企業は放っておくとみなブラックになってゆく
みなさんは会社の創業の物語を読んだことはあるだろうか。
私はちょうどホリエモンなどが注目を浴びたITバブル時代に青春を迎えたこともあり、IT系企業の創業記にハマっていた時期がある。
ホリエモンの毎週発行するメルマガも購読して、ライブドアの前身であるオン・ザ・エッジの話も読んでいた。
学生時代の私はその内容にすっかり魅了されて、収監される時は現地まで見に行き、モヒカン頭で車から出てくるホリエモンの姿を生で見たぐらいである。
創業記に必ず出てくるのが、立ち上げ時期の創業者の超人的な働きだ。実際、中小零細では給料なしで人間の限界に挑むような長時間労働をしている社長も珍しくない。
それでも、残酷なことにほとんどの会社は潰れる。
営業現場の中小企業社長たちの話や創業記を読む中で、「即座に成果を出さなくても給料を貰えるサラリーマンというのは、なんて恵まれた立場なんだろう」と思った。
就活生たちが夢見るホワイト企業というのは、「楽に儲かる仕組みが出来上がっている会社」または「猛然と働く一部の人におんぶに抱っこ状態の会社」のことである。
これらに持続性がないことは少し考えれば分かるはずだ。
「楽に儲かる仕組みが出来上がっている会社」はすぐに模倣する競合が現れる。税金から給料が出る公務員も、税収が細れば待遇はどうなるか分からない。
「楽に儲かる仕組み」はいずれ陳腐化するのだ。
「猛然と働く一部の人におんぶに抱っこ状態の会社」にしても、稼ぎ頭がいなくなれば(あるいは衰えれば)維持不能である。
すると行き着く先は「仕事がキツい」「儲からない」「給料が安いまま」の負のスパイラル。
若手や一般職、契約社員の人たちと話していると、「私は他人の成果にあやかりたいです」という言動を悪気なくやっている人が多い。
おそらく「世の中には"ブラック企業"と"ホワイト企業"がある」という世界観なのだろう。
現実には、全ての会社がブラック企業の状態から逃れようともがき苦しみ、ほんのいっときだけ抜け出せた状態がホワイト企業なのである。
ホワイト企業になっても、もがき苦しむ人間があぐらをかいていたらすぐに黒く染まる。なぜなら、全ての会社は程度の差こそあれど競争にさらされており、生まれながらにブラックだからである。
私も若手の頃はホワイト部署待望論者の一人だったが、今はいかにしてホワイトな環境にするかをあれこれと考える側に回っている。苦しいけど楽しい。なかなか悪くない体験である。
若手や一般職、契約社員の人たちに「一緒にやろうよ」と正面から持ちかけても避けられてしまう。
毎月もらう給料に疑問を持った経験がなければ当然の反応だ。
なので、ちょっとずつ仕事のレベルを上げていって、気がつくといつの間にか考える側に回っているという「逆茹でガエル作戦」を最近は地道に積み重ねている。
ホワイトな環境作りの経験を何度か繰り返すと、人生の後半戦での選択肢が広がる。
この壁を乗り越えるために、あるいは乗り越えさせるために、今日も試行錯誤を繰り返す日々である。
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