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”普通の人”がつくり合う。そんなメディアをこれからもみんなで|梶田亜由美さん(WEBメディア『森ノオト』編集長)

森ノオトにかかわる人たちの声を聞きながら、ローカルメディアのあるまちの現在地を描くインタビュー企画。2023年の1年間、さまざまな方に「森ノオトとは?」を話していただきました。
締めくくりは、私たち『森ノオト』の編集長・梶田亜由美さんです。寄付でつくるメディアって?あゆみさんにとっての森ノオトとは?編集部スタッフの佐藤沙織がお話を聞きながら、この1年のチャレンジを振り返りました。

——「森ノオトって何?」「森ノオトというメディアがあることで、地域に何か変化が生まれている?」。この企画はそんな疑問を、ライターさんや取材先、NPO正会員やサポーターの方といった“森ノオトに関わる人”たちに聞きたい、そんな思いでスタートさせましたね。

この企画が生まれたきっかけは、鎌田淳さん(森ノオト理事)とのミーティングでした。私たちは地域の人を記事にして応援してきたけど、森ノオトのことを言葉にしてもらう機会はつくってこなかったから、始めた当初は自分たちのために時間を割いてもらって恐縮、という気持ちが強かったです。

でもインタビューをお願いすると、みなさん「喜んで」と言ってくれて。回を重ねていくごとに、「こうやって受け止めてもらえるんだ」と新鮮な気持ちが募りました。私が取材したコマデリの小池一美さん(森ノオトライター)とは、森ノオトの歴史を紐解くようにこれまでを振り返って、涙ながらのインタビューになりました(笑)。NPO設立10周年のこの1年、走り切って感慨深いなというのと、よくやり切ったという気持ちがあります。

企画では1年間で17名の方にお話いただきました。取材は、これまでさまざまな形で関わってきたみなさまに、改めてお礼を伝える機会にもなったと、インタビューの場に一緒にいた宇都宮(森ノオト事務局長)は話します

——このnoteでの企画は、2023年の1年間チャレンジしてきた「NPO設立10周年寄付キャンペーン」と並行して進めましたね。

この1年、noteのほかにも10 周年にちなんでさまざまなことにチャレンジしてきました。森ノオトでは「ファンドレイジングチーム」を立ち上げて、一つ寄付をいただいたらみんなで喜んで、反響を分かち合いながら進めていきました。

でも目標達成までは、苦戦しました。キャンペーンの終盤は、SNSやイベントの場での告知に加えて、それぞれの知り合いに寄付を直接お願いするようになって。私は「寄付をお願いするなんておこがましい、断りにくいだろうに」と思っていたのだけれど、みなさんに「声をかけてくれてありがとう」「参加させてもらえてうれしい」と言ってもらえて、びっくりしました。寄付はその人が選ぶことだから、押し付けてまでやってもらうことではないとそれまで思っていたけど、こちらが一歩コミュニケーションを深めると、輪に入ってくれる人がこんなにもいるんだと感じた1年でした。

NPO設立10周年を機にチャレンジしたバースデードネーション。寄付のプラットフォーム「Syncable」を経由する以外にも直接手渡しや募金箱でのご寄付もあり、170名以上の方々から総額183万5,812円の寄付を寄せていただきました

——森ノオトというメディアの大きな特徴は、やはり“寄付に支えられている”というところだと思います。そんなメディアづくりをするうえで、あゆみさんが大切にされていることは何でしょうか。

メディアのあり方としては、「森ノオトがあるまちでよかった」と感じてもらえるといいな、と思っています。地域の人に「このまちに住んでいてよかった」という思いが生まれるきっかけの一つが、森ノオトであればいいなと思います。

寄付をいただくのは、森ノオトを続けていくためです。「メディア×NPO×地域」という仕組みでここまで続けてこられたのは、奇跡的だなと思う瞬間が、これまで働いてきて何度かありました。まどかさん(森ノオト理事長)のように、カリスマ性と行動力、信念を持った人がトップを走り続けてきてここまできたけど、それをずっと続けていくのは少ししんどいなと。これからも森ノオトが続いていけば、運営する人も変わっていくだろうけど、誰かがしんどい思いをせず、森ノオトが大切にしてきた編集を続けていけるように。一人のスーパーマンがつくるのではなく、”普通の人”たちで続けていける形であればと思っています。

