重要選挙が目白押しの世界政治と「違和感だらけ」の東京都知事選

重要選挙が目白押しの世界政治と「違和感だらけ」の東京都知事選

 2024年は世界で重要選挙が目白押しであり、7月4日から日曜日の7月4日にかけてもつの重要選挙が実施される。どれも真剣に民意がぶつかり合い世界政治のバランスを変えてしまうエネルギーが感じられる。

 ところが同じ7月7日に実施される東京都知事選だけは「違和感だらけ」である。東京都知事選そのものだけでなく、候補者もみんな「違和感だらけ」である。それでは東京都知事選のいったい何が違うのか?

 とりあえず東京都知事選は後回しにして、これから実施される世界のつの重要選挙から解説する。

その1  7月4日~7日に実施される世界の3つの重要選挙

 1つ目は7月4日の英国庶民院(下院)選挙で、定数が名の単純小選挙区制で争われた。

 任期が5年となった英国庶民院(下院)は2024年12月まで任期があるが、2022年3月に議会解散・招集法が制定され、国王大権に基づく首相の助言を受けた議会解散・新議会招集権が復活した。ここで国王大権は形式的なもので、首相は自らの政党に有利なタイミングで国王に議会解散・招集を助言することになる。

 ところが2022年10月に就任した保守党のスナク首相はインフレに対処する経済対策や対ロシアなど外交に全く指導力を発揮できず、6月22日にやっと7月4日の選挙実施を表していた。しかしこのタイミングにも明確な戦略があるわけではなく、もう少し世界の政治情勢が動く秋ごろ(任期ギリギリ)まで待つべきとも言われていた。

 投票終了後の出口調査では野党の労働党が過半数の410議席程度を確保しており、1997~2010年以来の労働党政権が復活することになる。

 ただ新首相となる労働党のスターマー党首も、かつてのブレア首相のような指導力は期待できず、また6月のEU議会選挙で独・仏など各国で右派が躍進している中で(二大政党なので他に選択肢がないとはいえ)英国だけ「左旋回」することになり、欧州においても英国政治・経済の地盤沈下は避けられない。

 これも英国民の真剣な民意がぶつかり合った結果であることは間違いない。

 2つ目は7月5日のイラン大統領選挙の決選投票で、5月19日にヘリコプター墜落事故で亡くなったライシ大統領の後任を選ぶ決選投票である。

 イランは1979年のイスラム革命で親米王政が倒れ、イスラム教シーア派を国教とする政教一致の国家となった。現在の最高指導者は開祖・ムハンマドの子孫とされるホメイニ師を継いだ2代目のハメネイ師である。イラン大統領は行政の長であるが最高指導者の意向に反した政策は実行できない。亡くなったライシ大統領は典型的な反米の保守強硬派で、将来はハメネイ師の後継者と目されていた。

 イランの大統領選は18歳以上の国民による直接選挙であるが(女性にも参政権はある)、大統領候補者は「護憲評議会」による事前審査が必要で、今回も80名の候補者が6名に絞られていた。そのうち改革派はペゼシュキアン候補ただ1人である。改革派とは対米強硬一辺倒ではなく、現実的に歩み寄ることにより経済制裁の軽減を目指す候補であるが、「護憲評議会」は残る5名の候補者を反米の保守強硬派で固めていた。

 そんな中で6月28日に実施された第一回投票でその改革派のペゼシュキアン候補が一位となり、保守強硬派のジャリリ候補との決選投票が7月5日に実施される。常識的には他の保守強硬派候補の票を取りまとめればジャリリ候補が有利であるが、第一回の投票率が40%と史上最低だったため(どうせ保守強硬派の大統領になると考えられていたから)、投票率が上がればペゼシュキアン候補の目も出てくる。

 これも限定的ではあるがイラン国民の経済低迷と締め付けに反発する真剣な民意が反映されたものであり、決選投票では「さらなる」民意が反映されるはずで予断を許さない。

 どちらが勝ってもハメネイ師は対外的に「さらに」強硬路線に転じるとの見方もあるが、仮にペゼシュキアン候補が勝てば世界におけるイランの脅威が軽減されるはずでもあり、決戦投票の結果は世界の政治バランスと紛争の行方に大きな影響を与える。

 そして最後の3つ目は、7月7日のフランス国民議会(下院)の決選投票である。定員577名の単純小選挙区制で争われ、過半数を獲得した政党が首相や閣僚を選任するが(連立政権になることも多い)、国民が直接選挙で選ぶ大統領権限は独立している。

