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カメラ片手に、プロの写真家と散歩した話〜国立競技場・北参道編〜 第3話

この記事は何?

・写真を撮ることが好きな素人が、プロの写真家・和田剛さんと街を歩き、撮った写真を見ながらプロからアドバイスをもらい、カメラの腕を上げてしまおうという連載。

対象読者は?

・写真撮影が上手くなりたい!と思っているカメラ初心者。・プロは何を考えて写真を撮っているのか興味がある人

撮影の概要

・【場所】国立競技場・北参道
・【日時】1月のとある晴れた日
・【天気】冬の青空

撮影場所の詳細

(前回の記事はこちら
今回の撮影地は、以下のエリアを中心にお届けします。

・東京体育館周辺(黄色のエリア)
・新国立競技場周辺(青色のエリア)
・鳩森神社周辺(赤色のエリア)

設楽:
さて千駄ヶ谷〜新国立競技場も最終回を迎えることになりました!
今回は地図でいうところの赤い囲みの、鳩森八幡神社中心にお届けしたいと思います。

さて、神社に行く前に、気になる写真を見つけまして、これは和田さんが撮影したものなんですが、ちょっと見てください。

今回のシリーズの一話目で、電線は撮影において邪魔な場合が多いので、敢えて電線がない場所を探すという話をしていました。

ですが、今回のような場合だと、電線がとても印象的な一枚になりますよね。ブルーのシートを背景に、黒と黄色の入り組んだ電線が面白い写真になっているような気がします。

和田:
今回のエリアは、今まで世界的な建築家の大きな建物を中心に撮ってきましたが、一本路地を入ると、このあたりはこんな風景が広がっているんですよね。それが印象的だったので撮りました。

この写真、右側に電線が入り組んでいますよね。ここを中心に撮ったのもあるんですが、色々見ていると左側に流れるような画面構成にした方がいいなと思ってこれを選びました。

設楽:
なるほど、そういう意図があったんですね。

さて我々はぶらぶら歩きまして、いよいよ鳩森八幡神社に到着しました。都会の中に風情のある神社が突然現れるんですが、この和田さんの写真が東京にある神社というのを象徴していて、とてもいい写真だと思います。

これ、本当に上手いなーと思っていて、僕は神社に行ってこの構図を捉えることができなかったんですよねー。悔しいですね(笑)。

何がいいかって、これ田舎の神社だと絶対できない構図じゃないですか。東京の神社でもなかなかこういう構図を出せるところは少ないんじゃないかなと。古い神社と現代を象徴するような代々木のドコモタワーのマッチングが絶妙です。

和田:
設楽さんとは過去に西新宿を歩いたり、天王洲アイルなんかでも撮影しましたよね。その時もそうですが、東京の街って、こういう風に背景に「東京っぽさ」が現れる場所がいくつかあるんですよね。そこは意識して歩くようにしています。

この写真の場合、手前がちょっと暗くて社と鳥居があって、その後ろの空が抜けていてビルがあるのは気持ちいい写真ですよね。

設楽:
神社って普通に撮ると、まあ似たような構図になってしまいますよね。例えばある部分を切り取って、これはどこの神社か?と言われた時に、写真によっては地方の神社か都会の神社かわからない場合が多いと思うんですよね。

でもこれは、超高層ビルを入れることによって、神社に意味合いをもたせている部分が写真表現として素晴らしいなと思います。

ちなみに、僕みたいなのが撮ると、神社ってこうなるんですよ(笑)。

これって別に鳩森八幡神社じゃなくても良くないですか?って話なんですよね(笑)。これ逆光をあえて狙って、参拝する人を待って撮ったんですが、やっぱり和田さんのさっきの写真のほうが、「その場所ならでわ」感が出てていいですよね。

和田:
敢えて待って撮る、という手法に関しては、私がこの講座で何回も使った手法ですが、それを意識して撮ったことに関しては素晴らしいと思います! あと逆光を使って撮ることに抵抗がなくなってきたことは、表現の幅が広がってきたことなので素晴らしいことだと思いますよ。

