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どんな工事をしたの?

いらっしゃいませ!
我が家に代々伝わってきた江戸時代の普請帳の中身を、令和の事務員がエクセルで紐解く話。第7話目(全15話)です。■初めから読む


江戸時代の家の建て替えの話。いよいよ工事についてです。

普請帳には、こう書かれていた!

「受卸之事」と題され、工事の内容が記されています。

受卸之事
一 本宅壱軒(梁三間半 桁六間半)
一 居間より上本柱鉋削之事
一 居間沖より上つま迄椽板打候事
一 戸袋二つ調候事
一 戸障子唐紙入候所不残敷居鴨居を入候事
一 指鴨居鉋削之事
一 座廻り不残上敷を入候事尤面通り居間より上敷板打候事
一 床敷込かばちを入板打落かけ入候事
一 座敷之分なけしを打候事
一 木挽大工受之内ニて調候事 但指口鼻入斗之事
一 穴ハ此方よりほり可申事
一 来二月中旬迄ニ調候事
一 大工賄カ捨ニシテ作料銀弐百五拾目ニ定候
右之通請負仕切如此相違無御座候以上
            当主(施主)の名前
申十一月四日
大工 彦兵衛殿
外ニうしつなきのしつけつり作料として弐拾目増

文化財建造物保存技術協会 編著, 2010.3. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010839493

<あらかじめご了承ください>
工事の内容については知識が全く無いので、ひとまず言葉の意味だけ調べました。
また、専門用語の解説につきまして、「家づくりを応援する情報サイト」さまのリンクを使わせていただきます。とても分かりやすいご説明をありがとうございました!!
とりあえず、ここかな?という画像と一緒にお届けします。


一 本宅壱軒(梁三間半 桁六間半)

梁と桁は、下記サイト(外部リンクへ飛びます)をご参考ください。

桁(けた)とは【住宅建築用語の意味】 (polaris-hs.jp)

1間=1.818m
梁三間半=6.363m
桁六間半=11.817m


一 居間より上本柱鉋削之事

鉋(かんな)は、木が削り節のように削れるアレです。
鉋で削ったんでしょうね(←かなり適当)。


一 居間沖より上つま迄椽板打候事

上つま=軒先
椽(たるき)=家の棟から軒にわたして屋根を支える材木
下記サイト(外部リンクへ飛びます)をご参考ください。

垂木(たるき)とは【住宅建築用語の意味】 (polaris-hs.jp)


一 戸袋二つ調候事

戸袋=雨戸を開けた時に、収まっているところ。


一 戸障子唐紙入候所不残(のこらず)敷居鴨居を入候事

唐紙=襖に貼る加工紙


一 指鴨居鉋削之事

「指鴨居」を鉋(かんな)で削ったらしいです。
下記サイト(外部リンクへ飛びます)をご参考ください。

鴨居(かもい)とは【住宅建築用語の意味】 (polaris-hs.jp)


一 座廻り不残(のこらず)上敷を入候事尤面通り居間より上敷板打候事

上敷
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当時、座敷と仏間は畳でしたが、居間は板の間でした。恐らく、板の間に上敷きを敷いたのだと思います。
現在は、仏間と座敷には本畳、居間は板の上に普通の畳を乘せています。

仏間と座敷(本畳)
居間(普通の畳)

一 床敷込かばちを入板打落かけ入候事

框(かまち・かばち)
上がり框(あがりかまち)とは【住宅建築用語の意味】 (polaris-hs.jp)

落かけ
落とし掛け(おとしがけ)とは【住宅建築用語の意味】 (polaris-hs.jp)


一 座敷之分なけしを打候事

なけし=長押(なげし)
長押(なげし)とは【住宅建築用語の意味】 (polaris-hs.jp)


一 木挽(こびき)大工受之内ニて調候事 但指口鼻入斗之事

木挽大工:製材、および製材作業者で、かつ卓越した木材の鑑定能力をもつ職能集団を指す
指口:部材と部材を接合させるとき,一方にあける穴の位置,またその仕口(しくち)こと

ぴったり合わせる技術力!

一 穴ハ此方よりほり可申(もうすべく)事

工事のスケジュールのところで、「あなより」と書かれている工程があって、このことかなーと思っております。


一 来二月中旬迄ニ調候事

この普請帳が書かれたのが、天明8年(戊申)1788年なので、「来二月中旬迄ニ」=「寛政元年(己酉)1789年2月中旬までに」ということだと思います。
後述しますが、この記載通りに寛政元年(己酉)1789年2月14日〜2月15日に吉祥日おこし日(上棟?)とふきじ(葺地?)を完了しています。


一 大工賄カ捨ニシテ作料銀弐百五拾目ニ定候

銀弐百五拾目(匁)=541,500円 
*1匁=2,166円で計算
何となく、工事費用の前払金のような気がします。とりあえず250匁、先に払っとく的な・・・!?


右之通請負仕切如此相違無御座候以上

右の通りに間違いないよ、以上。


申十一月四日

天明8年(戊申)1788年11月4日


大工 彦平殿

彦平さんは、この後「工事進捗・関係者リスト(大工さん関連)」に登場します。たぶん「親方」なのだと思われます。


外ニうしつなきのしけつり作料弐拾目増

なんだか良く分からないのですが、弐拾目(匁)アップチャージになったようです。
弐拾目(匁)=43,320円 *1匁=2,166円で計算

さて、工事の内容が分かったところで、次はどのようなスケジュールで工事が行われたのかを調べたいと思います。

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