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“光を当てる”役割で、地域とつながっていきたい。普通のまんま『森ノオト』で書くこととは

ウェブメディア『森ノオト』で記事を書く市民ライターさんに、これまで書いてきた記事を振り返りながら、「森ノオトで記事をつくること」について語ってもらうインタビュー企画がスタートしました。

二人目は、2021年に森ノオトライターとなって、二人のお子さんの育児とお仕事の合間を縫いながら記事づくりを続け、ライター活動3年目を迎えた醤野宏美さんです。普段は公務員として働いている宏美さんがライターを始めたきっかけは?森ノオトに参加し続けている理由は?編集部スタッフの佐藤が伺いました。
 
——宏美さんは一人目のお子さんの育児休業中に森ノオトのライター養成講座を受講しましたね。宏美さんが森ノオトライターを始めたきっかけはなんだったのでしょうか?
 
私はもともと神戸で働いていて、転勤で横浜市都筑区に引っ越してきてから一人目の子どもが生まれました。地域に出て子育てをしたいと思いましたが、地縁がないことに困ってしまって。ネット上で「子育ては孤独」という話を耳にしていて焦りもあり、地域の市民参加型のプログラムに顔を出す機会をつくっていたんです。
 
そのプログラムは地域活動やまちづくりのスキルを学ぶもので、ある回で「地域を豊かにする役割」の話がありました。「実際に地域活動をつくる人」やそれをサポートする「行政」、「専門家」などが挙げられているなかに、情報を届ける「メディア」の存在が挙げられていたのが印象に残っていました。
 
そのプログラムを受けるほどに、アイデアを出して地域活動をつくる役割よりもメディアの役割の方が自分には向いているかもしれないと感じるようになりました。彼らの活動に“光”を当てて応援することで地域とつながりたい、と思ったんです。
 
——そのようなきっかけがあったのですね!宏美さんにとって書くことは元々身近なものだったのでしょうか?
 
神戸にいた頃、口コミがどれほど力を持つのか知りたくて、地域の魅力を紹介する個人ブログを運営していたことがありました。ハンドルネームで活動していたのですが、たまたま私のブログを読んでいるという人に巡り合ったことがあって!全然知らない人にも届いているんだっていうのが面白いと思ったんです。
 
プログラムを通して書いて発信することが好きということを再認識し、地域のライター養成講座を調べはじめて、森ノオトを知りました。ほかにも選択肢はあったのですが、森ノオトの空気感がやりたいことに一番近い気がして申し込みました。
 
——そうだったのですね。ライター養成講座を受講して、どうでしたか?
 
引っ越してきて間もなかったこともあり、地域のことをあまり知らなかったから、まず取材先を決めるのが大変でした。でも講座のワークショップで自分の関心を掘り下げるうちに、横浜をホームとするプロバスケットボールチーム「横浜ビー・コルセアーズ」のごみ拾い活動を取り上げることに無事決まりました。

宏美さんのライター養成講座の修了レポートは横浜ビー・コルセアーズの環境保護活動。宏美さんは学生時代バスケットボール部に入っていました。「森ノオトにはスポーツ系の記事が少ないし、面白い切り口だね!」という編集スタッフの声も後押しになったとか

——取材はうまくいきましたか?
 
相手の方から話をうまく引き出せた、という感じがあまりしなくて、取材自体には少し苦手意識が残っていたんです。でも編集会議で同期ライターさんの記事づくりの過程を聞いていたら、みんな同じく苦労していたことが分かりました。サイトでは記事は出来上がりの形しか見られないけど、編集会議でそんな話を聞いているうちに、やっぱりできるかも!と少し前向きに思えました。
 
ただ森ノオトライターさんは、「暮らしの手仕事」とか「エコ」とか、自分のテーマをもっている人が多いけれど、私はこれっていうのが見つけられなくて。だから編集部のチーム制は自分にとってはよかったと思っています。興味がある話題が出るし、チームメンバー同士での企画にちょこっとだけでも関われるから忙しい時でも参加しやすいなって。

森ノオトは2023年からライターの関心ごとに4つのテーマに分かれ、チーム制で活動しています。宏美さんは「子育て・教育」がテーマのチームで、私ともう一人のメンバーと一緒に写真の記事を書き合ってくれました

