カメラ片手に、プロの写真家と散歩した話〜中野編〜 第1話
この記事は何?
・写真を撮ることが好きな素人が、プロの写真家・和田剛さんと街を歩き、撮った写真を見ながらプロからアドバイスをもらい、カメラの腕を上げてしまおうという連載。
対象読者は?
・写真撮影が上手くなりたい!と思っているカメラ初心者。
・プロは何を考えて写真を撮っているのか興味がある人
さて、色々な方面から面白いと評判を頂いている本連載、前回は新宿でしたが、今回は隣の街、中野に来ました。
中野といえば、最近再開発が進み駅前が都市化されて大学誘致も増えて若い人が多い街という印象ですが、どんな展開になったのでしょうか。
今回歩いたエリアは以下です。
撮影の概要
・【場所】中野駅北口エリア、サンプラザ、新井薬師、ブロードウェイ
・【日時】7月のとある晴れた日
・【天気】夏の青空
撮影場所の詳細
今回の撮影地は、以下のエリアを中心にお届けします。
・中野サンプラザ〜セントラルパーク周辺(赤枠エリア)
・新井薬師商店街周辺(青枠エリア)
・中野ブロードウェイ周辺(オレンジエリア)
普通っぽい被写体をどう撮るか
設楽:
さて、今回は中野です。高円寺に長く住んでいたことがあるので、中野はとても馴染み深いですが、再開発が進んで前とはだいぶ印象が変わった街ですが、今日はどんな撮れ高があるのでしょうか。楽しみです。
サンプラザ中野あたりからスタートした今回ですが、まず最初の一枚から、ということなのですが、サンプラザ中野の写真を何枚か撮りました。やっぱりこの街のシンボルですからね。
でも全然いい感じのがなくて、今回はちょっと見せられる作品が無く……。
ということで、今回の一枚目は、サンプラザ中野の横にあった中野区役所にあった、謎の犬の銅像を……。
なんでこんなとこに犬の銅像があるのかな、って思ったら、徳川綱吉の生類憐れみの令に関する施設がこのあたりにあったのが由来だとか……。でも全然中野っぽくないですよね(笑)。
和田:
中野っぽくはないですよね。実は僕もこの犬は面白かったんで撮りました。2枚ほど。僕のはこんな感じです。
設楽:
2枚目これ、俺じゃないですか(笑)。被写体はともかく、構図は下の方がいいですね。
和田:
こういう写真がいいと思えるようになったってことは、だんだん写真を見る目がついてきたのかもしれないですね。
まあこの下の写真はいわゆる「飛び道具」ですよね。普通に撮ると上の写真がオーソドックスな構図です。まあ普通の写真ですよね。仮にこれをもう少し引いて撮ったとしても、まあ想像のつく写真になりますよね。
設楽:
たしかにそうですね。
和田:
僕も設楽さんみたいに、思いっきり寄ってしまって撮ることも考えたのですが、この場合は引いても寄ってもどうすることもできないモチーフだったので、こういう場合はこういう飛び道具を使うっていうのも手です。
設楽:
銅像って全国各地にありますが、そのまま撮ってもなんかパッとしないですよね。あたりまえというか、ありきたりというか……。こういうの撮るのって実は意外と難しいなと思います。
和田:
僕も全国あちこちで銅像を撮影していますが、そのまま撮るとたしかに普通っぽくなりますよね。
この場合僕は、あえて「銅像感をなくす」ことを意識して人をかけて撮ってみて、この一枚にユーモアを入れてみました。この生類憐れみの令がモチーフの銅像と、現代の人物を入れることで何か面白いことが写真上で起きないかと考えて撮ったのがこれです。
設楽:
なるほど、異質なものをかけて構図の中に入れるんですね。
和田:
この文脈で、過去の著名なカメラマンの話をここでしましょうか。設楽さんはマーティン・パーというフォトグラファー知ってますか?
設楽:
いや、知らないです。
和田:
この人なんですけどね、ちょうどいいnoteの記事があったのでリンクを貼っておきましょう。
写真家Martin Parr-そのドキュメンタリーは社会の側面を描く
和田:
この人の写真の面白いところは、たとえば真ん中あたりに中南米のインカ?テオティワカン?のようなピラミッドの前で写真を撮るおじさんの写真がありますよね?
普通のカメラマンだったら、こういう景勝地に行けば、いわゆる有名な遺跡とか風景を撮りますが、マーティン・パーはその視点がおもろいんですよね。シニカルさやユーモアさに溢れているんですよ。
あと、ピサの斜塔で撮った一枚なんかも見てください。普通こういう発想では写真を撮りませんよね。
設楽:
本当だ、めちゃめちゃ面白いですねこの構図は。
和田:
僕はマーティン・パーが好きで彼の作品を見ているから、ああこういう構図もありかなっていう引き出しを持っているんだけど、結構大切なのは、色々なフォトグラファーの写真を見ることも、写真が上達する一つの方法かもしれないですね。
ちなみに、マーティン・パーは「Small World」という写真集も出してて、これはなかなかいいです。
【ポイント】
構図の勉強のために、色々なアーティストの作品を研究する
設楽:
初心者が悩むのって、普通に撮ると普通になって面白くない被写体をどう面白く撮るか?なんですよね。今の和田さんのアドバイスで、もうちょっと色々なカメラマンの作品を見て研究したいと思います。ということで早速この写真集ポチりました(笑)。
縦位置と横位置のはなし
設楽:
さて続きまして、中野セントラルパークあたりに行きました。ここではちょっと「房」が面白い植物があって、それに注目したんですが、まず和田さんの一枚から見てみましょう。
そして同じ木を私が撮ったのがこちらです。
うーーん、僕の方は暗いし地味だし、この植物の特徴である「房」のような部分が全然捉えられてないですね。和田さんはこの写真を撮る時どんなことを考えていたんですか?
和田:
ここで設楽さんに伝えたいのが、写真の縦位置と横位置の話です。散歩はスナップを撮るので、本当は僕は極力横位置で写真を撮るようにしているのですが、この植物は縦位置の方が収まりが良かったので、こういう構図で撮りました。
設楽:
縦位置と横位置ってあんま意識してなかったです。縦長の対象物は縦で、それ以外は横で撮るぐらいにしか考えてないです。
和田:
横位置と縦位置の一般的な話をすると、横位置は状況を写す、ありのままを写す写真で、縦位置は断定、つまりそこに撮り手の意志が入る写真になるんです。
【ポイント】
横は状況、縦は断定
縦位置でとると、その撮りたいものが際立って、周りで不必要なものが入らなくなるから、より撮りたいものが主張されるんですよね。
設楽さんのように、この被写体で横位置で撮ると、どうしても無駄なものが入ってきてしまうんです。やっぱりここでは、この植物の「房」に視線を向けて欲しいので、縦位置で撮ったほうがよかったかもしれないですね。
設楽:
うーーん、勉強になるなー。今回も知識と技術が色々学べた回でした。
(つづく)
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【プロフィール】
和田 剛 | フォトグラファー
旅行と温泉が好き。
写真をまなぶ人のオンラインスクール「good! studio」主宰
設楽幸生/Sachio Shitara
編集者。1975年東京生まれ。週末カメラ片手に飲み歩くのが趣味な、写真の素人。Twitterやってます。
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東京都八王子市高尾山の麓出身。東京在住の編集者&ライター。ホッピー/ホルモン/マティーニ/アナログレコード/読書/DJ