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はじめに


浮世絵「木曾街道 大宮宿冨士遠景」


 

はじめに

ナンバ歩き


この言葉を聞いて、どのような歩き方をイメージされるでしょうか。
 
・右手と右足が同時に出る
・歌舞伎で演じられる勧進帳の弁慶みたいな歩き方
・ギクシャクしてとても歩きにくい
 
このような印象をお持ちの方、多いのではないでしょうか。
 
ナンバ歩きは、江戸時代以前の日本人の歩き方である、と言われています。
しかしその歩き方の伝統は明治時代以降の文明開化の流れの中で失われています。
 
私たちが現在普通に歩いている歩き方は、ヨーロッパの人々と同じ歩き方。
当時の時代を生き抜くために西洋の歩き方を教育されたものです。
現代の歩き方は、例えば行進をするときの様に多くの人々が揃った動きをするのに大変適しています。
その一方で、靴を履いて足を守らないとすぐに足・膝を痛める歩き方でもあります。
 
ナンバ歩きは、元々江戸時代以前の人々の暮らしの中から自然発生した歩き方。
山が多く、川や湿地の多い日本で暮らす中で生まれた、身体の自然な動きで長時間歩くことのできる歩き方です。
 
ナンバ歩きが出来るようになると、以下のようなメリットがあります。
・身体に本来備わったバネを使った、膝にやさしい歩きが出来るようになります。
・着物を着て歩いても着物が乱れない歩き方が出来ます。
・身体が自然と前に進むため、楽に長い距離を歩くことが出来ます。
 
しかしその歩き方は現代の歩き方とは異なるため、最初は戸惑うかもしれません。
 
私がナンバ歩きに興味を持ったのは2014年。
マラソンが趣味だった私は、その前年に初めて参加した100kmマラソン大会で膝を痛めて途中棄権をする、という苦い体験をしました。
悔しかった私は、どうにかしたいと思い様々な本を読んでいる中で、
「江戸時代の飛脚は3日で江戸~京都の約500kmを走れる」
という話を知りました。
整備された道路も、足を守るクッション性の良い靴もない江戸時代、どうしたらそんな長距離を足を痛めることなく走れるのか?
その疑問にとりつかれた私は、国会図書館に通い当時の文献を片っ端から調べ、それを実際に自分の身体で試す、という実験を始めました。
そのかいあって、2016年に初めて100kmを完走することが出来ました。
しかもその時履いていた靴はVibram FiveFingersという靴底5ミリのクッション性の全くない靴。
全くクッション性の無い靴なのに、膝を痛めることなく100km完走出来たって、不思議ではありませんか?
実はその秘訣が、ナンバ歩きだったのです。
 
ここでは、文献に残された内容をもとに、私自身の身体で検証して実際の動きに落とし込んだ、当時の記録と矛盾の無い「ナンバ歩き」をご紹介したいと思います。
 
もし、
・長距離歩いても膝痛に悩むことなく歩きたい、走りたい
・楽に長い距離を歩きたい
・江戸時代の人の様に歩きたい、走りたい
 
という方がいらっしゃいましたら、ナンバ歩きがその一つの解決法になるかもしれません。
ご興味を持っていただけましたら幸いです。


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