 6月上旬の欧州議会選挙で、フランスではEUの権限強化に反対する極右の国民戦線(RN)がマクロン大統領率いる与党連合に大勝したため、マクロン大統領が即座に国民議会(下院)を27年ぶりに解散させていた。マクロンは2027年まである大統領任期がレームダックとならないように「勝負」に出たことになる。

 6月30日に実施された第一回投票では、国民戦線が33.2%、左翼連合が28.0%、保守連合が20.8%を獲得していた。国民戦線の国内における政策は移民規制強化やEUへの予算負担削減などで、左翼連合は総じて財政支出拡大によるバラマキ政策であるが、ここまでは真剣なフランス国民の民意を反映している。

 決選投票(第二回投票)は、第一回投票で50%以上かつ有権者の25%以上を獲得した候補者がいない選挙区で、有権者の12.5%以上を獲得した候補者が争うため、候補者が3名以上残る選挙区も多い。

 ここで国民戦線と左翼連合は絶対に共闘しないため、マクロン大統領は与党連合と左翼連合の間で候補者調整を進め、7月4日までに221名の候補者が立候補を取り下げたとされている。これが事実なら計算上は国民戦線の過半数獲得は難しくなり、国民戦線の28歳であるバルデラ党首の首相就任も難しくなる。

 ここは逆にマクロン大統領が国民戦線の国民議会における過半数獲得を阻止するために、本来は政策がかなり違う左翼連合と与党連合を強引に協力させたことになるが、それでも結果はフランス国民の真剣な民意が反映されたものになることは変わりない、

 ここまでで解説した3つの重要選挙だけでなく2024年にすでに実施されている重要選挙では(1月の台湾総統選、2月のインドネシア大統領選、4月の韓国総選挙、4~5月のインド総選挙、6月のメキシコ大統領選、6月のEU議会選挙など)、それぞれ真剣な民意が反映されており国際政治のバランスにまで影響を与えるエネルギーが感じられる。

 そもそも選挙とはそういうものであり、イランの大統領選挙でさえ例外ではないが、さすがに3月のロシア大統領選だけは「茶番」と言わざるを得ない。

 そんな中で同じ7月7日に実施される東京都知事選挙は、全く違った「違和感だらけ」である。

 それでは東京都知事選だけは何が違うのか?

その 2  7月7日に実施される「違和感だらけ」の東京都知事選

 1100万人を超える東京都民が首長を直接選挙で選ぶ東京都知事選は、公職選挙法で規定される日本最大規模の(トップを決める)直接選挙である。国政のトップを決める総裁選は公職選挙法の枠外にある談合選挙だからである。

 そんな今回の東京都知事選には59億2400万円の支出が見込まれている。1万4230か所の選挙ポスター設置費、1865か所の投票所と62か所の開票所の設営費用、新聞広告や政見放送にかかる経費、投票用紙や選挙公報の印刷費用と配布費用、動員される区市町村選挙管理委員会の人件費などで、全額を東京都が負担する。

 これに対して候補者は300万円の供託金だけで「すべての」インフラが利用できる。供託金は有効投票数の10分の1を獲得できなければ没収となるが、それでも利用できるインフラの経済価値と比較すれば「タダみたい」なものである。

 だから政治団体「NHKから国民を守る党」とその関連団体のように24名も立候補させたうえに、寄付者にポスター掲示板に自作のポスターを張る権利を譲渡するなど「不埒なもの」まで出たため、合計56名もの立候補となった。選挙ポスター掲示板のスペースが足りなくなり「さらなる経費」が発生している。

 明らかに「民意を問う」選挙の本質から逸脱しているが、「本当の問題点」はそこではない。

 それは東京都知事としての権限がその現職者あるいは有力候補者の掲げる政策や人物・資質・能力等と比較して比べ物にならないほど大きいため、現職者や有力候補者の周辺には必ず「見えない勢力からの影響力」が働いており、東京都民の民意など「そっちのけ」となっているところである。

 そこが東京都知事選だけ世界の重要選挙と大きくかけ離れている最大理由である。

 東京都知事の権限とは、独自予算の策定と執行権限(直近の東京都の予算規模は16.5兆円で、スウェーデンの国家予算に近い)、議会に独自の条例案を提出する権限、租税の聴取権限などである。

