見出し画像

ポストコロナの世界観~変容する世界と社会5 10年後の世界

1.後ずさりするグローバリズム(現在~3年後)
2.経済のニューノーマル
3.変容する社会と個人
4.各国政府の取り組み方向性

10年後の世界~停滞し内向く世界

ポストコロナ10年後の世界は、景気回復が進まず各国が内向きとなる時代となりそうだ。失業問題は片付かないどころか、世界の変化に対応がおいつかない国や人々が更に不満を募らせる緊張をはらんだ社会になる。他方、インターネットが知的インフラとして信任を得るための仕組みや工夫が加えられ、新たな政治システムとして機能しはじめるかもしれない。

(1)バイラテラリズムとユニラテラリズムの世界へ
グローバリズムは退行期に入っている。世界は超大国(米中)+主要国がそれぞれの思惑で行動するまとまりのない状況となる。

米中対立は継続するが、総じて緩やかな対立に終始する。米国陣営(米・日・インド・豪州・英国)はチャイナ・コンテインメント(中国封じ込め)的なスタンスを強めるもかつての米ソ対立のレベルには至らず。中国は一帯一路的な勢力圏拡大戦略を継続するが、水面下で米国陣営との妥協と共存を模索、鄧小平時代の韜光養晦(とうこうようかい)政策への立ち戻りを検討。米中間の貿易量は増えもしないが減りもしない。

国際機関はリーダーシップを発揮できず、ひたすら漂流の後、途上国の代弁者的なポジションに収まる。世界はブロック経済化には至らないものの、バイラテラリズム(二国間主義)が潮流となり、WTOに持ち込まれる二国間貿易紛争が急増するも紛争処理が進まず、マルチラテラリズムの推進役たるWTOは苦境に立たされる。

日本は従来通り日米同盟の枠組みの中で動かざるを得ず、朝鮮半島対応を含め独自性を発揮しにくい。国際機関が機能不全に陥る中、米中の狭間でこれまで以上に難しい立ち位置が続くだろう。

(2)止まらぬ格差拡大
失業者層・貧困層の固定化が進み、富の格差は拡大する。同時並行的に教育格差・ITリテラシー格差も拡大して、貧富の差を増幅する。失業者層・貧困層の不満蓄積を解決もできず、さりとて無視もできない各国政府は、勢い、ポピュリズム的対応(バラマキ等)に終始する。結果として財政収支の悪化に拍車がかかる。

格差は先進国と途上国の間でも拡大。特にアフリカを中心とした後発開発途上国はウイルス禍から立ち直れない上に先進国からの援助も先細りとなり貧窮化、かつてない困難な時代を迎える。

(3)国際的緊張の常態化
地政学的な緊張は各地で高まる。米中対立継続に伴う代理戦争的な地域紛争がアフリカ、中央アジア、中米等で頻発する懸念がある。また、ISの流れをくむイスラム過激派組織も活発化、原油価格低迷に起因する産油国経済の不調もあり中東情勢はさらに不穏化。

EUでもポストコロナの対応をめぐって主要国の意見の不一致が生じて求心力低下が進行。英国のEU離脱に続く加盟国離脱が生じる可能性もある。

東アジア情勢としては、米中対立の余波にて朝鮮半島、南シナ海、台湾海峡、東シナ海の緊張状態が継続。

(4)戦略物資・技術・資源の囲い込み
各国間ですでに新型コロナ治療薬およびワクチンの開発競争が激化しているが、ポストコロナの世界では、各国のウイルス関連技術や医療資機材の「囲い込み」の動きが続く上、さらに、国際的な緊張の常態化を背景に、囲い込みの対象が戦略物資全般・技術・資源へと拡大していく懸念がある。

(5)人種差別
あまり考えたくないがアンチチャイナのコンテクストで確実に強まるだろう。少なくとも今後2~3年はアジア人は欧米で非常に生活していきにくくなる。海外旅行は暫くお預けだ。立場を変えれば我々も同じ。日本が外国人・中国人に対して決してそうならないように気を付けなければ。

(6)インターネット・シチズンシップ
グローバル・シチズンシップ(地球市民としての意識、権利、行動)にかわって「インターネット・シチズンシップ」が出現するというのが個人的な持論。ソーシャルメディア等を通じた健全な世論形成がグローバリズムにかわって各国政府に正しい影響を与えていくとの期待感を持っている。


(次回)

6.成長するビジネス・生き残るビジネス・消滅するビジネス

今後伸びるビジネス、廃れるビジネスを大胆予測してみた。


(最終回)

7.そして人々の暮らし、われわれの暮らし

10年後のわれわれの暮らしの様子を近未来小説風に描いてみた。
(5月1日公開予定)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?