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あの夜からの、後日談。

先日、子供と出かけた某オーケストラの夏休みコンサートで、チャイコフスキーの交響曲5番(略してチャイ5)を久しぶりに生で聴いたらこの記事の後日談を書きたくなってしまった。

この記事の最後の部分、終電を逃して酔っ払いながら先輩とその彼女と歩いて帰宅した次の日の朝は何と音楽院のオーケストラの練習日だったのだ。年に数回の演奏会の日が間近に迫っており、曲目はチャイ5だった。

深夜2時くらいに帰宅して、酔いが醒めぬままmixiに浮かれた日記をアップしたりして、そんなだからもちろん超寝不足で学校へ向かったらコンサートマスターを務める先輩はもっとひどい二日酔いでヘロヘロの状態で着席していた。

私の席はコンマス席のすぐ後ろだったのだが、先輩の背中からは昨日彼が調子づいて飲んだ禁断の酒(なぜか楽器屋さんの家に所蔵されていた)、アブサンの香りが始終漂ってきた。その香りだけでまた酔っ払いそうになるのが困るやら可笑しいやらの中で弾いたのがチャイ5の思い出である。

(親子コンサートの会場でバッタリ会ったママ友に
「やっぱりプロだと聴き方違ったりするの?」なーんて言われたけどこんなこと思い出しながら聴いてました生まれてすみません。)

二日酔いで行った練習から数日後、無事に?本番は終わった。
終演後、帰路につく電車の中で先輩の彼女さんが作ってきてくれたおにぎりをみんなで喜んで頬張ったのは本当に楽しい思い出として心に残っている。

「うろうろちゃん、先輩に恋愛感情あったりしないの?
先輩も彼女いるけどさ、うろうろちゃんとはめっちゃ話弾んでるしまんざらでもないんじゃないかと思うんだけどなぁ〜」

一時期、陽気な関西人のMちゃんにそう言われていたことがある。
うん、私も幾度となく
『これは、恋をしてしまったのではないだろうか?
先輩と彼女の恋に恋してキュンとなってるなんて言い訳で、
本当は先輩そのものを好きになってしまったのでは・・・』
と自問自答した。

でも、いつも答えは『NO』だった。
確かに好きになってもおかしくない瞬間はいくらでもあった。
あったんだけどね。それでも何かが違った。説明できないけど。
まあ知り合って間もない段階で『彼女持ち』っていう情報を得ていたのが大きいんだろうな。
じゃあ、もし彼女がいなかったら・・・?
それでもおそらく『NO』だろう。
彼女と付き合っていない先輩は、もっと別の人格になっていただろうし、
その先輩と私が意気投合できた保証はない。

ある日、学校から帰る電車の中でパスポートの期限の話になった。
私のパスポートはその時点で8年ほど残っていて
「このパスポートの期限が切れるころ、私はどうなってるんだろう」
とつぶやいたら先輩が
「きっと素敵な女性になってるんじゃない?」なんて冗談半分で言ってくれた。

素敵な女性になったかは疑問だが、その年に私は結婚した。
その少し前に先輩も彼女と結婚した。
今はFacebookで繋がっていて、先輩の演奏活動が時折タイムラインに上がってくる。
ここ数年、お伺いできる演奏会がなくリアルでは会えずじまいだけど、次に会った時もまた私たちは色気もへったくれもないヴァイオリンのテクニックの話をするのだろう。

エネルギー欲しい方いらっしゃいませんか?売るほどあります!(≧∇≦)