スタートアップ市場調査:再生医療編
いつもイークラウドのnoteをご覧いただきありがとうございます。
イークラウドではサービス開始以来、株式投資型クラウドファンディングを通して20案件以上のご紹介をしてまいりました。ご支援先の事業領域も幅広く、オンラインのカタログギフトからはじまり、D2C、SaaS、Femtech、培養肉、クラフトビール、ドローン、VR、AIで事業を営むスタートアップ企業のご支援をしてまいりました。
これからも、多種多様なスタートアップ企業をご支援していきたいと思っております。
毎回イークラウドではご支援するスタートアップ企業の事業領域を深堀しながら、その企業のご紹介のストーリーを考えていますが、今回は弊社のインターンの前田が、今後イークラウドでご紹介していきたい特定の業界に関する市場の動向や注目のスタートアップ、その業界でECFを実施したスタートアップなどを調査しました。
本記事では、「再生医療」をテーマとし、調査しました。
「再生医療の市場はどんなもの?」
「再生医療領域における上場企業・スタートアップ企業」
「大型調達が必要な再生医療領域のスタートアップ企業においての、株式投資型クラウドファンディングの活用事例」
などの疑問に少しでもお答えするような記事になれば幸いです。
*本記事は、1ドル=136円(*2023年5月17日)のレートで計算しています。
■再生医療とは?
人工的に培養した幹細胞などを使って損傷した臓器や組織を再生する医療
日本再生医療学会が提示している再生医療の定義は、「“機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器に対して、細胞を積極的に利用して、その機能の再生をはかるもの”」とされています。
再生細胞に関する研究は、主に1950年以降から始まり、羊のドリーで有名な核移植でのクローン作製や、複数の身体に分化可能な多能性幹細胞であるES細胞などが行われてきました。そして、2012年にノーベル賞を受賞された京都大学の山中教授のチームが作製した「iPS細胞」の登場により、医療への実用化が加速したと言われている領域になります。
日本では、2007年にJ-TEC社の自家培養表皮ジェイスが初めて薬事承認されました。
■再生医療の市場について
2030年には、世界で10兆円を超える可能性を秘めた市場
PRECEDENCE RESEACHが2023年に出した市場報告書では、2022年の世界市場規模は$24.24B(約3.3兆円)、年平均成長率は22.8%。2030年には$125.54B(約17兆円)に到達すると予測しています。2022年の世界市場の$24.24B(約3.3兆円)の内、米国が約半分にあたる$11.13B(約1.5兆円)を占めており、大きな市場を形成しています。
また、2030年に向けた最大規模の市場も米国であり、最も急成長していく市場は東南アジアという報告がされています。
また、日本のAMED(日本医療研究開発機構)が2019年に出した市場調査においては、2030年の世界市場は7兆4830億円になるとの報告がありました。
PRECEDENCE RESEACHで先述した世界市場予測とは2倍の差はありますが、7年後の2030年には、10兆円前後の世界市場規模予測がされています。
世界の疾患別に見ると、2030年では、”ガン”が約40%を占めると言われており、”内分泌・代謝”、”眼”の領域が続いていきます。
また、国内の市場では、2030年に約8500億円の市場規模に到達すると報告されています。国内の疾患別に見ると、2030年では、”ガン”が約60%を占めると言われており、”眼”、”内分泌・代謝”の領域が続いていきます。
詳しい世界市場の動向を見たいという方は、出典に記載しています2019年のAMEDの資料をご覧いただけると、より理解が深まると思います。
■再生医療医薬品の現在
日本では、17個の再生医療等製品が国内で承認されている
世界では、2023年の現在までに30個以上の再生医療医薬品が薬事承認されており、皮膚の再生シートや点滴薬など、幅広い種類が存在します。日本では、2007年にJ-TEC社の自家培養表皮ジェイスが初めて薬事承認され、2023年5月までに日本国内では17個の再生医療等製品が承認されてきました。
(出典:Approved Cellular and Gene Therapy Products)
(出典:How Do Cell & Gene Therapy Requirements Differ Between FDA & EMA?)
