、私にとっては楽しい作業ですが、実際に通うとどうなるか、を詳細に予想するには限度があります。

私は普段から「学校はナマモノである」と言っています。
校長・担任・生徒・地域・父兄・時代背景などなど、学校を構成するピースは常々変わっていますし、変わるごとに新しい化学反応が生まれ、生徒個人にとってそれぞれ違う体験となるからです。

また、私が調べた情報は、その時点以降、すぐに古くなっていきます。
(この記事は、取材当時=2020年6月の情報です。)

では学校情報の紹介を通じて何を期待しているかというと、読者の方がそれぞれお持ちの既存の学校イメージとすり合わせていただき、学校に求める条件を明確にしていくことです。そしてより明確になった理想の学校の条件をご自身のコンパスにしてもらい、自分の目と耳と頭で進学先選びをできるようになってもらいたい。

ここでは、大事な進学先を決めるときに最低限調べておいてもらいたい項目を網羅しています。

私がこの記事を書くにあたって参照したのは、学校のHP、公式SNS、パンフレット、学校担当者のオンライン取材です。つまり、ここに載っている情報は私が体験したこと(一次情報)ではなく、あくまで二次・三次情報となります。事実と主観がある程度混じっています。その点、ご了承くださいませ。

長いですが、項目を見るだけでも学校選びの際に見るポイントがわかると思います。ただし、実際の学校選択の場合はこのような二次・三次情報だけを鵜呑みにせず、とにかく親子で調べる/見学する/学校関係者で話すことが大事だと私は考えています。そのきっかけにさえなれば嬉しいです。

では早速、本編です。

イギリスのパブリック・スクールというと、ウィンチェスターやイートンなどは日本でも比較的よく聞かれるかもしれません。

「パブリック・スクール」を日本語に直訳すると「公立校」や「公共の学校」ですが、「イギリスのパブリック・スクール」となると実は一部の私立の学校群のことを指す固有名詞のようなものです。

なかでも、特に「ザ・ナイン」と呼ばれる9校のパブリック・スクールはイギリスで最も伝統的で権威的な学校群として名を馳せています。イートンもウィンチェスターも、今回紹介するShrewsburyも、ザ・ナインのメンバーです。

今回、Shrewsburyを選んだ理由は単純です。
ザ・ナインのなかでも"一番古い"、"共学"校だから。
「ザ・ナイン」の一つでありながら、日本での知名度が今ひとつなことも私の興味をそそりました。

【1.基本情報】

学校名:Shrewsbury School 
(シュルーズベリーとも書くが、発音はシュロウズブリ)

ロケーション:
ロンドンから北西に240kmほどにあるShropshire郡のShrewsburyという街。近くには川が流れ、中世の面影も色濃く残る平和な環境。学校から街なかまでは徒歩10分。自然も豊か。最寄りの空港はマンチェスターかバーミンガムが車か電車で一時間強ほどの距離にある。Shrewsbury BID(街の商業組合のようなもの)の公式インスタには街の様子がわかる写真がたくさん掲載されている。

創立年:1552年
日本は室町時代。上杉謙信が亡くなった年らしい

共学・別学:もともとは男子校だったが、2008年から共学

宗教:イングランド国教会(つまりクリスチャン)
礼拝が週2回あるが入学に信仰は問われない。

理念(Aim):
A Shrewsbury education will educate and empower each individual pupil to flourish in life and contribute positively to the world around them.
(和訳:シュロウズブリでは、繁栄し、周りに積極的に貢献できるように、生徒一人ひとりの力を育てます)

キャンパス面積:110エーカー(東京ドーム9.5個分)

服装規定:制服。Sixth Form(高校最後の2年間)はスーツなどの服装規定。

2020年度の高3の年間授業料+寄宿料:£40,500
(ざっくり540万円ほど)

