母の笑顔が見たい

母の笑顔は、安心する。

子供の頃、母の笑顔を見ると安心した。なぜか、自分を肯定してくれてる気がして「あ~。いいんだ。これで、いいんだ。」と、思わせてくれる安心感があった。自分を認めてくれている気がして、嬉しくなった。風邪をひいて熱を出して不安なときも、母の笑顔を見ると治るような気がして安心した。

母の笑顔は、キラキラと輝いて見える。

母は、特別顔が整っているわけでもないけど、笑うと綺麗だ。母の周りが明るく輝いて見える。きっと、心から笑っているのだろう。心が楽しいと言っているのだろう。心がピュアなのかな。。。と思う。本当に楽しそうだ。

そんな笑顔を見たくて、実家の母に会いに行く。

しかし、今は笑うことがめっきりなくなった。数年前から、認知症になってしまったのだ。それでも、笑わせたい。元気な頃の母に戻ってほしくて。。。。私の名前も存在も何もわからない母に話しかける。答えは、「知らない。わからない。」の連発だ。それでも、何かのきっかけに突然笑い出すこともある。それだけでも、私は嬉しくなる。元気な頃の母の笑顔だと。ところが、またすぐにつまらなそうな顔に戻ってしまう。「やることなくてつまらない。。何もわからない。」とむすっとした顔になる。

私は、母の手をとり、マッサージをしてみる。むすっとしていた母の顔が和やかになる。「気持ち良くて眠くなっちゃう。」と母が言う。私は、「やったー!」と嬉しくなり、手の指の先から腕、肩、背中と優しくマッサージをする。気持ち良さそうにされるがままになっている母が面白い。話は通じないけど、マッサージで通じ合っている感じが嬉しい。

笑いは、ストレスを抑制するらしい。笑うと脳の血流が良くなり、前頭葉が活発になるという。

何とか母を笑わせて病気のストレスをとってあげたい。元の母に戻してあげたい。叶わないとわかっているけど、最後まで笑顔を忘れてほしくない。

「また、来るからね~。帰るよ~。」「はいよ~。」お決まりのお別れの挨拶。「またね~。」「はいよ~。」

また、笑顔を見に来るからね。バイバイ。



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