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#013 センバツ高校野球21世紀枠を逃した父親が考えるプレゼンテーション戦略【優れるな異なれ】

2024年1月26日、息子が所属する高校の野球部は21世紀枠を逃した。落選から2週間が経過し、ようやく夏の甲子園に向け、選手・保護者ともに、気持ちの切り替えができた感じがある。今回、選ばれた北海道の別海高校と和歌山県の田辺高校は21世紀枠に相応しい学校である。各校の野球部の特色をぜひ、甲子園の場でアピールしてほしいと思う。
今回は、21世紀枠関係の最後の投稿として、プレゼンテーション戦略について触れたい。


〇21世紀枠の選考基準・選考方法

21世紀枠は、全国9地区から推薦された9校の中から、21世紀枠特別委員会で2校選出される。委員には、野球関係者のほか、元柔道女子五輪金メダリストで日本オリンピック委員会理事の谷本歩実さんなど、野球関係者以外の方も含まれる。選考にあたっては、各都道府県の高野連の理事長等による3分30秒のプレゼンテーションがカギとなる。

<21世紀枠特別選考委員>
宝馨、亀井正明、北村雅敏、辻中祐子、山本秀明、尾上良宏、木戸哲、百留康隆、木村哲人、和田崇、佐山和夫、ヨーコ・ゼッターランド、奥野史子、小野塚康之、谷本歩実(敬称略 順不同)

21世紀枠選考基準
センバツの招待大会としての特性を象徴し、高校野球の模範的な姿を実践している学校を以下の基準に沿って選ぶ。①秋季都道府県大会のベスト16以上(加盟校が129校以上の都道府県はベスト32以上)が対象②以下の推薦例のいずれかに当てはまる学校。▽少数部員、施設面のハンディなど困難な環境の克服▽学業と部活動の両立▽数年間にわたり強豪校に惜敗するなどで甲子園出場機会に恵まれていない▽創意工夫した練習で成果を上げている▽部外を含めた活動が他の生徒や地域に良い影響を与えている。

毎日新聞(2024年1月26日)

〇各高野連のプレゼン内容と選考結果

各高野連のプレゼンで、文武両道や練習時間の短さ、清掃活動の実施など、各校がいかに21世紀枠にふさわしいか、アピールがなされた。

1校目は前評判が一番高かった別海高校が選出された。選出理由は「最低気温0度未満の日が半年以上あり、日照時間が短いなか、農業用のハウスを活用するなど工夫して練習し、去年秋の北海道大会で初勝利からベスト4に入り、さらに、農業や漁業に従事する地元の人たちの支援を受けて、手作りの練習設備を利用する姿が高校野球の理念にふさわしい。」というものであった。

2校目は別海を除く8校で評価の高かった4校を中心に議論が展開され、僅差で田辺高が76年ぶりに選出された。教育相談を担った経験がある田中格監督が、スクールカウンセラーと提携。多様化が叫ばれるこれからの時代の一つの指導方針として評価された。

各高野連のプレゼン内容

〇プレゼン審査における田辺高校の勝因

2校目の田辺高校の勝因を整理したい。
他の高校(高野連)は、どれだけ文武両道に取り組んでいるか、具体的には、どれだけ入試の難関校であるか、どれだけ卒業生が有名大学に入学しているか、どれだけ平日の練習時間が短いか、どれだけグランドが狭いか等をアピールしていた。つまり、より21世紀枠の選考基準を満たした(より優れた)学校であると訴えていた。

一方、高津亮・和歌山県高野連理事長は田辺について、「選手が生き生きとした健全な精神状態でなければ効果的な成長は望めないという考えのもと、スクールカウンセラーと連携して選手一人一人とカウンセリングを行っている。選手の能力を最大限に引き出し、昨秋の県大会準決勝の智弁和歌山戦で逆転満塁ホームランが出て、52年ぶりの近畿大会出場を果たした」とアピールした。

つまり、他の高野連とは異なる切り口のアピールである。
9校中7校を選ぶプレゼンであれば、より優れていることのアピールも有効かもしれない。が、今回は、9校中2校しか選ばれない。他校と違うこと、異なっていることが重要である。

高野連の調査によると、全国の高校の硬式野球部に所属する部員数は、平成26年度の17万312人をピークに9年連続減少。令和5年度は12万8357人となっている。つまり、年々部員の確保が難しい時代となっている。そのような時代においては、スクールカウンセラーと連携し、選手一人ひとりとカウンセリングをすることは、今の部員を大切にするだけでなく、公立高校が将来の部員を確保するための一つのモデルになり得る。それは、これからの高校野球のあり方にまで踏み込んでおり、大いに選考委員の心に響いたプレゼンになったと思う。

企業の競争戦略の分野で、「優れるな異なれ」とよく言われることがある。それは「プレゼンテーション」にも当てはまる。次に、このような機会があった場合は、ぜひ、違いをつくっていきたい。

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