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離職率が高い仕事との向き合い方

コールセンターの仕事は昔から離職率が高いので有名だ。生命保険業界も御多分に洩れず、人の入れ替わりは激しい。

普通は営業担当者とやりとりしているのに、わざわざお客さまのほうからコールセンターに電話をかけてくるのは、ほとんどが苦情である。

来る日も来る日も苦情を聞かされ続けたら気が滅入るのも無理はない。

この本では筆者がいろんなコールセンターの現場を転々としながら見たこと感じたことを綴っている。分野的には生命保険のコールセンターとは異なるが、事務システム目線で気づきを得た点がいくつかあった。

操作が分かりやすいシステムは採用の後押しになる

さまざまな現場を転々とした筆者は、行く先々で研修により業務手順の習得をしていた。

戦力になるまでの期間というのは、会社からすると「お金だけが出ていって付加価値が生まれていない時間」である。

この期間は短いほど「採用した人間がすぐに即戦力になってくれる」ということなので、社員の離職にも強くなるということであり、会社にもたらす利益はバカにならない。

具体的には、直感的に操作ができるとか、画面上のナビゲート機能が優れていてユーザーが迷わないといった要素で、習得期間は短くなってゆくのだ。

逆に操作が分かりづらかったり、複雑なローカルルールを理解しないと扱えない状態だと、紙によるオペレーションよりもシステム化したほうが研修期間が長くなる場合もある。

顧客単価を上げたいITベンダーやコンサルはシステム化を勧めてくるだろうが、「現場が習得にかかる時間」も含めると、また捉え方が変わってくるだろう。

採用への影響を睨んだ上での使いやすさの追求が、「攻めるバックオフィス」の第一歩だ。

生命保険マーケットを変える、中流階級の没落

筆者は非正規労働者であり、一冊を通じて財産といえるものをほとんど築けていない。必死に節約して貯めたお金もタイの風俗に行って使い切ってしまう。

60代で貯金100万未満の人というのはこういう属性の人なんだなぁ、と思った。

生命保険は経済的にいうと中流階級以上のための商品である。その日暮らしが精一杯の人間だと「財産を築く」とか「財産を守る」といった発想は生まれてこない。

月の手取りが12万の人が月々5000〜10000円の保険料を払えるだろうか。払える人がゼロとはいわないが、継続率が怪しいので営業面だと相当慎重になるべき案件だと思う。

今の日本は非正規雇用の割合が増加傾向で、中間層の年収がどんどん下がっている。これは長らく生命保険の中核とされてきた保障性商品のマーケットが縮んでいるということだ。

昨今の円安の影響を受けて海外に出稼ぎに行っている日本人が出てきている。皮肉だが国が貧しくなることで日本人のグローバル化は一気に進むかもしれない。(韓国人のグローバル志向も自国のマーケットでは食ってゆけないからだ)

海外を飛び回って稼ぐ人間に向けた生命保険の売り方は、今後の中流層をグリップするにあたっての重要テーマではないだろうか。

お金のかかる厄介な顧客の選別

会社側の失態を常に虎視眈々と狙い、見つけた瞬間すかさずイチャモンをつけて金品をせしめようとする人間が本書では出てくる。

こういった一部の例外的な人間に対してかかるコストはバカにならない。

マーケットが縮んでいく今の生命保険業界では、「大きな売上がなくても維持できる仕組み作り」が急務だ。どこかで「モンスタークレーマーへの断固たる態度」へ方針転換されるタイミングが来ると個人的には思っている。

システムは一部の例外事例をケアする仕組みを作り出すと、途端にコストが跳ね上がる。

「例外事例はシステムで複雑な分岐条件を設けてコントロールするのではなく、人の運営で断固として拒否する」とユーザー側が方針を示すのは、システム関係者からすれば歓迎すべき動きである。

以上、最近読んだ本を基点として思考を巡らせてみた。

しかし、人材の流動化が進んだからか、業界の裏話が筒抜けな世の中になってきたなぁ。

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