見出し画像

ゲーム

女は、毎夜夢を見た。

女は夢と勝負していた。

その日は、好きなウイスキーをロックで5杯飲んで横になった。

夢の中でも、女はいつもと同じスコッチを飲んでいる。

そのグラスの他に
テーブルにはペンとナイフが置いてあり、

女は何かを選ばなくてはいけないと、追い詰められている。

おそるおそる女はペンを手に取る。

すると夢の中の女はいーいーいーいーと甲高い声で笑い出し、

「ペンは、剣よりも強しぃ」

と叫んで、反対の手首にペンを突き刺す。

すると刺した部分から、ずわ、と蟻の大群が吹き出し、

女はみるみるうちに体を真っ黒に覆い尽くされ、

息絶える。

ゲームオーバー。

夢の中で自分が死んだら負け。生き残ったら勝ちだ。

今のところ、0勝28敗。

その日飲んだウイスキーは10杯。

夢の中でもやはり飲んでいる。

いつものように、ペンとナイフ。

今日は、ナイフだ。

女は腹を抱えてひい、ひい、と笑い、
そのあとすぐに真顔になり、

「ナイフは切るもの」

と目玉を一突き。

そのまままっすぐに口まで切り裂くと、

中からばあああと鳴きながら
脳髄をくわえた血まみれの黒猫が飛び出してきて、

ゲームオーバー。

これで0勝29敗。

その日飲んだウイスキーは20杯。

テーブルの上にはグラスと、ペンとナイフ。

これまでどちらを選んだって、負けだった。

ならば、どうする?

どちらも選ばない。

それとも、どちらも?

ひとまず、グラスのウイスキーを飲み干した。

よし、今日は、どちらも選ばない。

すると、女の中から声がした。

あああああああああああああああ!

「どちらも選べない、頭の悪いお前に、両方、プレゼントします」

ペンでこめかみに穴を開け、

ナイフで、心臓を。

勢いよく真っ赤な血が、噴出した。

女は笑いながら、息絶えた。

ゲームオーバー。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?