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子供の生徒とその親御さんにに対する心持ちの変遷

注:子供がいない先生への批判記事ではありません

小学生の頃習っていたヴァイオリンの先生は私の親より3歳くらい上の、
独身の女の先生だった。
この先生から私は、みっっっちりと基礎を叩き込まれた。
レッスンに行ったが最後、2時間は帰してくれなかった。
しかも内容が運指練習の教本の中の1小節だけとか。
いやよく耐えてたな自分、と今になって思うが
当時は
『なんか本格的な教室に入ったみたいだから、まあ厳しいんだろうな〜』
くらいにしか思ってなかった気がする。楽しくはなかったけど。

むしろ付き添いで来ていた母の方が多大なストレスを感じていたようだ。
通っていた頃も、たまりかねて別の先生に変わってからも、時々
「あの先生は、子供育てた経験がないから云々」的な事を言っていた。

『子供がいないから』
この言葉は、独身の身分で子供を教えると多かれ少なかれ言われてしまうものらしい。
同じ音楽教室の友達も、他の独身の先生に習っていてかなり怖かったらしく、彼女のお母さんもうちの母とそんな話をしていたようだし、
大学生の時アルバイトで教えていた女子中学生のお母様はピアノ講師をしていたのだが『子供持つまでは、そんな感じのこと言ってくる人いたのよねぇ〜』と言っていた。

私は小さい頃から結婚願望が全く無く、子供も苦手だったのでお母さんになりたいなんて思った事もなかった。
自分も『子供のいない先生』になる可能性があった。
そしてきっと子供の生徒の母親には、同じ事を言われるのだろうなあと暗澹たる気持ちであった。
だからなるべく子供の生徒は教えたくなかったし、『母親』という生き物にあまり良いイメージを持っていなかった。

だが実際に音楽教室で仕事を始めると、思いの外子供の生徒さんを教える機会が多く巡ってきて、子供を教える事は日常になっていった。
子供自体には慣れていったが、やはり常に
『『子供がいないから』とは言わせねーぞ』とも思っていたので、
子供にもわかりやすい説明を心がけて、小さな事でも褒めて励まして、子供の頑張りを常に評価してあげる事に尽力した。

そのこと自体は別に悪いことではないと今でも思う。
でも自分も結婚して子供を持つようになって、また新しく見えてきたことがあった。

この記事と似たような話になると思うのだが、子育てというのはやってみないとわからないことだらけで、経験がなくても大変そうだというのはなんとなく想像できるけど、具体的に何がどう大変なのかは実体験なしでは想像しきれない。

子供がいると24時間365日子供と一緒で、何をするにも子供次第でスケジュールは大幅に狂う。
自分のための時間などほとんど取れず、常に寝不足と体調不良に見舞われイライラが止まらない。

それまで私は、お母さんが子供にヴァイオリンを習わせに教室に来ることはごくあたりまえの日常だった。
でも今は思う。
毎週毎週よく連れて来られるなと。

私は親にはなってみたものの、生来の自分勝手さと面倒くさがりと要領の悪さはどうしても変えられず今は1日1日をやり過ごすのが精一杯である。
なので自分の子供にはまだ何も習わせてないし、この先何か習うことになっても毎週決まった時間に子供を促して通う自信もない、家での練習にマメに付き合うことができる自信もないダメダメ親なのである。

今まで子供の生徒さんとその親御さんに
「たくさん練習しようと思わないでいいんです、毎日楽器ケースを開けるというのが大事なんですよ(簡単でしょ?ニコニコ)」
なんて言ってたが今となってはオマエが言うな、である。(でも言うけど)

というわけで子育てをする前はレッスンでは子供の生徒自体にしかフォーカスしていなかったのだが、今は心から

『日々の幾多の雑事に追われながら、連れてくるお母さんスゲェ』

と思っている。
いやむしろ私なんぞのところに貴重なお時間とお金を割いていらしていただいてありがとうございます、である。

子供のいない先生は子供を教えるのに向いていない、なんてことは無い。
音楽教室で出会ったソルフェージュの先生やピアノの先生も独身だったがとても素敵な先生だったし、子供がいない先生でも親御さんの苦労を慮れる素晴らしい先生はもちろんいらっしゃると思う。

だけど人間ができていない私にはやはり、子供を持たないとわからないことがあったな、と痛感するのである。


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