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#007 観光人材のリクルーティングのポイントとは?

自治体からの派遣でDMOで働くようになり、もうすぐ、9か月が経過しようとしている。地域の舵取り役としてDMOが観光で稼ぐ事業者を支援するには、私を含めスタッフのレベルアップが欠かせない。また、DMOの体制強化の際は、併せて、新しい仲間を増やしていくことも必要だ。ただ、地方ほど人手不足は深刻で、単に、公募しても、優秀な人材が集まるわけではない。先日、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下斉さんに音声メディアVoicyを通じて、観光人材を確保する際のポイントを伺った。


木下斉さんからのアドバイス

人材募集には段階がある。いきなり、公募しても良い人は来ない。公募は私と誰か付き合ってくださいというもの。これは、どの会社のリクルーティングでも共通である。第1フェーズは、来てほしい人にとって魅力的な組織になること(面白いことをやること)、第2フェーズは、組織の情報を発信すること、第3フェーズは人材プールをつくることである。人材プールを形成しないと、組織を伸ばすレベルの人は来ない。プロセスを踏むことなく、公募してもどうにもならない。そのあたりの戦略をつくる必要がある。マーケティング人材を呼ぶにも、マーケティング力が必要である。

第1フェーズ 来てほしい人にとって魅力的な組織になる

全国のDMOのように、自治体や旅行会社からの寄せ集めの組織では、いい人が集まらない。誰もリスクを負いたくないから、既存の組織で人を出し合ってどうにかDMOを支えましょうという話になる。そのような中、仮に、プロパーを募集しても、働きづらい職場と思われる。派遣で来ている周りの人が、所属組織の論理を優先することになる。やっている事業も凡庸な事業ばかりだと、期待されない。優れた人から見て、自分が行ったら、めちゃくちゃ面白いと思ってもらえるような事業をするなど、魅力的な組織になる必要がある。

第2フェーズ 組織の情報を発信する

DMOのファンやその情報に触れてくれる人の確保のためには、DMOの組織についての情報発信が欠かせない。観光分野の人は、優良DMOがどこかわかるが、一般の人には知られていない。ほとんどのDMOは観光客に向けたプロモーションにお金を使うが、リクルーティングのための情報発信をしていない。将来の雇用に向け、DMOに興味を持ってもらうため、noteを書くことも重要。また、観光系の雑誌の識者に、DMOで働くことの魅力を知ってもらうことも大切である。

第3フェーズ 人材プールをつくる(育てる)

第1、第2フェーズを経て、人材プールを形成できれば、公募も機能する。それをやらずに公募は機能しない。

例えば、お風呂カフェをしている人で、サウナやグランピング等のイベントを通じて、若い人とのコンタクトポイントを持っている人がいる。すると、3、4年後に就職したいと言って来る人がいる。供給制約の時代は、従業員をいかに探すかが重要。

インバウンド誘客に向けた人材プールをつくるとすれば、台湾などのターゲット国の旅行会社向けの人材プールをつくるのも一手である。現地のマーケティングは現地の旅行会社の方が得意である。日本の観光に取り組んでいる台湾人や韓国人などを大事にすることも重要である。

公募の注意点

実績を問うような公募は注意が必要。日本の観光業のほとんどが国内観光である。国内観光の実績があるベテランを雇ったとしても、そのDMOのターゲットがインバウンドの場合は機能しない。

特に、行政や旅行会社からの派遣者で構成されるDMOの場合は、組織にパラサイトしようと考え、応募する人が現れる場合があるので注意が必要である。

【参考】さらに深堀りされた木下さんのnoteもご覧ください。

アドバイスを受けて

マーケティング・マネジメント等の専門性を有する人材の確保にむけては、観光庁の人材マッチングの制度や人脈等を活用した営業を検討していた。が、そもそも、DMO自体を魅力的な組織にするという視点は欠けていた。言われるまで、気づいていなかったが、言われてみれば、当たり前のことだ。そもそも組織に魅力がないのに、優秀な人を欲しがるのは虫が良すぎる。

魅力的な組織とは?

では、魅力的な組織とはどういう組織か。以下、私のひとりブレインストーミングの結果である。

  • 地域・社会に貢献できる(人生の貴重な時間を使うに値する仕事ができる)

  • 組織内外の関係者に貢献できる

  • やりがいを感じる事業(仕事)がある

  • 自分の能力(強み)を生かせる

  • 没頭できる(わくわくできる)

  • 仕事を通して成長できる

  • 休みを取りやすい

  • ライフワークバランスについて自己決定権がある(家庭に重きを置くか、仕事に重きを置くか自分で決められる)

  • 職場の雰囲気がいい

  • なんかかっこいい

DMOは十分に魅力的な組織になれるポテンシャルを持っている。まずは、組織のビジョン・ミッション・バリューなど、青臭い議論をスタッフ間で実施したい。また、一番下の「なんかかっこいい」でいうと、役職についても「営業担当」でなく「セールスリーダー」、「ホームページ担当」でなく「プロモーションリーダー」に見直すなど検討の余地がある。

リクルーティングに向けた情報発信

全国のDMOにおいて、リクルーティングのための情報発信はほとんど行われていない。一般の民間企業が実施しているように、「ビジョン・ミッション・バリュー」、「どのような人が働いているか。」、「職員の1日のスケジュール」、「先輩職員のコメント」、「DMOが行っている事業」などは、ホームページやSNSを活用して積極的に発信をする必要がある。長崎観光コンベンション協会は、事業計画やビジョン、職員の情報等をホームページで公開している。良い取組だ。

まとめ

まずは、将来のリクルーティングを見据え、人材プールづくりに向けた戦略をつくり、トップから現場職員まで、同じ方法を向いて動けるようにしたい。そして、とにかく実行あるのみ。DMOが地域の観光消費額の向上に貢献するには、今いる職員のレベルアップと、優秀な人材の確保が欠かせない。逆に、いい人材がそろっていれば、どんな難局も乗り越えることができる。
人材プールづくりは、全国のDMOにとって欠かせない取組である。

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