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阪神間でチーズに溺れたいなら新在家の「アンジョリーノ」さんに駆け込むべき

イタリアで通っていたチーズ屋さんのこと

 イタリアのなにが一番恋しいかっていうと、市場。
 血縁者も友だちもいない場所へ来たばかりの、カタコトのイタリア語だけ握りしめたひとりぼっちの留学生が話しかけてもらえる場所なんて、学校を出たらお買い物をするときぐらいだったので、幸いにも下宿から徒歩圏内にあった市場に通い詰めました。
 ご店主の皆さまは小まめに顔を出す顧客を得られてハッピー、寂しくて気が変になりそうだった私は人間と話せてハッピー、学校の先生も教え子の語学力が向上してハッピー。三方良しです。

 なかでもお世話になったお店のひとつがチーズ屋さんでした。
 本場のモッツァレラが美味しいことは知ってる――くらいの知識レベルでイタリアに乗り込んだもので、最初はあんまり興味を持っていなかったんですが、お総菜屋さんのお婆ちゃんに「これはお隣でチーズを買って一緒に食べなさいね」と言われ、初めて足を踏み入れたチーズ専門店で圧倒されました。
 なんかめっちゃ難しそう。
 ガラスケースのなかにずらっと並んでいる物体のほとんどがチーズであることは理解できたんですけど、どれを買えばいいのかわからない。やべぇ、心の準備なしで異文化のドアを新しく開けてしまった。この領域は広大だぞ、どうする……ひとりではどうにもならない――とたじろいだところに、奥からのっそりと現れて「こんにちは、ようこそ」と礼儀正しく挨拶してくれたご店主のパリッと糊のきいた清潔な白衣の眩しかったこと。めちゃくちゃかっこよかったのを鮮やかに覚えています。ほっそり長身で眠そうな目つきをした、ちょっと素っ気なくてせっかちなおじさんでした。
 このチーズ屋のご店主が「なにが欲しんです?このピクルスと合うチーズはどれかって?甘いのと塩っぽいのどっちが好み?分かんない?じゃあ、これ食べてみて、次こっち。どっちが好きだった?次はこれ……」と、チーズ世界の歩き方を教えてくださったおかげで、イタリア滞在中にめっちゃ太りました。今なら言える、私の好きなチーズはタレッジョです。

神戸市灘区で通いたいチーズ屋さんのこと

 そして帰国。帰国すると和食がおいしい。日本的な洋食も美味しいし、日本的な中華も美味しい。イタリアのパンも美味しかったけど、日本のパンも別方向に美味しいからまぁいいや。だけどチーズだけはなんか不満。百貨店の地下やお高いスーパーに行けばいろいろ売ってはいるんだけれど、なんかちょっとコレジャナイと思ってしまって、首を傾げておりました。

神戸市灘区、阪神新在家駅から徒歩10分。
 チーズ専門店「アンジョリーノ」さんを見つけるまでは!

 近所に用事があった用事が終わり、初めて降りた駅だからとうろうろ歩いていたとき、ふとチーズ専門店という文字を見つけて入ってみたのですが、これはイタリアに呼ばれたと考えても差支えがないと思います。

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すごい量のチーズ。総量を計算してみたくなりました。インテリアもなんかそれっぽい感じ。また店内空間に商品数にふさわしい広さがあるので、たくさんのモノに囲まれたときに感じがちな圧迫感がなく、居心地がいいのもすてきだと思いました。レストランも併設してるからでしょうか。ゆったりとした雰囲気があり、じっくりお買い物ができました。

 そしてなにより、お店の方々がいい。
 日本って黙って入店して必要なときだけ店員さんに口を利くお買い物スタイルが一般的だと思うのですが、イタリアの専門店で一番最初にすることは挨拶なんですよね。アンジョリーノさんがそういう方針で店員さんを教育されているのかは存じ上げないんですけれど、この日に店番をしてくださったバイトの方が、ドアを押し開けたときに「こんにちはー」と声をかけてくださったのが、期待値を爆上げしました。
 あとでご店主の方も接客に出てきてくださったんですけれど、この方がすごい。フランスチーズ鑑評騎士のタイトルをお持ちだとのことで、こりゃあイタリアでよくある感じの接客が、ご店主さんからバイトさんに受け継がれてるんだなぁとひとり合点いたしました。対話力がすごい。

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 こんなチーズを探していますと自分から宣言できない人でも、ああですよね、こうですよね、それならこういうのがお好きかも……と、気持ちよく情報を引き出して提案してくださるこの手腕、イタリアの市場でお世話になったやつそっくりだ!(アンジョリーノさんの方が優しい)

 私はタレッジョが食べたかったので、タレッジョを買って帰ったのですが、おもしろいチーズが山ほどあったので、まだチーズの好みが定まっていない方は、ぜひアンジョリーノさんで自分向きのチーズの味を探ってみると楽しいのではないでしょうか。本当にいろんな文化圏のいろんなチーズが用意されているので、Yes/Noで質問に答えていって「あなたはタイプA!」みたいな結論にたどり着くような心理テストが好きな方には、とくにオススメです。
 がつんと旨みのあるオトナなチーズから、お子さまをにこにこ笑顔にできそうなフルーツ入りのチーズまで、こんなチーズがあったのかというような驚きにワクワクするのもいいですし、あとは「これカートゥーンでネズミが齧ってるチーズだ……」と憧れの王道を見つけに行くのも楽しそうです。

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 そして忘れちゃいけいないジェラート
 アンジョリーノさんのレストランスペースでいただいたんですが、これがめちゃくちゃ美味しかった!リコッタという、よくイタリアのお菓子に入っているチーズのジェラートがあるとのことで、お昼ごはん前だというのに間食してしまいました。後悔はかけらもありません。食べてよかった。おいしかった。
 次はランチを食べに行かなくてはなるまい。写真にもちょっと写っていますが、木目の美しい長テーブルがど~んと置いてあって、週末や祝日があると集まって食事をするイタリアの友人家族のことが思い出され、ほっこりいたしました。

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 ちなみにチーズ以外の商品も充実していました。
 とくによかったのが加工肉。チーズもそうなのですが、少量から購入することができるように工夫されているので、クセの強そうな食材にも果敢にアタックしていくことができそうです。

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