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子供にこの価値観を教えたい|『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』

「IQ180」「中学中退」「トランスジェンダー」「史上最年少閣僚」…

枚挙にいとまがないほど”マイノリティ”な属性を持つ台湾人。しかし、コロナパンデミックの対応で、台湾のプレゼンスを世界に示したIT大臣として、名前だけは知っている状態でした。

読む前は、「さぞ変わってる人なんだろうな〜」と思っていたのですが、その予想は悉く外れました。ごくごく真っ当な倫理観、老若男女問わず耳を傾ける優しさ。とがっているところが全然ない、人好きする雰囲気。女性としての思春期と、男性としての思春期の両方を経験しているということと無関係ではないのかもしれませんが、それが公平で、人に心を開いた姿勢につながっていることに、類い稀な知性を感じずにはいられませんでした。

AIが人を凌駕するシンギュラリティ到来に対しては、AIと人を<どらえもんとのび太>と例え、発展を促すのはあくまで人間サイドであるという楽観的立場。

正直、「そりゃあ、オードリー・タンさんレベルならそうでしょう。でも、喰われてしまう人はいないのか?」と思うわけですが、氏の実際の施策では、ITに親しまない人たちを除外しない、ITリテラシーで差別しない、ということを常々意識していて、そういう考え方こそが、次の時代の倫理観として非常に大切になってくるんだろうなと学ぶところが多かったです。

そして、インタビュアー、翻訳者も素晴らしいのだと思いますが、まるで日本人と日本語で話していると錯覚するような文化的な近さを感じる語りは、ご本人の博識に由来するものに違いなく、この時代に稀有な世界人だなぁと。(本書の中では、自分が話さない上海語への翻訳を行ったエピソードまで)

おそらく、この本は日本人がインタビューしたからこの内容になったはず。

ドイツや、ニュージーランド、イギリスやアメリカ、ひょっとして、中東、アフリカの記者が彼をインタビューしたら、また別の切り口で表現されそうで、それも読んでみたいです。

何より、娘にも読ませたい。同書はルビが大人向けなので、中学生くらいにならないと自分で読むのは難しいかもしれませんが、今の彼女でも内容として感銘を受けることはあるはず。読み聞かせにしてみようかな?

よりたくさんの良書をお伝えできるように、頑張ります!