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SAPPORO

札幌…
「試される大地」と呼ばれ恐れられる北海道において、ひときわに苛烈な凍てつく牢獄。竜巻と見紛うばかりの猛吹雪が吹き荒れ、その気温は常に-200℃を下回る。
生命のみならず、あらゆる物体が活動を停止する、まさに死の街…それが札幌。
その札幌において、唯一生存可能な生物がいた…。

彼の名は……美木良介。

ロングブレスにより尋常ならざる新陳代謝を手に入れ、この極寒の要塞に適応した地球でただ一つの生命体。
遥か昔に時を刻むことを放棄した時計台を棲み処とし、日々のロングブレスで消費される 200,000kcal という膨大なエネルギーを補給するため、雪と氷に封じ込められたセイコーマートに力づくで乗り込み、細胞の1つ1つに至るまで完全に凍り付き鋼鉄をはるかに凌ぐ硬度と化したとうきびを、まるで熟した桃を齧るかのように喰らう、現代のビッグフット……それが美木良介だ。

我々研究班はそんな美木良介の謎を探る為、人類で初めて札幌の地を踏む。
幾重にもシミュレーションを重ね、あらゆる事態に対策を講じ、万全の装備で調査に向かった。
……はずだった。

札幌を甘く見ていた。
100人以上いた調査隊は、今ではたった5人となってしまった。
ある者は凍える冷気に倒れ、またある者は荒れ狂う雪風に切り刻まれて消えていった。計器の類はまるで意味をなさず、持てるすべての科学力をつぎ込み開発した防寒具など紙切れも同然であった。
我々はこの白銀の地獄にたった5人で取り残されてしまった。
絶望の二文字が頭をよぎる。

その時だった。
吹きすさぶ吹雪の向こうに、私はかすかな人影を捉えた。

間違いない。美木良介だ。
ついに、ついに成し遂げたのだ。
我々は最後の気力を振り絞り、美木良介に向かって走った。


………一瞬の出来事だった。
我々5人は、なすすべもなく宙に放り投げられた。
何が起こったのか理解する間もなく、私の身体は凍り付いた地面に激突した。
身体が凍死寸前まで冷え切ってしまっていたために神経が鈍り、痛みをあまり感じなかったのが唯一の幸運だった。

真っ白な雪に飛び散る鮮血。歪む視界。

意識を失うその直前、私は驚くべき光景を目撃した。
吹雪が、美木良介を中心に巻き起こっている。
奴がロングブレスをする度に、通常ではあり得ない暴風が奴の口から発せられているのだ。300年休まずに続けたロングブレスにより、美木良介の肺活量は人の…いや、生物の限界を遥かに超えていた。

そうか…そう…だったのか……。
この吹…雪…自然に起き…物な……か…じゃ…ない。
こ…は……美……良…


私の意識はここで途切れた。

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竹原
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