今回のバースデードネーションキャンペーンは、新しい何かをつくるのではなく、次の10年を“続けていく”ために寄付を募りました

——寄付をいただいているからこそ、その読者の方にとって少しでも価値があるような記事を書きたいと私は思っています。森ノオトの記事が届けられる価値は、どんなところにあるでしょうか。

私のことに置き換えると、私は森ノオトに出会って、人生の選択肢が広がったと感じています。森ノオトの記事や、森ノオトの人に触れて、自分がいいと思うことや、こうしたいと思える生き方に気づき直していけました。
森ノオトの記事を通して、地域や社会のさまざまな人や出来事に触れて、視野や選択肢が広がる人が増えるといいな。

——森ノオトの“人”からもらう影響を、私も感じます。今年初の編集会議で決めた1年の目標を、私は「ギターを弾く」にしたんですけど、森ノオトの中でなければ、ちょっと照れくさくて言えなかったかも……。森ノオトのみなさんなら、面白がってくれるんじゃないかなって思えたんです。

そうそう!そんなコミュニティのよさは、記事に表れてくると思うんです。誰かに評価されるわけでも、(無理に)賛同するでもなくて。自分らしくいられて、「思うことをこの場なら言える」と思ってもらえることが、大切だと考えています。
コロナ禍まっただ中の時も、オンラインで続けてきた編集会議で「ここでなら自分の思いを話せる」とライターさんが参加してくれたことは心に残っています。

——あゆみさんにとって、森ノオトがあることで起きた変化はありますか?

森ノオトで関わる人みんなのことが好きです。ライターのみんなも、一緒に働く仲間も。摩擦が生まれるときもあるけれど、みんなのことを尊敬しているし、お互いをリスペクトし合えている。こうして愛着を持てる人たちがそばにいることが、とても幸せだなと思えます。

編集部スタッフのみかちゃん(佐藤美加さん)が、去年から短歌を詠み始めて輝いている。私との会話に背中を押されて、短歌を始めたと伝えてくれて、それを聞いた時、私は人とこういう関わり方をしたかったんだと思えたの。背中を押して、その人が輝くのを後押ししたい。励まし、励まされる、そういう輪が広がっていけばいいなと思っています。

——森ノオトのこれから、思い描くことはありますか?

メディアとしての森ノオトができることは、記事にして地域に光を当てること。さまざまな人が書き手として活動しやすい場所に森ノオトがなれば、感性や視点が増えて、地域により多くの光が当たると思います。
森ノオトの記事が、誰かの心にストックされて、何かの行動につながる。そんな打率を上げていくには、当てられる光を増やしていくことも大切なんじゃないかと考えています。

まちに書ける人をもっと増やして、森ノオトを見れば地域の色んな専門をもった人たちの記事が読める、そんなメディアになっていったら面白いなと思います!
書く立場になる人が増えれば、自分たちのメディアだと身近に思えて、より多くの人に森ノオトを支えてもらえるんじゃないかなと。

そして、記事を書くのが“普通の人”であることも森ノオトの魅力。モヤモヤして言葉にできないことを抱えているそれぞれの人が、取材をして記事を書くことで、自分の中で何か腑に落ちたり、新しい考え方に気づいたり、関係性につながったりする。普通の人の集合体が、もっと輝くといいな。

インタビューは鴨志田町の森ノオトの事務所にて。新しい年が始まって間もない、キリッとした冬の日に

(おわりに)
「毎日がカラフルに」「お互いの言葉が響き合う」「地域の心強いつながり」……。
1年間、属性さまざまな森ノオトに関わる方々に、お話を聞かせていただきました。語る人それぞれの角度から森ノオトを表現していただく時間は、約2年前から活動に参加した私にとって身が引き締まると同時に、“森ノオトのこれから”に私は何ができるか思いをめぐらせる経験でした。

あゆみさんが話してくれた、新しくてしなやかなメディアの形。みんなでつくり合うプラットホームに森ノオトがなれたら、どんな心踊るものが生まれるのだろう。励まし、励まされる関係を力に、私ができることを続けていきたいと思います。

(文・佐藤沙織)

10周年寄付キャンペーンでは、たくさんの応援を誠にありがとうございました!ウェブメディア「森ノオト」は、横浜市青葉区を拠点に、市民が書き手となって地域の暮らしが豊かになる記事を発信しています。森ノオトの記事に共感してくださる方の寄付での運営を目指しています。マンスリーサポーター(月々500円〜)、単発寄付を募集しています。応援どうぞよろしくお願いします。
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