——宏美さんは子育てにお仕事に多忙ななか、森ノオトの活動に参加してくださっていますね。
 
森ノオトはいつ参加してもフラットに受け入れてくれるのがいいなと思います。バタバタして参加できない期間が続いても、気後れする雰囲気がないから、ゆるくつながり続けていられる。
 
普段過ごしていると、「仕事をしている自分」と「ママである自分」を行き来する日々になってしまって。それでも充実しているのだけれど、私にはもっと“あそびしろ” が必要だと感じているんです。だから職場でも家でもない、サードプレイスのようなところとつながっていられるといいなと思っています。
 
友達ともちょっと違う、普通にしていたら出会わないような方々と書くことでつながる。お互いのこと何から何まで知っているというわけでなくても、森ノオトという共通点があって、その人が書く記事を読んで考えていることを受け取るのも面白いなと。そんなゆるやかなつながりが、自分の生活にあるといいなって思うんです。
うっかりすると家と職場の往復で終わる日々のなかに、そんな参加したい場所があると、そこに向けて行動できますしね!

お仕事の都合をつけて、取材の時間を平日につくってくださった宏美さん

——私が宏美さんの取材記事の中で特に印象に残っているのは都筑区の緑道にある「はちのじ文庫」の記事です。この記事はどのようなきっかけで生まれたのですか?
 
文庫の設立者である黒沼さんとは、先ほど話した市民参加型のプログラムで知り合いました。黒沼さんはプログラムで出したアイデアを実際に形にされていて、そのクオリティがまた素晴らしくて!講座終了後も黒沼さんとは連絡を交わしていて、ぜひ取材したいと声をかけました。

宏美さんが記事で紹介した「はちのじ文庫」は、都筑区の住宅街に設置され、誰でも好きな時に本を借りたり返したりできるフリーライブラリー。2023年の取材時は1カ所だった文庫が、現在は12カ所に設置場所が増え、本がめぐる輪を地域に広げています

——この記事では、黒沼さんの思いを紹介しながら、そこへ重ねる宏美さん自身の気持ちを言葉を選びながら編集していった過程が、私の印象に残っています。
 
自分の本当の主観を記事に書くのは不安です。これでいいのかな?と悩んでしまうこともあるけど、編集を通せば変なところは指摘してもらえるし、「いいね」というリアクションをもらってから世に送り出せるから、胸を張れる気がしています。だから私にとっては編集部の存在はありがたいです。
ふわふわしている自分を言語化するのは苦労するし、一人で書いたらそこまで突き詰めずに終わってしまうと思います。でもそこを乗り越えるからこそ、より実感がこもった記事になるし、こんな記事もいいな、と思えるんです。
 
『森ノオト』の前編集長・梶田亜由美さんがnoteの記事で、「普通の人が記事を書くのが森ノオトの魅力」と言っていたのを見て、勇気をもらいました。私には、とがったものはないけれど、森ノオトでは普通のまんまでいて、その時に感じたことを書けばいいのかなという気持ちになれました。日々生活している人が、生活の中で感じた一部分を切り取って書いたらいいんだなって。
 
——私もそんな森ノオトの記事が好きだし、そういうことを書ける場所でありたいと思います。これからもよろしくお願いします!
 

(取材を終えて)
宏美さんの地域への思いの先に森ノオトがあり、今活動を共にできて本当によかった。そんな思いを噛み締めるインタビューとなりました。
 
ここはどういう意味だろう?この話もっと聞きたい!こんな表現にしたらどうだろう……原稿上でライターさんと私たち編集部とがやりとりを重ねて、記事が送り出されていきます。編集の過程では、ライターさんの実感がこもった言葉に思わずハッとすることが多くあり、そんな生きた思いを世に送り出すうえで、編集部は少しでも力になれているのかもしれない。宏美さんの温かな言葉に、私はそんな風に思う勇気をもらえました。
 
活動に光を当てることで地域をよくしていける。情報を届けるメディアは、まちづくりを後押しできるんだ。そんな思いを胸に、これからも市民ライターのみなさんと記事づくりを続けていきたいと思います。
 
(文・佐藤沙織)

ウェブメディア『森ノオト』は、横浜市青葉区を拠点に、市民が書き手となって地域の暮らしが豊かになる記事を発信しています。
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