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“本×喫茶”体験ができる「文喫 栄」の店長に聞く、新たな読書の嗜み方

こんにちは。エディマートの織茂です。
エディマート読書部の記事では、毎週社員がおすすめする本のレビューをご紹介していますが、今回はいつもとはひと味違った内容をお届けします。

突然ですが、みなさんは普段どのように読書を楽しんでいますか?
寝る前に寝室で、通勤通学の移動中に、静かな図書館で、コーヒーと一緒にカフェで…。本好きの方なら、自分が一番読書に集中できるシチュエーションが思い浮かぶのではないでしょうか。

慣れ親しんだ環境で読書をするのも良いですが、たまに変えてみると意外に集中できたり、気分転換になったりと新しい発見があるかもしれません。

そんな新しい読書の嗜み方を提案してくれる本屋が、今年4月に名古屋・栄の中日ビルにオープンしました。東京と福岡に続き全国で3店舗目となる「文喫 栄」は、名古屋に根付く喫茶文化と本屋を融合させた空間を提供します。

エディマート読書部は、名古屋のニュースポットである「文喫 栄」の魅力をさらに深掘りすべく、店長の棚橋美穂さんにお話を伺いました。

<プロフィール>
文喫 栄 店長
棚橋 美穂さん

東京都出身。2018年に日本出版販売株式会社に新卒入社し、経営企画室にてマネジメント案件や新規事業開発を担当。現在は「文喫 栄」の店長として、店舗のプロジェクトマネジメントを行う。


「文喫 栄」オープンに向けてイチから携わり店長へ

日本出版販売株式会社(略称:日販)の子会社である株式会社ひらくが運営する「文喫 栄」が名古屋・栄にオープン。日販とは出版社から本を仕入れて書店に卸す、「出版取次業」をメイン事業とする会社です。

店長の棚橋美穂さんは新卒で日販へ入社し、経営企画や文喫の各店舗のサポートなどを経て、「文喫 栄」の店長に就任したそう。そもそも棚橋さんが日販に入社した理由は、「自分の好きなものに関わりたい」という気持ちがあったから。小中学生の頃は学校帰りに図書館へ立ち寄り、上限貸し出し冊数まで借りていたほど本好きだったとのことです。

大人になった今でも本は、「日々の忙しさにちょっとした手助けをしてくれるもの」と日常にそっと寄り添ってくれる存在だと言います。また、国内外問わず旅先でも本屋を訪ねるそうで、「その土地の特徴が出ていて面白いんです」と本好きならではの楽しみ方を話します。

「文喫 栄」のプロジェクトメンバーとして企画からオープン、運営に至るまでを支えてきた棚橋さん。「全国的に本屋が減っているのと出版業界の売り上げが落ち込む中で、新しい本屋が誕生するという前向きな取り組みを、みなさんに受け入れていただけたら嬉しいです」と業界を盛り上げていきたいという気持ちを明かしてくれました。

本屋と大喫茶ホールを融合させた4つのエリアを展開

「文喫 栄」は“本屋と大喫茶ホール”をテーマに、名古屋の喫茶文化を体験しながら本と出会える場所です。”喫茶”というテーマは、悩みに悩んでオープンの約半年前に決まったそう。本や雑貨などの販売をする本屋エリアと有料の大喫茶ホールエリアで分かれた店内。4つの空間で構成される大喫茶ホールエリアは、「特色の異なる喫茶店が一堂に会した本屋」がコンセプトです。それぞれ違うジャンルの本が置かれていて、座ってくつろげるスペースも設置されているので、お客さんは思い思いに読書を楽しむことができます。

店内に陳列されている本は、すべてブックディレクターが空間に合わせて選書したもので、4つのエリアの本を合計すると…なんと3万冊にものぼります。今回は、エリアごとに並んでいる本の特徴やおすすめの読書の嗜み方を教えていただきました。

本の世界にどっぷり浸れる「嘴広鸛(ハシビロコウ)」

「嘴広鸛」は、ゆったりとした音楽と時間が流れるジャズ喫茶のような雰囲気です。照明も温もりあふれる暖色で、本の世界に没頭できそうな一人掛けのソファやイスが並びます。

「贅沢な空間でコーヒーを傍らに腰を据えて読んでいただきたい文学や哲学、自然科学といった本を置いております。お喋りを控えていただくエリアですので、静かな空間でお好きな本にどっぷり浸っていただければ」と棚橋さん。ちなみに「ハシビロコウ」はじっと動かない鳥として有名で、エリアでの過ごし方とマッチしていることから名付けられたそうです。

読書と喫茶メニューを堪能できる「セントラルサニー」

どこか懐かしさを感じる「セントラルサニー」ではフリードリンクに加え、「文喫 栄」オリジナルのキーマカレーやナポリタン、サンドウィッチなどの喫茶メニューを楽しめます。さらに、午前11時まではモーニングのサービスも利用できるんです。

じっくり読むだけが本の楽しみ方ではないと思うので、本を見ながらご家族やご友人同士でお喋りをして過ごしていただければと考えております。そのため、会話のきっかけになるような暮らしや旅、絵本などのジャンルを多くご用意していますよ」と話します。名古屋にまつわる本もそろっているので、モーニングを味わいながら名古屋観光のプランを立てて、文喫から観光出発!という活用もできます。