設楽:
ありがとうございます。今回の神社なんですが、一つ印象的な写真がありまして、私と和田さんと同じ場所で撮った写真があるんですよね。手水(神社入る時に手を洗って清める場所)をお互いに撮っているんですが、これがプロと素人の差が歴然でちょっと凹みました(笑)。まずは僕の撮ったのがこれです。

まあ、綺麗ですね、っていう感じですよね。手前の大きな花にピントが来てて、しかも光と影のコントラストもまあまああって……。そして以下が同じ場所で撮った和田さんの写真なんですが、やっぱり上手いなぁと。

おんなじ場所で撮影したのに、なんでこんなキラキラしてるんだと(笑)。これってなんかやってるんですか??(笑)

和田:
いや、なんもやってないですよ(笑)。特にレンズにフィルターもつけているわけではないですし。
これはまず逆光を意識したのと、シャッタースピードを速めにしています。上の水滴が止まっているのがわかりますか?ここも意識するためにシャッタースピードは速めにしています。

あと水って鏡面ですよね、だからその照り返しが写るように撮りました。こういう写真を技術的に上手に撮る訓練をするとしたら、川面や湖面を撮る練習をするといいかもしれないですね。

水面って時間とか角度によって、光り方が違うので、時間とか場所を変えて撮ってみるのは面白いと思いますよ。

【ポイント】
太陽が水面に照り返している時に、どう光るかを撮ってみる。

設楽:
極楽浄土感がありますよねこの写真(笑)。水面を綺麗に撮る技術を身につけると、また表現の幅が広がりますね、頑張ってみます!

ちなみに今回はモニターの方も参加しているのですが、モニターの方もここで撮影されていたようなので、こちらも載せておきます。これはこれで、また違った表情で写っていますよね。

さて、神社を離れて、今度は代々木の方に向かいました。この辺は古い民家もありますが、再開発が進んでいて、大きなビルが沢山建てられていましたね。
3人とも似たような場所で撮っているので、このエリアの話をして今回は終わりにしたいと思います。これは北参道の交差点の建設中のマンションですね。まずは和田さんが撮影したものがこちらです。

そして私、設楽が撮ったのがこちらです。

そして最後にモニターの方が撮ったのがこちらです。

和田:
3枚目の写真は、モニターさんからお話を伺いました。右側の電柱が現場監督で、その先のクレーンを観察しているように見えた、とのこと。

撮影者の意図や解釈を感じる1枚です。画面の比率構成も良いですし、フォトジェニックな写真です。

設楽さんの写真は、左側の灰色の建物が写り込まなければもっと良くなりますね、ちょっともったいないです。これ、強調したかったのはクレーンですよね?だとしたら左の建物は消したほうがいい。

設楽:
そうなんですよ。クレーンなんです。次から角度をもう少し研究して撮ってみます。
ちなみに和田さんの写真は、この手前の明治通りの看板を思いっきり入れることで、写真に物語感を出そうという意図が感じられるのですが。

和田:
まさにそうで、この写真はこの手前の看板が入ってないと意味がない写真だと思っています。
明治通りかどうかはあまり意味がなくて、この通りの看板と工事の風景を写すことで、変わりゆく東京の都市景観のようなものを伝えようとしたんです。都会のガチャガチャした感じを伝えようとした一枚ですね。

こういう建物って、建物メインで移すとアーキテクチャーの写真になりますが、こういう看板を入れることによっていきなりストリートスナップっぽくなりませんか?そこを意識して撮ったんです。

設楽:
たしかに、要素が増えることによって、同じ対象でも全然印象が変わってきますね。今回も勉強になりました。ありがとうございました!
(終わり)

このエリアでの他の写真〜和田〜

このエリアでの他の写真〜設楽〜

【プロフィール】

和田 剛 | フォトグラファー
旅行と温泉が好き。
写真をまなぶ人のオンラインスクール「
good! studio」主宰

設楽幸生/Sachio Shitara
編集者。1975年東京生まれ。週末カメラ片手に飲み歩くのが趣味な、写真の素人。
Twitterやってます。


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カメラのたのしみ方

東京都八王子市高尾山の麓出身。東京在住の編集者&ライター。ホッピー/ホルモン/マティーニ/アナログレコード/読書/DJ