【2.私の所感】

先に基本情報を並べましたが、つぎに進む前に私の個人的な所感をここに挟んでおきます。
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公式情報や担当者との話から推察するに、この学校は学力的競争力やお坊ちゃま校という印象は意識的に出していない。オックスフォードやケンブリッジなどにも毎年卒業生を排出しているが、決して学力至上主義ではないことが差別点の一つ。

大学進学は必須ではなく、あくまで卒業後の進路のひとつとして位置づけているが、進路指導はしっかりしている。イギリスの高校には珍しく、アメリカ進学のためのSAT対策(テスト実施も自校で)もできる。ヨーロッパ進学やギャップ・イヤーの相談にも対応できる。大学合格実績だけでは見えてこない、生徒の多様な進路への配慮やサポート力が伺える。

語学力が不安な子には決して手厚いとも手厚くないとも言い切れない。少なくとも、もっと手厚い学校は他にある。イギリスは総じて、入学時の語学ハードルは高くないが、在学中のパフォーマンスには影響してくる。語学に不安がある場合はサポートがもっと目に見えて手厚いところを選んだほうがいいだろう。

この学校は伝統と革新をうまく融合し、一定のファンを獲得していることが伺える。ザ・ナインのなかでは生徒・講師の学力や出身が多様で、校風としてもリベラル寄りなのではないだろうか。有名大学進学をゴールにした学力競争よりも、いろんな選択肢を試しながら自分の可能性を広げたい人におすすめしてみたい。

その他のトリビア:
卒業生で一番有名なのは、なんと進化論を発表したチャールズ・ダーウィン
・他の有名校同様、タイや香港などのアジア圏には系列校があり、中国にも進出予定

【3.生徒情報】

生徒数:805名

男女比率:65男:35女

年齢:13歳〜18歳

学年:Year 9-13の5学年(日本でいうところの中2〜高3)

入寮できる最低学年:Year 9(つまり中2)

学年あたりの平均生徒数:約160名(実際は学年による)

先生/生徒の比率: 約8:1

寮生の割合: 全校生徒の約80%

留学生割合: 全校生徒の約20%

留学生の出身国:
50カ国以上。中国や香港が一番多く、アフリカやヨーロッパからも多数。日本人は各学年に1~3人くらい。

【4.教課情報】

ここでいう"教課"には、アカデミック+スポーツ+アート+その他の学内活動すべてを含めています。学校教育の主な構成要素なので、その概要を知るだけで学校を知った気になれます。
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大学進学/合格実績:
98%が大学進学、うちOxbridge 6%、Russell Group 69%, US/Canada 3%など

各種統一試験スコア:
■2019年GCSE結果ーイギリスのボーディングスクール中で62位、63.54%がA*かA
出典

■2019年A levels結果ーイギリスの共学高校中で25位、50.55%がA+かA*
出典

※イギリスの多くの学校ではYear11(高1)の終わりにGCSE/IGCSEという全国統一試験があり、さらにYear 12-13(高2-3)の2年間をかけてA-Levels/ BTECs/ IB などのカリキュラムを修了し、最後の統一試験を受けます。ShrewsburyではA Levelsを採用しています。

卒業要件:
参考までに、最低学年と最高学年の履修要件を紹介します。低学年で幅広く学んだことをもとに、高学年で深堀りしていくことがわかります。

■Third form(Year9, つまり中2)では、以下が必須(結構多い印象)
英語(国語)、数学、生物学、化学、物理学、歴史、地理、哲学と神学、フランス語、スペイン語とドイツ語(またはギリシャ語)、ラテン語(古典文明の要素を含む)、コンピューターサイエンス、音楽、演劇、体育、芸術、デザイン&テクノロジー

■Sixth Form(下記2年間で構成される、高校最後の2年間)
Lower Sixth (Year12, A Levels Year1, つまり高2) & Upper Sixth (Year13, A Levels Year2, つまり高3)

A levelの科目を4つの群から一つずつ選ぶ。(卒業後の進路も意識して選択する)