また、2014年11月に日本で医療品医療機器法が施行されました。これにより、ヒトの細胞に培養等の加工を施した再生医療等製品においては、その有効性が推定され、安全性が確認された場合には、当局の判断によって条件及び期限を付して、早期に承認可能となりました。
再生医療等製品は3種類に分類されている
再生医療等の迅速かつ安全な提供等を図ることを目的とし、2013年5月に施行された再生医療等安全性確保法により、生命や健康に与える影響の程度に応じ、3種類の分類が行われました。
■再生医療関連の上場企業
再生医療関連では、様々な企業が既に上場しています。
ここでは、3社ほど取り挙げていきたいと思います。
①(株)ジャパン・ ティッシュ・エンジニ アリング
②セルソース(株)
➂(株)サイフューズ
■再生医療のスタートアップ *非上場
上場していない再生医療関連のスタートアップも国内には100以上存在します。ここでは、3社ほど取り挙げていきたいと思います。
①(株)ケイファーマ
②iHeart Japan(株)
➂ネクスジェン(株)
以下の資料に、既に上場している企業も含む、主要な再生医療関連ベンチャー企業が記載されていますので、気になる方はこちらをご覧ください。
■再生医療関連の創業まもないスタートアップ(創業3年以内)
再生医療関連企業をリサーチしている中で、筆者自身が気になった、創業してから3年以内の再生医療ベンチャーもいくつか紹介していきたいとも思います。
①(株)Dioserve
②(株)Gaudi Clinical
➂(株)Vetanic
■株式投資型クラウドファンディングで調達した再生医療関連スタートアップ
FibroBiologics.inc
713人の投資家から調達可能限度額の$5Mドルを調達
2023年1月に、アメリカ発の株式投資型クラウドファンディングプラットフォームStartEngineより、718人の投資家からアメリカの株式投資型クラウドファンディングの調達可能限度額となる$5M(約6億8000万円)を調達しました。
(出典:FibroBiologics Quickly Raises $5 Million StartEngine)
株式投資型クラウドファンディングでの調達は、研究費と事業運営が目的
今回の株式投資型クラウドファンディング実施理由に関しては、インタビュー記事で同社は、株式投資型クラウドファンディングの目的は「この資金は、当社の継続的な事業運営を支援し、多発性硬化症、椎間板変性症、創傷治療、延命治療、がんに関する臨床プログラムを推進するために使用される予定」と回答しています。
同社は株式投資型クラウドファンディングの前に民間の投資会社から$100M(136億円)の調達を受けており、同社のメインプロダクトであるCybroCellが、2023年現在PhaseⅠ(少数の健康な人を対象とした、医薬品の最初の試験)の医薬品試験まで到達しており、数年後の上市を見据えていることからも、市場への広報の目的を含めた株式投資型クラウドファンディングでの調達であるとも考えられるのではないでしょうか?
(出典:Our product Pipeline)
■まとめ
再生医療分野の企業数は、2010年以降から世界中で急激に増え始え、再生医療医薬品の上市数も年々増加傾向にあります。
医療医薬品領域の中では、抗体医薬品や遺伝子医薬品などと共に、上昇トレンドになっていくと予想されます。
国内企業を中心としたリサーチによる情報になりますが、今まで大学の研究機関で行われていた研究内容や、大手創薬関連企業が持つ事業部門からのアウトカーブにより、再生医療スタートアップの起業に至るケースが多く見られました。
資金調達においては、シード期の段階で、日本国内では数億円、世界では数十億円の例も近年多くあり、創業初期から大規模な資金を必要とする企業が多く見られます。
そして、再生医療を含むディープテックと呼ばれる領域は、一般市場に実用化され、認知されていくまでに、時間がかかると言われています。何年にも渡る開発の中で、失敗に至るケースも少なくはありません。それでも、世界の当たり前を書き換えていく可能性を大きく秘めている領域でもあります。
日本の株式投資型クラウドファンディングの調達は1年間で1億円未満が上限となっておりますが、与党内で上限金額の引き上げも議論されており、そのようになれば日本において再生医療を含め、ディープテック領域の企業でも株式投資型クラウドファンディングの活用が増えていくかもしれません。
今回リサーチしたスタートアップ企業が、世界を変え続けている未来が楽しみで仕方ありません!
イークラウドでは再生医療業界のスタートアップも積極的にご支援しています。
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