期間限定グルメとかわいい空間に気分高まる「COFFE(コッフェ)」

「セントラルサニー」とは印象がガラリと変わり、一面ピンク色でかわいらしいカフェ空間が広がるPOPUPスタンド「COFFE」。こちらのエリアでも、明るい雰囲気につられて会話が弾みそうです。「COFFE」の本棚には、おしゃれなビジュアル系の写真集やアートの本などが並んでいます。POPUPスタンドには、期間限定でさまざまな飲食店が出店するため、読書に加えてグルメも楽しみたい方は必見ですよ。現在は、愛知県岡崎市のコーヒースタンド「TERAKADO COFFEE」が出店中。やきたてクレープやコーヒーが味わえます。

アイデア発想のヒントをくれる本がずらりと並ぶ「DENGEN」

「DENGEN」のエリアは、仕事や勉強に最適なコワーキングカフェのような空間です。ビジネスに関する経済やデザインの本などが並び、棚橋さんによると「インスピレーションを得たいときや調べ物をしたいとき、ちょっとした息抜きしたいときにぴったりの本が見つかるはず」とのことです。

「文喫 栄」で読める店長おすすめの本たち

これほど店内が充実していると、本好きの方はもちろん、普段読書をしない方でも自然と興味が湧いてくるのではないでしょうか。各エリアで共通している工夫について、棚橋さんは「いろいろな方を受け入れたいという想いがありまして、なるべくたくさんの本を取りそろえています」と専門書だけではなく、読書習慣がない方でも手に取りやすい本が多く置いてあると言います。

そこで今回は、約3万冊ある中から「文喫 栄」のおすすめ本を棚橋さんにピックアップしていただきました。

おすすめ①”文喫 栄らしい”一冊で名古屋の喫茶文化を知る

1冊目に選んでいただいたのは、『純喫茶とあまいもの 名古屋編(誠文堂新光社╱難波里奈)』です。「文喫 栄」らしい本で一番に思いついたとのことで、「名古屋の素敵な喫茶店が紹介されていまして、文喫でこちらの本を読み、文喫から街に繰り出すという使い方をしていただければと思っています。あとは、すごく良い本なのでおすすめしたいなと思い選びました」と棚橋さん。「セントラルサニー」と本屋エリアに置いてあるので、名古屋の純喫茶を探すのにぜひ役立ててくださいね。

おすすめ②店内の空間レイアウトの参考にした一冊

次のおすすめ本は、「DENGEN」のエリアに置いてある『本のある空間採集: 個人書店・私設図書館・ブックカフェの寸法(学芸出版社╱政木哲也)』。以前から棚橋さんが推している本だそうで、個人経営の本屋やブックカフェなど、国内のさまざまな本のある空間のレイアウトを図とともにまとめた内容となっています。棚橋さんは、「実は『文喫 栄』の参考にしていまして、もしかすると文喫の空間レイアウトのヒミツが詰まっているかもしれません」と話します。

おすすめ③文喫で読んだお気に入りの一冊を自分のご褒美に

最後に紹介していただいたのは、『世界でいちばん美しい皿の図鑑原書房╱シャックス・リーグラー)』です。こちらは「セントラルサニー」に置いてあり、19、20世紀を代表する世界の有名窯の歴史や、813枚のお皿を写真で解説している本です。

「少し値段が高く6,000円くらいしまして、買うにはなかなか勇気がいるかと思いますが、写真がすごくきれいでお皿のサイズ感もわかりやすいのが魅力です。『文喫 栄』でじっくり見ていただき、気に入っていただけたら持ち帰ろうという選択もできます」と本を熟読してから購入できるという文喫の特長を教えてくれました。

読書の自由を尊重し、街に末永く残る本屋を運営していく

棚橋さんに“読書×喫茶“体験を提供する側として接客の際に意識していることを尋ねると、「お客さま自身に合った使い方をしていただきたいので、あえてこちらで行動を制限するようなことはしたくないです」との答えが。

自然と目的が分かれるような空間構成になっているため、「ルールさえ守っていただければ、自由に読書を楽しんでいただきたいです」と言います。

最後に今後の展望について、「『文喫 栄』を街に末永く残していくために、この場所でお客さまと一緒に良い店をつくって、営業を続けていきたいというのが一番の目標ですね。何度訪れても楽しめるようイベントを開催したり、定期的に売り場をアップデートしたりしています。本にあまり興味がない方や久しく読書をしていない方でも満足していただける本屋にしているので、多くの方にご来店いただきたいです」と想いを語っていただきました。

「文喫 栄」では本好きの方はもちろん、本にあまり興味のない方でも気軽に参加できるイベントを随時開催しています
7月以降は、一人ひとりに合わせた本をクレオパトラブックスのクレオさんが選んでくれる「クレオパトラブックス 文喫サロンin栄」(7月24日)や、本の刊行を記念したトークイベント「ロシア文学とユートピア的想像」(8月3日)などを開催予定とのこと。
詳細は、公式サイトをチェック!

終わりに

名古屋に新たに誕生した「文喫 栄」には、本に囲まれた空間で読書をする楽しさや本との出会いをそっと後押ししてくれるような工夫が随所に施されていると感じました。記事を読んでいただいた上で「文喫 栄」へ足を運べば、「読書ってもっと自由でいいんだ」と読書の奥深さをより一層実感できるはず。本が好きな方、そうでない方もぜひ訪れてみて、自分なりの読書の嗜み方や過ごし方を探してみてくださいね。

写真:スタジオアッシュ(太田昌宏)

╲「文喫 栄」のインタビュー動画もYouTubeチャンネルにて公開中!╱


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