第1群:生物学、ビジネス、古典文明、英文学、ハイレベル数学、ドイツ語、数学、スペイン語

第2群:生物学、ビジネス、デザイン&テクノロジー、フランス語、地理学、美術史、ラテン語、体育、物理学、哲学と神学、スペイン語

第3群:芸術、化学、経済学、英文学、フランス語、歴史、音楽、物理学、写真

第4群:化学、経済学、英文学、ハイレベル数学、地理学、歴史、数学、哲学と神学、演劇、ギリシャ語

カリキュラム詳細

ESLの有無:
"English as an Additional Language"と称される留学生向けの英語補習体制がある。別料金で個別チューターをつけてもらうイメージ。すべての授業を現地生とともに受講する。

サポートの特徴:
学習サポートオフィスやPersonal Tutor(週に最低1度会う先生アドバイザー)がある。

アートの特徴:
音楽が特に強いが、Drama(演劇)、Visual Arts(視覚芸術)も盛ん。

スポーツの特徴:
競技スポーツではサッカー(フットボール)が特に強く、ほかにもクリケットや漕艇で国際的に活躍している。他にも選択肢がある。

競技以外のレクリエーションとしては、乗馬、フェンシング、ゴルフ、射撃などが変わり種。

競技スポーツのパンフレット
レクリエーションスポーツの一覧

クラブ活動の特徴:
養蜂(!?)から模擬国連までかなり多岐にわたる。
クラブ活動の詳細

【5.生活情報】

生徒にとって第二の家となるボーディングスクール。
教課と生活の2つを知れば、もう学校の8割をカバーしたようなものです。
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寮(ハウス):
男子ハウス7つ、女子ハウス4つ(通学生向けのハウスが他に2つ)。
各寮定員は60名前後。
出願時に寮の選択をする。

週末の過ごし方:
観劇、映画、コンサート、ゴーカート、ペイントボール、スポーツ観戦、買い物などのアクティビティが用意されている。
約8割が寮生ということもあり、充実している方。

その他:
・入寮してすぐは”Foundation Fortnight”というオリエンテーション期間が設けられる
・食堂は1つで、ビュッフェ形式。
・メディカルセンターが学内にあり、最寄りの病院は約3キロ。
・自由時間には街に出歩くことができる(イギリスの飲酒年齢を超えていれば、軽く飲んでくることも可。学内は飲酒禁止。)

【6.入試情報】

ShrewsburyはYear 9, 10, 12(つまり中2・中3・高2)で編入学が可能です。こちらにはイギリス以外の国から中2に出願する場合のフローを紹介します。入試要項は年度や学年によって変わる可能性が充分ありえますので、実際は都度しっかり確認してください。
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出願締め切り:入学の2年前

入試要件(書類):願書(Registration form)、出願料£100

学校訪問:
強く推奨、9月/11月/3月にOpen Dayが設けられているが、別途個別訪問でも可

面接:

テスト:
入学する前の年の11月もしくは同年の2月。科目はEnglish(国語)とMath(数学)。

入学時の学力レベル目安:
イギリスのプレップスクール生が受験するCommon Entrance では55%程度

【7.リンク集】

学校のSNSをフォローすると気軽に最新情報が入手できます。リンク切れ等不具合がありましたら、お気軽にご連絡ください。
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学校HP
パンフレット
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■動画で知るShrewsbury School
校長による学校紹介
学校生活イメージ
勉強の紹介
クラブ活動の紹介

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ここまでお読みいただきありがとうございます。
少しでも学校教育について考えるヒントになれば嬉しいです。

何度も恐縮ですが、実際の学校選択の場合はこのような二次・三次情報だけを鵜呑みにせず、親子で調べる/見学する/学校関係者で話すことが大事だと私は考えています。そのきっかけにさえなれば嬉しいです。

もしお気づきの点がありましたら、匿名アンケート(必須項目は2つだけ)よりお知らせください。

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