真新しさと需要の関係

新商品いうのは「理解できるぐらいの類似性はあるけど、真新しさもある」ものというのが一番ヒットする。

生命保険も御多分にもれずである。ここでは、新鮮さを打ち出すために、歴史上保険会社がやってきたさまざまな工夫を見てゆこう。

制度特約

保険料免除特約やリビングニーズ特約など、メインの保障とは別で設定される付帯条件がいわゆる制度特約と呼ばれるものだ。

直接的にニーズに呼び起こすというより、加入者への追加サービスということで、訪問のきっかけとしての色合いが強い。

いわゆる「ドアノック商品」というやつだが、これだけでは収益に繋がらない。「新しい事業の一大分野」になる保障を保険会社は待望している。

保障範囲の派生

死亡保障メインから「生きている間の保険」へと軸足が移り、三大疾病、身体障害、介護などに派生していった。

就業不能保険や認知症保険などのように、対応するニーズをはっきりと名称として打ち出す商品も出てきている。

さらに、最近では死亡保障を切り離したり、配当金を無くしたりなど、生命保険の機能をどんどん分解して必要最小限にすることで費用を抑える工夫も見られる。

配当金は加入者同士の相互扶助の精神に基づき、余った利益を還元しようという思想で存在していたのだが、「だったら配当金いらないから保険料安くしてよ」という考えにシフトしたのだ。(世の中の個人主義化が進行したといえる)

正直いうと、生命保険は保障範囲において損保ほどのダイナミックな真新しさはないが、これは各種証明を公的な書類や医療機関に依存しているからである。

損保の損害査定は保険会社主導で行うため、「このリスクは査定可能」と保険会社が判断すれば商品化が可能だ。

一方、生命保険業界も昔は各社でそれぞれ独自の査定基準を定めて支払っていたのだが、「同じ事象について、A社では払われていたのにB社では払われていない」といった事態がたくさん起こった。

そこで、分かりやすさの観点から公的連動の査定基準に徐々に変わっていったという経緯がある。それが柔軟なリスクテイクという面では制約になっているのだ。

とはいえ、リスクを取りまくれることは一長一短なので、手放しに損保が良いとは言い切れないのだが。

手続面の進化

逆にいうと国が動けば一気に景色が変わるのがこの業界だ。特に電子カルテによる医療情報の統合は期待大である。

病歴や治療内容の確認が容易になれば、新商品発売のたびに問題となる加入時と支払時の事務が簡素化できるので、開発が加速する。さらに事業効率化が進めば費差益も増えるので、会社は未来に向けた投資をより進めやすくなる。

なにぶん政局が絡む話なのであまり期待しすぎるのも良くないが、今後要注目のトピックである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?