 つまり東京都知事とは、「東京都の行政責任者」ではなく「スウェーデンに近い規模の国家の元首」となる。さらに現職の小池都知事は、東京都議会(定員127名)で公明党を合わせて過半数を維持する「独裁者」となる。東京都知事選に合わせて8議席の補選があるが、それでも過半数を割り込むことはない。

 さらに最大の問題が、その東京都知事や有力候補者に影響を与える存在は国内だけではなく、「日本にとって最大脅威である独裁国家」の影がはっきり感じられるところである。

 もともと地方の首長は「こういった勢力の影響下にある」ことが多い。米軍基地の活動を妨害する沖縄県知事、リニアを遅らせた静岡県知事とその後任知事、銃撃されて瀕死の安部元首相を「わざわざ」1時間もかかる病院に運んで見殺しにした奈良市長、クルド人を無制限に受け入れて市民の安全を損ねる川口市長など、ちょっとか考えるだけで「いくらでも」いる。

 そんな中で今回の東京都知事選の有力候補者は、現職の小池都知事をはじめ、蓮舫・元参議院議員、石丸・安芸高田市長、田母神・元航空幕僚長とされるが、それぞれの周辺に注目してみる。

 まず田母神・元航空幕僚長は現職時に「日本軍は侵略していない」とのレポートを書いて辞職に追い込まれ、さらに2014年2月の都知事選で自らの選挙を手伝った無届けの運動員に報酬を支払ったため買収罪で東京地検特捜部に逮捕されている。つまりそれだけ「日本にとって最大脅威である独裁国家」に狙われていたことになる。従って今回もまだ警戒されているはずで、少なくともその影響下にあることはなく、当選はもちろん善戦することもない。

 石丸・安芸高田市長についてはよくわからないが、今回の東京都知事選出馬は将来へのステップであるはずで、当然に「日本にとって最大脅威である独裁国家」だけなく多方面の「見えない勢力」が接触しているはずである。将来にわたって要注意となる候補者である。

 そして蓮舫・元参議院議員は公示直前に立件民主党を離党しているが、もともと「二重国籍」であるかどうかより、「中華民国籍(台湾籍)」だったとしているところが非常に疑わしい。台湾籍ではなく「日本にとって最大脅威である独裁国家」にいた朝鮮民族だった可能性があり、来日直後に日本人と結婚して村田姓となっているのも「よくある手口」である。2020年に離婚して斎藤姓となっている。

 蓮舫の戦闘的なところは金与正や朴貞子(辻本清美)と非常によく似ている。民族的なものなのであろう。つまり蓮舫が少なくとも日本のために活動して来たかは疑問であり、今回の都知事選落選後は国会議員やどこかの首長に戻さないことである。

 最後に現職の小池百合子である。蓮舫の出馬により「蓮舫よりはマシ」と当選確実になってしまった。

 今回も選挙公報に「カイロ大学卒業」と記載している。小池百合子にカイロ大学の授業に出席していた事実はなく、またアラビア語など大学卒業の学力がないことも明らかであるが、在日本エジプト大使館をはじめエジプト関係者(機関)からの「カイロ大学卒業」とするに足る証拠を確保しているはずで、ここを日本サイドから覆すことは非常に難しい。

 それより大きな問題は、小池都知事としての2期・8年間は公約実現を含む「東京都民のための実績」がほとんどないところである。公約の中には小池都知事が自らの存在を宣伝するためだけのものも多いが、それを含めても実績がほとんどない。

 そういう意味では岸田首相とよく似ているが、なぜか小池都知事には辞任要求は出てこず、一時は「日本初の女性総裁候補」とまで取り上げられ、今回も堂々と期目に名乗りを上げている。

 そして残念ながら今回も「圧倒的」に有利で、当選はすでに確実となっている。

 それでは小池都知事の周辺には何がいるのか? 確かに「日本にとって最大脅威である独裁国家」だけではなく「ありとあらゆる勢力」が取り入っている。もともと小池百合子という政治家は、その時々に周辺にいる「ありとあらゆる」勢力を利用してきた。

 利権確保が少ないともいわれるが、豊洲魚市場の移転、東京オリンピック開催にかかる神宮の森の再開発、太陽光発電推進など「結構こまめに」名前が出てくる。

 小池都知事の「最大の脅威」とは、さすがに最後となる3期目に入ると「強大な都知事権限を最大限に利用する「本当の独裁者」となってしまうところである。それでも代わりとなる候補者がいないところも、今回の東京都知事選の「不気味さ」である。

2024年7月5日  午前11時