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生命保険で安さを追い求めると何が起きるのか

保険料を安くする要因

生命保険の保険料は何によって決定されるかご存じだろうか。具体的には以下の3つで決まる。

発生率・・・支払事由の発生率
事業費・・・会社の運営コスト
運用益・・・会社の資産運用収益

保険料の安さは、上記のいずれかで他社よりも良い状態だからこそ実現できているのだ。たとえばネット生保はオンライン手続きにより人手をかけないことで安さを実現していた。

しかし、各社のDX推進により、オンライン完結型の手続きもネット生保の専売特許ではなくなりつつある。既に価格競争の軸はもっときめ細かい戦いに移っているのだ。

また、会社が提供する団体保険は、世間一般よりも良質な被保険者だけで構成された集団に対象を絞り込むことで、発生率を抑えて割安な保険料を実現している。

団体保険で準備できる死亡保障額には上限が設けられているが、「子供を医学部までやりたい」など、出費が相当に嵩む家庭以外は他に少し死亡保障を上乗せれば十分な水準ではないだろうか。

安くするための創意工夫と運用の価値観

他にも保険会社は保険料を安く抑えるためのあの手この手の工夫を重ねている。以前はどの保険にも標準装備されていた配当金だが、外した商品が出ているし、解約時の払戻金をなくしたものも増えつつある。

お金の精算は計算式が複雑な上、特に間違いが許されない分野であるので、事務負担が大きい。計算が簡便な保険はそれだけで事業費の削減に一役買うのである。

よくよく考えると、配当金ももとを辿れば納めていただいた保険料だ。お金を預かって、運用をして、複雑な計算式を通してまた払い戻すという行為だ。だったら最初から保険料を安くして、受け取る金額を減らしたほうが良いのではないか。

運用すればするほどお金が増えていた時代は、多めにお金を集めてさらに増やして返すが成立していたが、「失われた20年」の間に実質無配当な期間が長く続いた。すると、お金を集めることに対する価値観が反転して、「運用や計算機能を縮小した方がよいのでは」に変わった。

国内に限って言えば、生命保険は右肩上がりの時代ではない。成長が望めないマーケット環境では、売上を伸ばすよりコスト削減のほうが利益貢献度が高い。

というわけで、今までの常識にとらわれず「本当にこれはいるのか?」を突き詰めてゆくことの重要度が高まりつつある。

商品設計の将来像

商品設計は学習データをAIに読み込ませて山ほどバリエーションを出させ、人間はそれらの候補を品評してゆくという世界が来るかもしれない。

人間が商品設計を考える意味は、過去の学習データの範疇に収まらない突拍子もない何か(=ノイズ)を生み出すことになってゆくだろう。

一つのノイズを手がかりにして、AIが膨大な類型のアイディアを作り出し、そこから取捨選択することの繰り返し。

事務構築にあたって注意すべき点も、AIがナビゲートして漏れなく迅速に進めてくれる時代がきそうだ。

AIをどれだけ業務に活かせるかが、保険料に反映され、競争の軸になる時代が既に訪れている。

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