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『プレイフル・シンキング[決定版]』

『プレイフル・シンキング(決定版)』上田信行(2020年)宣伝会議

1番最初に紹介する本になるので、何にしようかだいぶ悩みましたがこの本にしました。理由はいくつかあります。

 ①これは個人的な理由ですが、大学時代に1番最初に影響を受けた本だからです。(ちなみに「決定版」は最新のもので、学生時代に影響を受けたのはこの本の前著です。)大学の教育方法学の授業のテキストでしたが、学習観にかなりの揺さぶりをかけられました。この本に出会わなければ教師になってなかったといっても過言ではないかもしれません。そういう意味でこれからの時代を生きる教師のための「教育書」として読むことも可能です。

 ②一見、働く大人のための「自己啓発本」のように見えますが、単なる啓発本ではありません。認知心理学や教育工学など、様々な学習理論と、上田先生自身の実践論に裏打ちされた啓発書です。見方を変えれば、様々な学習理論について学べる入門書とも捉えられるため、この本を選びました。

 ③学校というのは変化に対して後ろ向きになりがちです。一方今は社会は激動の時代です。そんな中でも、「変化を楽しむ」見方を得ることのできる、働き方の本として最適だと考えました。

 本書によれば、「プレイフル」とは次のような状態のことを指しています。

「本気で物事に取り組んでいるときのワクワクドキドキする心の状態」

 私がこの概念に出会ったのは約10年前くらいになりますが、当時の私にとってはとても新鮮でした。私が受けてきた学校教育といば、学習は(つまらなかったとしても)「しなければならないもの」、受験のために苦しい思いをして取り組むものといったイメージが強く、到底「ワクワクドキドキ」するものではなかったからです。しかし、大学の授業で上田先生本人がゲストで登場してくださり、この概念を知ったときに「もしかしたら教育・学習ってやり方次第で面白くなるんじゃないか?」とこれまでの学習観がアップデートされた衝撃を今でも覚えています。

 では、このプレイフルな見方や行為をするために何が必要となるのでしょうか。上田先生は様々な学習理論や概念に触発されながら、話を進めていきます。前半は、物事への意味づけの仕方(ものの見方)や目標設定の仕方、他者との関係性を調整するアプローチからプレイフルという概念に迫っています。主に参照している学習論は次のようなものでしょうか。一部、関連書籍も挙げておきます。

・認知的動機づけ理論
・省察的実践家
・メタ認知
・構築主義
・足場かけ(scaffolding)
・分散認知
・最近接発達領域

↑心理学者キャロル・ドゥエックの認知的動機づけ理論についてはこちら

↑ドナルド・ショーンの省察的実践家というプロフェッショナル論や、リフレクション(省察)の概念を学ぶには。めちゃくちゃ高いですが・・・・・・。

↑メタ認知の入門書としてオススメです。いずれこのノートでも紹介したいです。

↑構築主義についてはこちらでしょうか

↑最近接発達領域を提唱したヴィゴツキーの入門書です。


 本書の後半では、プレイフルな環境をいかにデザインするかという視点で書かれています。プレイフルにするための①空間のデザイン、②道具のデザイン、③活動のデザイン、④人(コミュニティ)のデザインとしてまとめられています。

 こうした空間、道具(人工物)、活動、共同体を「学習環境のデザイン」として捉える見方は、次の書籍も合わせて読むと理解が深まると思います。↓

 このプレイフルの概念を手掛かりに、各々が学習環境をちょっとずつでも変えていけば、教育の世界ももっと明るくなるのではないかと思う今日この頃でした。

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